金原亭駒与志の世界

一天狗連の楽屋

口演録(3): 訴訟社会の中の吟味筋と出入筋

2014年06月16日 00時00分00秒 | 落語市民と法

 では、江戸時代はどうだったんでしょうか。

 江戸時代の刑事裁判は「吟味筋」といいました。それに対して、借りた金を貸さない、売掛金を払ってもらえない、隣同士で境界線を争っている、父の残した遺産をめぐって兄弟喧嘩しているなどという、もろもろの民事事件のことを「出入筋」といいます。

 意外かもしれませんがね、落語の世界に描かれる法廷モノは、むしろ出入筋のほうが多いんですよ。
 この時代でも圧倒的に「出入筋」という民事上のトラブルが多かったわけです。歌舞伎・映画・テレビなどの時代劇と比較しますてェと、落語に描かれる政談噺のほうがうんと現実的・リアリティがあるんです。その意味で、落語は極めて写実的な芸能といえますかねぇ。

 文化年間の資料によれば、年間の訴訟数は約70万件。意外な訴訟社会でした。特に債権回収では、積極的に裁判制度が利用されていまして、当時の人々にとってお奉行様の敷居は決して高くなかったみたいですね。

(次回に続く)


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