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クラシック音楽鑑賞記、時々その他

手持ちのクラシック音楽のCD感想をメインに、気の向くままに色々書きます

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番(ミケランジェリ1965)

2025-04-10 11:55:44 | ベートーヴェン



ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111
アルトゥーロ・ベネデッティ=ミケランジェリ(ピアノ)
1965年 ステレオ、セッション録音
(DECCA、原盤:B.D.M)


ミケランジェリのベートーヴェンop.111には数種の録音が存在しますが、そのうち唯一のセッション録音。古くからこの曲の名演として知られている音源です。

録音は1965年、ローマでのセッション録音。モノラルのような感じで、はっきり言って冴えない音質。
ただ、ミケランジェリの音源の中ではセッションという事もあり、モノラルと覚悟して聴けば音自体は安定しており演奏を楽しむのには十分です。

第1楽章、冒頭から速めのテンポで、抑制的なスタンスですがミケランジェリならではの硬質でクリスタルなタッチが冴えます。
激安BOXに収録された88年及び90年のライヴ録音が広く音楽ファンに聴かれるようになり、今やそちらの方が有名になっているかもしれないほどですが、このDECCA盤はやはり全盛期のミケランジェリならではの完璧なテクニックとリズムのキレ、そしてクールな音色が圧倒的です。
抑制的とはいえ、音楽が進むにつれ内面が青白く燃え上がるのがひしひしと感じられ、スリリングさも十分、聴き応えがあります。

第2楽章、ベートーヴェンの書いた変奏曲の中でも屈指の傑作ですが、ミケランジェリはクールな中にも人間味のある情感を滲ませて、真摯な歌を紡いでゆきます。
速い変奏における技巧の冴えっぷりも凄いですが、何と言っても終盤の最弱音と雪の結晶がきらきらと煌めくようなトリルの美しさが印象的。

名演の多いこの曲のなかでも、特に素晴らしい録音だと思います。
しかし、1961年のBBCでのライヴ録音は、この更に上を行くとてつもない演奏なのです…!また機会があれば、取り上げたいと思います。