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クラシック音楽鑑賞記、時々その他

手持ちのクラシック音楽のCD感想をメインに、気の向くままに色々書きます

シューベルト:ピアノ・ソナタ第17番(ベルマン)

2025-03-31 14:08:07 | シューベルト



シューベルト:ピアノ・ソナタ第17番 ニ長調 D850
ラザール・ベルマン(ピアノ)

1964年1月19日ライヴ録音
(Yedang classics、モノラル)


2000年代初め頃、韓国Yedangなるレーベルが続々と発売したロシアの巨匠たちの一連のライヴ録音のうちの1枚。
リヒテルやベルマンのほか、ロジェストヴェンスキーやスヴェトラーノフの貴重音源も多数ありました。

当盤はモノラル録音ながら、鮮明な音質で鑑賞にはなんら問題ありません。

ベルマンのシューベルトといえば、ソナタD960(EMI)が情感豊かな名演として知られていますが、このD850もそれに通ずるロマンティックな名演です。

生命力に満ちた打鍵で輝かしく開始される第1楽章から、全盛期ベルマンの豪快なピアニズムが全開。
重量感溢れる強打鍵と覇気に富む推進力、そして弱音の繊細さとの対比が実に鮮烈です。
ベルマンの特性が存分に発揮された剛毅なスケルツォや、意外なほど清楚でチャーミングな終楽章も良いですが、白眉は第2楽章。
シューベルトらしい歌謡性豊かな美しい楽章ですが、非常に遅いテンポで大胆なテヌートを駆使し、ラフマニノフもかくやのむせ返るようなロマンを香らせて濃密に歌い上げられます。
わけても詩情豊かな弱音のタッチが見事で、豪快一辺倒ではない全盛期のベルマンの並外れた表現力を改めて実感します。
ミスタッチは多めですが、あまりに情感たっぷりな熱演だったためか、楽章終わりに盛大な拍手が。
(しかし、全曲が終わった際の拍手は収録されていません…)

意外と名演の多い同曲ですが、ロシアンな構えの大きさと豪快&繊細な表現力、そして濃厚なロマンを湛えた他にあまり無いタイプの熱演で、とりわけ印象的な録音の1つです。

またカップリングのヘンデルとプロコフィエフも聴きもので、当時のベルマンらしい強靭な打鍵と強烈な推進力に満ちた熱演で痛快です。