
ブラームス:ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34
ローマ・フォーレ五重奏団
1987年 デジタル・セッション録音
(Claves Records)
ブラームスの室内楽曲のなかでも人気のある作品で数多くの録音がありますが、このローマ・フォーレ五重奏団の録音はあまり知られていないのではないでしょうか。
このアンサンブルは、イ・ムジチのコンミスをつとめた名手カルミレッリ率いる団体で、特にフォーレの五重奏曲は名盤として知られますが、このブラームスは何故かほとんど語られる事がありません。
しかし、イタリア風によく歌う弦が主導する叙情的な演奏で、この曲のメロディアスな作風に見事に合致した名演となっています。
冒頭から、ポルタメントのかかった豊かな弦楽器の音色に魅了されます。フォーレの五重奏曲の録音でも豊かな歌い口が魅力でしたが、作品の性格故か、さらにたっぷりとした濃厚なカンタービレが非常に印象的。
テンポも、基本的に中庸ながらそよ風のような自然な息遣いのアゴーギクが情感豊かな起伏を描きます。
もちろんピアノも素晴らしい腕前で、ゼルキンやポリーニのような強い主張はあまり無いものの、弦にぴったりと寄り添いつつ埋もれる事がなく、非常にバランスの良い好演を繰り広げます。緩徐楽章での愛情の吐露のような歌わせ方も絶美。
第3楽章も、テンポは中庸ながらゆったりとして聴こえるくらい、リズムの鋭敏さよりも歌わせることに重きを置いており、分厚く、ポルタメントがかかるほど濃密な弦の響きが非常に印象的です。
ただし、終楽章は遅いテンポ設定であることもあってかやや散漫になり気味で(元々、他の楽章に比べ薄味でまとめるのが難しい楽章だと思いますが…)、この楽章だけはエッシェンバッハ/アマデウスQやハース/BPO八重奏団員、ゼルキン/ブダペストQといった往年の名盤に軍配を上げます。
音質は、オン気味の綺麗なデジタル録音で優秀です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます