Lauterburの論文に刺激されて,Richard Ernstは,さっそく,現在MRIの主流となっているフーリエイメージングの論文を書きました.
NMR Fourier Zeugmatography
Kumar A, Welti D, Ernst RR, J Magn Reson vol 18, 69-83 (1975).
です.
Lauterburの論文で,Zeugmatographyという言葉を説明するのを忘れていましたが,この言葉は,静磁場,勾配磁場,高周波磁場を組み合わせた手法を意味します(ギリシャ語).そこで,Ernstらは,この言葉を使ったのです.
この論文の書き始めは,
P. C. Lauterbur has recently described an ingenious technique to determine …….
となっており,二番目のパラグラフも,
Lauterbur’s method is based on the application of linear field gradients in different directions ….
と書かれています.このように,この論文は,当然ですが,Lauterburの論文の上に直接築かれています.
Ernst自身は,その頃,二次元NMRの一般的理論を始めていましたが,その最初の実験が,いわゆるフーリエイメージングになりました.これは,Ernstの直弟子の,永山国昭先生も,仰っていました.
上に,フーリエイメージングのパルスシーケンスを示します.
これを初めて見た時は,勾配磁場が,このように,時間ゼロで,簡単に切り替えられるだろうかと思いましたが,概念としては,大変美しいものになっています.
ところで,Ernstも,この論文で,
The potential use of this method includes the measurement of spatial distribution of a given nuclear species in living tissue and determination of its relaxation times with the possibility of localizing cancerous parts in a living organism (2,3).
と述べて,NMRによるガンの診断に触れています.そして,その文献として,
2. Damadian R, Science vol 171, 1151 (1971).
3. Weisman ID, et al. Science vol 178, 1288 (1972).
の「両方」を引用しています.
一般に,腫瘍組織と正常組織の水のプロトンの緩和時間が異なることは,Damadianによって,初めて指摘されたということになっていますが,Lauterburは,文献3だけを引用しており,Ernstは,2と3の両方を引用しています.
この点からも,LauterburとDamadianの確執が伺えます.Ernstとしては,それは承知の上で,両方に配慮したのでしょう.Ernstの如才なさが,ここでも伺えます.
このように,論文を書くときに,「誰が誰の論文を,どのように引用しているか」というのは,極めて重要な情報です.すなわち,論文執筆者が,引用する文献の著者のことを,どのように思っているかが,手にとるように分かるのです!!!
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