現代語訳のページ

みんながんばろう!

古文総合・第四回『更級日記』・解答解説

2008年07月06日 | 古文総合
古文総合・第四回『更級日記』
解答・解説

 みなさん、こんにちは!
 一学期の授業お疲れさまでした。
 17ページ『更級日記』の解答・解説をアップします。
 参考にしてくださいね。

 問一~問三は二学期にやりますから解答を記すにとどめ、ここではそれ以外の問題を解説しておきます。

 『更級日記』の作者は、菅原孝標の女(むすめ)。
 作者の父は地方長官として上総(千葉県)に赴任します。
 まだ子供だった作者はもちろん、継母も一緒でした。
 
 上総というのは、今の千葉県とはちがいます。
 今の千葉は大都会ですが、当時はどうしようもない僻地でした。
 継母はもともと京で宮仕えをしていた都会人ですから、地方ではいろいろと予想外の不愉快なことがあって、だんだん作者の父

親としっくりいかなくなっていきます。
 それで離婚。
 作者の家を出て行くことになりました。

 継母は作者と仲がよかったようです。
 3行目を見てください。

――「あはれなりつる心のほどなむ、忘れむ世あるまじき」
(「しみじみやさしかったあなたのお気持ちを、私が忘れるときはないでしょう」)

 継母はそういっています。
 そして、梅の木を指さして、作者に、

――「これが花の咲かむ折は来むよ」
(この梅の花が咲く時は帰ってきますよ)

 といいおいて、作者の家から出て行きました。
 そして、その翌年。
 作者は素直に継母のことばを信じて継母の帰りを待っていました。

――「いつしか梅咲かなむ、(母は)『来む』とありしを、さやある」
(「はやく梅が咲いてほしい、(お母さんは、梅が咲いたら)『帰って来るつもりです』といっていたが、本当に帰ってくるのか

」)

 作者はそう思いました。
 これが問四です。


問四

 まず傍線部a。
 「梅咲かなむ」の「未然形+なむ」は、他者への願望をあらわす終助詞です。
 意味は「~てほしい」。
 「梅咲かなむ」で「梅が咲いてほしい」という意味になりますね。
 正解は4。

 次に、傍線部b。
 「来むとありしを、さやある」。
 これは、指示副詞の「さ」が、前にある「来」を受けていることに注目してください。
 「あり」は「言ふ」という動詞のかわりに使われています。

 (継母は)「来む」とあり(言ひ)し (お母さんは、「帰って来る」といったが)
       ↓
       さやある(そうであるのか=帰って来るのか)

 これで、正解は1であるのがおわかりいただけると思います。


 さて、そう思って作者は梅を見守り続けています。
 梅はいつ咲くのか・・・。
 梅が咲いたら、お母さんが帰ってくる!
 ところが、


――花もみな咲きぬれど、音もせず。
(花はすっかり咲いたけれど、(お母さんからは)何の頼りもない)


 これが問四の傍線部cです。
 「音もせず」。
 「音」は重要単語で、「①うわさ ②頼り・訪れ」という意味。
 「音にきく」という熟語は、「うわさに聞く」。
 「音もせず」という熟語は、「便りもない・訪れもない」という意味になります。
 この熟語にも気をつけてください。
 正解は2。
 

 継母を待ちわびた作者が、継母の歌をおくります。
 それがAの歌。


――頼めしをなほや待つべき。霜枯れし梅をも春は忘れざりけり。
(あてにさせたことばを、やはり待つべきでしょうか。霜に枯れた梅をも、春は忘れずに訪れて花を咲かせましたよ)

 
 これに答えた継母の歌。
 それがBの歌です。


――なほ頼め。梅の立ち枝は契りおかぬ思ひのほかの人も訪ふなり
(やはりあてにして待っていなさい。梅の高く伸びた枝は外からも見えるので、約束もしていない思いがけない人も訪れるといい

ますよ)


 問五を見てください。


問五

 Aの「頼め」とBの「頼め」の文法的な違いをきく問題です。
 これは第二回『大和物語』で勉強済みですね。

 「頼む」には、四段活用「あてにする」と、下二段活用「あてにさせる」がありました。
 傍線部⑦は「頼めし」。
 「し」が過去の助動詞ですから、「頼め」は連用形。
 連用形が「頼め」なら、「め・め・む・むる・むれ・めよ」と下二段で活用していることになります。
 したがって、正解は4。
 「(お母さんが私を)あてにさせた」という意味。

 一方、傍線部⑧は「なほ頼め」。
 これは下に「梅」があるので、一見連体形かと思えますが、四段なら連体形は「頼む梅」、下二段なら連体形は「頼むる梅」に

なるはずなので、連体形ではなく、「頼め」で文が切れていると考えます。
 「なほ頼め。」で文が切れるなら、「頼め」は四段(ま・み・む・む・め・め)の命令形だと考えるのが自然です。
 「やはり(あなたは)あてにしていなさい」と、継母が作者に命令しているわけですね。


 最後に問七を。

 これは「句切れ」を明らかにする問題です。
 「句切れ」というのは、和歌の中にある文の切れ目のこと。
 和歌は文の切れ目に「。」を打ちませんが、もし「。」を打つとしたらどこか、と考えてください。
 
 当たり前のことですが、文の切れ目には、文末の形が来ているはずです。
 日本語の文末の形は、代表的なものが四つあります。

 ①終止形
 ②命令形 
 ③係り結び
 ④終助詞

の四つです。

 ①は、

 荒れにけり。あはれいくよの やどなれや・・・

のような場合。
 「けり」は終止形ですから、ここで文が切れるはずです。

 ②は、

 なほ頼め。梅の立ち枝は 契りおかぬ・・・

のような場合。
 「頼め」は命令形ですから、ここで文が切れます。
 これがBの歌の句切れ。
 初句で切れていますから、「初句切れ」ということになりますね。

 ③は、

 頼めしを なほや待つべき 霜枯れし・・・

のような場合。
 「や→べき」は係り結びですから、「べき」で文が切れます。
 Aの歌がこれで、二句で切れていますから、「二句切れ」の歌です。

 ④は、

 身にかへて あやなく春を 惜しむかな・・・

のような場合。
 「かな」は終助詞(詠嘆)ですから、ここで文が切れます。



 では最後に、解説でふれなかったところの解答を記しておきます。

問一 ①=5 ②=1 ⑥=2
問二 ③=1 ⑤=2
問三 ④=2 ⑨=4
問六 3