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◆体験談◆

◆体験談◆

自閉権の尊重 人間にはいろいろな有り様がある

2006年10月04日 | 引きこもり
2002/11/20: ◆ふれあい 診察室から 自閉権の尊重 人間にはいろいろな有り様がある


 痴呆症の老母と二人で暮らしている患者さん。若いころに何度か入退院を繰り返したが、この20年以上は病状も安定し、ひとりで母親の面倒をみていた。
 ところが、最近になって、母親の身体的衰弱が進行したので、ヘルパーによる訪問介護が始まった。訪問初日から、ヘルパーにとっては驚きの連続であった。
       ◇
 彼の家の雨戸は一年中閉め切られ、窓という窓は厚紙で目隠しをされていたのである。まるで外界の視線を避けるかのように。
 また、部屋の中はきちんと整理整頓されているものの、ある1室は、10年分以上はあろうかと思われる古新聞で占拠されていた。さらに、通院する時以外はほとんど外出しておらず、1日2回の食事はすべて宅配ものでまかなわれていた。
 仕事熱心なヘルパーは、「窓に張り付けてある厚紙の除去」「せめて日中だけでも雨戸を開けること」「毎日1度は散歩すること」などを彼にアドバイスした。
 それから約1カ月後、彼の病状は20数年ぶりに悪化した。おそらくは、老母と二人の自閉的空間で保たれていた心のバランスが、他者の介入によって崩れてしまったものと思われる。
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 精神障害者に対する社会復帰プログラムの目的は、障害者の生活を健常人のそれに近づけることである。
 けれども、人間にはさまざまな有り様があるのだから、そのことが患者に苦痛を強いる結果をもたらすこともある。
 専門家の間で「自閉権の尊重」が叫ばれる所以である。「自閉」というあり方も、その人自身にとっては生きていくための“権利”の表れである。病の回復のため、社会と隔絶して引きこもることを勧めるのであるから、なかなか理解を得ずらいのが難点ではあるが。(英)