MRIのすべて(all about MRI)

磁気共鳴イメージング(MRI)に関するさまざまな経験や知識を提供しつつ今後の展望を切り開きたい.

勾配コイル(7)

2006-02-05 12:42:19 | Weblog

さて,前々号に書いたように,Maxwell pairや平行4線コイルは,座標原点付近における磁場の直線性に従って設計されたものでした.

ところが,この設計法には,以下に示す,いくつかの問題点があります.

(1)中心から離れるに従って磁場の直線性が悪くなり,勾配磁場が均一な領域が狭い.

(2)Maxwell pairや平行4線条件に従ったコイルを巻くことは,事実上困難で,電流分布には,空間的な広がり(厚みや幅)が生じてしまう.

(3)目標とする仕様を満たす勾配磁場コイルの設計が困難.特に,アクティブシールド型勾配コイルの設計は不可能.

これらの問題を解決するため,1980年代の半ば頃に,ターゲットフィールド法という,目標とする磁場分布から,それを発生する電流分布を求める逆問題的手法が開発されました.

上に示すのは,その方法に従って,H君が設計し,Oさんが製作した平面型Gxコイルです.

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勾配コイル(6)

2006-02-04 22:15:37 | Weblog

上に示すのは,平行4線コイルです.これは,直線状の導線を,それらに垂直な断面で切ったものです.

内側の4本の導線(内側が黒丸となった白丸)が,z軸に垂直な方向(xまたはy)に変化する勾配磁場を発生し,外側の4本の導線は,符号が逆(ただし,大きさは小さい)の勾配コイルを発生します.

これらの原理にしたがって巻いたのが,勾配コイル(2)で示したコイルです.
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勾配コイル(5)

2006-02-04 22:12:54 | Weblog

しばらく時間が空きましたが,また勾配コイルの話をします.

これまでに紹介した勾配コイルは,Maxwell pairと平行4線コイルが基礎となっていました.

これらの勾配コイルでは,勾配コイルによって発生する磁場を,座標原点に関して,座標(x,y,z)でテイラー級数展開したときに,三次の項がゼロとなる条件で,コイルの幾何学的配置が決定されていました.

いきなり,難しい話になって恐縮ですが,勾配コイルの発生する磁場は,勾配コイルによる電流分布が,座標原点に関して反対称な場合,テイラー展開したときには,奇数次の項しかありませんので,三次の項が消えれば,一次の項だけで,磁場を表現することができます.これが,勾配磁場発生の原理になっています.

上に示すのは,円形電流に関して,上の原理にしたがって設計された,Maxwell Pairコイルです.
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NMR60年(続)

2006-02-03 07:20:04 | Weblog
前回の画像の説明をするのを忘れていました.

あの画像は,1982年8月5日,東芝入社2年目に,自作のボディコイル(楕円形)で撮像した体部サジタル像です.

これは,東芝の最初のMRI(NMR-CT:国産第一号機)のパンフレットにも掲載され,その年のRSNA(北米放射線学会)の企業ブースでも展示された,歴史的画像です.

被験者は,もちろん,私です.撮像法は,フーリエ法でなく,プロジェクション法です.これも,今や歴史的なことになりました.


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NMR生誕60年(還暦?)

2006-02-03 06:51:06 | Weblog

そういえば,先日,NMR(核磁気共鳴:Nuclear Magnetic Resonance)が発見されてから,ちょうど60年経ったという知らせが来ました.

NMRの発見は,1946年1月29日だったということでした(後で確認してみます).

さて,ここからが本題.

私がMRIを始めたのは,1981年ですが,その頃は,MRIという言葉はもちろんなく,NMR-CTなどと呼ばれていました.医用機器業界では,NMRという言葉自体が珍しかったので,NMRに,色々な「だじゃれ(当て意?)」(英語ではacronymの逆)が作られました.

Nuclear Magnetic Resonance (核磁気共鳴:正解)

New Modality in Radiology (放射線医学における新しい診断手法)

New Money Resource (新規事業:会社にとって)

No Money Research (お金のない研究:予算くれ!)

No More Research (NMR以外は(?)もうやることはないよ!)

New Mexico Resonance (これを知っている人は,かなりの通)

当時,他にも,だじゃれが色々と作られましたが,みなさんにとってのNMRは,何でしょうか?

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中華まんの画像(続)

2006-02-02 23:21:30 | Weblog

中華まんの3D画像の処理を工夫してみました.

2方向からのMIP(最大値投影です).

最大値投影というのは,視線方向に最大値を投影する方法で,MRIでは,MRアンジオグラフィー(血管造影法)で使用されています.

具の三次元的位置が,手にとるように分かります.




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勾配コイル(4)

2006-02-01 07:22:24 | Weblog

上に示すのは,前回示した,コイルエレメントを組み合わせて作成した,勾配コイルプローブです.

コイルの厚さは,Gx,Gy,Gzの3チャンネル合わせても,2-3mm程度になっています.

ギャップが60mmくらいの永久磁石向けに,数年前に開発したものです.RFコイルは,交換可能となっています.

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勾配コイル(3)

2006-02-01 07:18:14 | Weblog

これまでにもお話しましたように,コンパクトMRIでは,永久磁石を使いますが,永久磁石で磁場が発生するギャップ(空隙)は,大変貴重なものです.

「貴重」,というのは,同じ静磁場強度で,ギャップを広げるには,より多くの磁性材料を必要とします(磁性材料は高価!!).よって,決められた静磁場空間を効率的に利用するためには,勾配コイルが占める体積を小さくしなければなりません.

