MRIのすべて(all about MRI)

磁気共鳴イメージング(MRI)に関するさまざまな経験や知識を提供しつつ今後の展望を切り開きたい.

MRIの歴史的論文(5)

2006-03-24 22:48:17 | Weblog

Lauterburの論文に刺激されて,Richard Ernstは,さっそく,現在MRIの主流となっているフーリエイメージングの論文を書きました.

NMR Fourier Zeugmatography
Kumar A, Welti D, Ernst RR, J Magn Reson vol 18, 69-83 (1975).

です.

Lauterburの論文で,Zeugmatographyという言葉を説明するのを忘れていましたが,この言葉は,静磁場,勾配磁場,高周波磁場を組み合わせた手法を意味します(ギリシャ語).そこで,Ernstらは,この言葉を使ったのです.

この論文の書き始めは,

P. C. Lauterbur has recently described an ingenious technique to determine …….

となっており,二番目のパラグラフも,

Lauterbur’s method is based on the application of linear field gradients in different directions ….

と書かれています.このように,この論文は,当然ですが,Lauterburの論文の上に直接築かれています.

Ernst自身は,その頃,二次元NMRの一般的理論を始めていましたが,その最初の実験が,いわゆるフーリエイメージングになりました.これは,Ernstの直弟子の,永山国昭先生も,仰っていました.

上に,フーリエイメージングのパルスシーケンスを示します.

これを初めて見た時は,勾配磁場が,このように,時間ゼロで,簡単に切り替えられるだろうかと思いましたが,概念としては,大変美しいものになっています.

ところで,Ernstも,この論文で,

The potential use of this method includes the measurement of spatial distribution of a given nuclear species in living tissue and determination of its relaxation times with the possibility of localizing cancerous parts in a living organism (2,3).

と述べて,NMRによるガンの診断に触れています.そして,その文献として,

2. Damadian R, Science vol 171, 1151 (1971).
3. Weisman ID, et al. Science vol 178, 1288 (1972).

の「両方」を引用しています.

一般に,腫瘍組織と正常組織の水のプロトンの緩和時間が異なることは,Damadianによって,初めて指摘されたということになっていますが,Lauterburは,文献3だけを引用しており,Ernstは,2と3の両方を引用しています.

この点からも,LauterburとDamadianの確執が伺えます.Ernstとしては,それは承知の上で,両方に配慮したのでしょう.Ernstの如才なさが,ここでも伺えます.

このように,論文を書くときに,「誰が誰の論文を,どのように引用しているか」というのは,極めて重要な情報です.すなわち,論文執筆者が,引用する文献の著者のことを,どのように思っているかが,手にとるように分かるのです!!!

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