よって,1月30日のブログで示したような,Maxwell pairと平行4線コイルに忠実に従った勾配コイルを巻くのは,あまり得策ではありません.どうしても,ぶ厚くなってしまいます.

また,後でお話しますが,このような巻き方が,ベストだという保証はどこにもありません.

ということで,狭いギャップを有効に活かす,薄型の勾配コイルを作ってみました.上に示すのは,勾配コイルを構成する,コイルエレメントです.厚さは0.5mmです.これらを組み合わせて,勾配コイルを作成します.

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あんまんMR画像

2006-01-31 23:23:58 | Weblog

上に示すのは,3D画像から作成した,あんまんのMIP(最大値投影)像です.

撮像条件は,中華まんと同様です.

あんこが,ハイコントラストに描出されていますが,短いT1のためか,プロトン密度のためかは,いまのところ不明です.両方の影響があると思います.「こしあん」と,「つぶあん」の区別がつくかどうか,近日中に試してみようと思います.

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中華まんのMR画像

2006-01-31 23:22:44 | Weblog

ここでしばらく,休憩.

外部より,中華まんの撮像の依頼があり,今朝,柏の葉キャンパス駅のampmで,中華まん,あんまん,ピザまんを買い,撮像を行いました.

上に示すのは,3D画像から作成した中華まんのMIP(最大値投影)像です.

撮像条件は,3D勾配エコー法,TR=200ms,TE=10ms,128×128×128画素,画素サイズ1mm×1mm×1mmです.

具が見えています.
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勾配コイル(2)

2006-01-30 23:36:08 | Weblog

勾配コイルは,MRIの歴史の中で,最も本質的な進歩のあったハードウェアと言ってもいいかも知れません.

現在では,「技術の粋を凝らした」勾配コイルが使われていますが,一番シンプルな勾配コイルは,z方向に関しては,Maxwell pair(マクスウェル・ペア),xとy方向に関しては,平行4線コイルというものです.

上に示すのは,その原則に忠実に巻いた勾配コイルです.

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勾配コイル(1)

2006-01-30 23:35:02 | Weblog

さて,MRIでは,試料(人体)内の位置を識別するために,勾配磁場を使います.

勾配磁場というのは,静磁場方向の磁場が,位置(x,y,z)と共に変化するものです.MRIでは,その中でも,位置の変化に対して比例して磁場強度が変化する,線形勾配磁場を使います.

MRIでは,わざわざ「線形」勾配磁場とは言いませんが,勾配磁場と言えば,線形勾配磁場のことです.

勾配磁場(gradient field)は,傾斜磁場とも言われますが,勾配磁場の反転によるエコー信号は,勾配エコー(gradient echo)といわれ,決して傾斜エコーとは言われません.ですから,傾斜磁場という言葉は,あまり感心しません.

なお,特許庁の特許用語には,勾配エコーという言葉は,きちんと定義されていますが(傾斜エコーという言葉は存在しない),国内では,グラジエントエコーという,奇妙な外来語が使われています.

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MRIにおける永久磁石と超伝導磁石の比較

2006-01-29 12:03:55 | Weblog

これまで,MRIにおける永久磁石と超伝導磁石の話をしてきました.

これを読まれた方は,いったい,どちらが良いのだろうと,疑問に思われたかも知れません.

そこで,それらの比較を表にしてみました.

これから,静磁場強度(画像のSNRに直結します)と時間的安定性(空間分解能に影響を与えます)に関しては,超伝導磁石が優れていることが分かります.

いっぽう,それ以外の項目,すなわち,開放性,移動可能性,サイズ,維持コストにおいては,永久磁石が優れています.

ですから,多種多様な用途のMRI(コンパクトMRI)を考えた場合には,永久磁石の方が,遙かに優れていると言えると,私は考えています.

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常伝導磁石!

2006-01-29 11:06:50 | Weblog

初期の全身用MRIには,かつては超伝導線を使わない電磁石がかなり使われました.これらは「常伝導電磁石」,あるいは,resistive electromagnetと呼ばれています. 日本で最初に臨床検査が行われた東芝のMRIも,常伝導電磁石でした(上記参照:国産第一号機,東芝のパンフレットより).

「常伝導」電磁石という言葉は,超伝導という言葉に対して使われる言葉なので,ある意味,非常に不思議な言葉です.

常伝導電磁石では,銅線に大きな電流を流しますので,電気代がかかるばかりでなく,銅線の発熱を冷却する必要があります.

また,あまり強い磁場強度が実現できないこと(全身用で0.2T程度),短期的(ハム),長期的な電流の変動による磁場のドリフトが大きいことから,現在では,まず,MRIでは使われていないと思います.

でも,Lauterburの最初の実験,Mansfieldの実験,Ernstの実験など,MRIの歴史的実験においては,鉄芯(常伝導)電磁石が使われていましたし,国内の初期のMRIも,ほとんどは常伝導電磁石が使われていましたので,忘れてはならない磁石です.

私も,MRI用の永久磁石を導入する1999年までは,さまざまな実験に使っていました.

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超伝導磁石(2)

2006-01-28 22:02:37 | Weblog

ここに示すのは,さきほどの磁石の2倍の静磁場強度を持つ超伝導磁石です.静磁場強度は9.4テスラ,プロトンの共鳴が400MHzです.

昨年,私の研究室に導入しました.ヒト胚子標本の撮像などに使っています.

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