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放送大学-面接授業「現金社会からの脱皮」(2016)前編

先日、横浜市弘明寺の放送大学神奈川学習センターで開講された、放送大学の面接授業「現金社会からの脱皮」を受講してきました。

面接授業というのは、普通の大学の講義のように教室で先生が講義を行なう形態の講義
私は放送大学は2年目(3年次編入なので所謂4年生?)ですが、面接授業を受けるのは今回が初めてです



今回、4月22日土曜・23日日曜の2日間、10時~17時15分の間に食事休憩を含み1回85分×1日4時限の講義というスケジュールで実施されました。ちなみにこれで取得できる単位は1単位。授業料は5500円です。


時間割と時限別のテーマは以下の通り。
講義は4人の講師が交代で担当(詳細は後述)しています。

4月23日土曜日
1時限・全体概論「急速に進展するキャッシュレス社会」
2時限・「最新のクレジットカード事情」
3時限・「カードの基礎知識」
4時限・「わが国のクレジットカードの歴史」
4月24日日曜日
1時限・「信用情報の知識」
2時限・「カード関連行政と法規」
3時限・総括(キャッシュレス社会の未来展望)
4時限・講師全員でパネルデスカッション



今回の「現金社会からの脱皮」の講義
2020年東京五輪に向けて、クレジットカード・非現金決済の推進が国策となったことなどを受けて、クレジットカードのシステムを中心に、キャッシュレス社会化に向けて現状や将来への課題を研究するといった内容が主題です。

ちなみに同じような内容で前年度も開講されたそうです。

以前から度々書いていますが、私はポイント目当てでクレジットカードは大好き
100円の買物でも当然にカードを使い、カードが使えるかどうかがでお店を選択するぐらいです。そんな非現金決済にどっぷり浸かっている状態。

またクレジットカードが好きなので、システムや関連情報についてもちょくちょく調べている私には、この講義はピッタりしかも神奈川学習センター(横浜)での開催。ということで申し込んだから見事当選
(面接授業は定員制なので申し込み集中時は抽選になるので)

実際には定員は80人とのことでしたが、参加は68名だそうです。
ちなみに食事休憩は、鎌倉街道まで出れば商店街に飲食店がある他、センター近くにコンビニがあります。ただ混雑を考えると事前にお弁当などを用意して教室で食べた方が時間節約になるかも。


テキストや資料は教科書の形ではなく、各講義の前にかなり分量のあるレジュメの形で配布されます。
一応前方のスクリーンにスライドが映されますが、レジュメと同じものなので、スクリーンが見えづらくてもあまり問題はないです。学校の授業でよくあるスクリーンや黒板の内容をノートに取る。といった形式ではありません。

各時限の講義共に非常に内容が濃く、レジュメの内容が時間内に全部終わるのか心配になるぐらい。
講師の解説も非常にテンポよく聞きやすく、退屈することなくあっという間でした。また講師は全員、長年クレジット業界の一線で活躍していた関係者で、非常にレベルが高い内容であったと思います。


なお最初に、2日目の第3時限で小レポート(300字程度)を書いて提出するとの話があります。


前編・後編の2記事として、この記事の前編では各回の内容の概要の紹介として、感想は少な目とします。
次回の後編で今回の講義を受けて全体的な私自身の意見・感想などを書いていきたいと思います。



4月23日1時限・全体概論「急速に進展するキャッシュレス社会」
講師は小河俊紀氏(元JCB・現在はカードコンサルタント)

まずは今回の講義の核となるテーマ
2014年6月の閣議決定で「2020年東京五輪を踏まえ、キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性向上を図る。クレジットカード等を消費者が安全利用できる環境の整備。公的分野も含め電子決済の利用拡大」
との方針が示され、国策で「世界でもっともクレジットカードが使いやすい安心・安全な国、日本の実現」が進められることに。これは日本のカード史上初の国家による奨励策であることを紹介。

カード決済件数はこの10年で約2倍に増加するも、カード決済比率(デビット・プリペイド含む)は15.7%と先進国含む諸外国の中では低水準。米国は約4割、韓国では7割超となっていること。

国内の多重債務、不正利用ともにこの10年で半減していること。

一方で現金の匿名性による犯罪(マネーロンダリングやテロ資金などなど)、大きな支出となっている紙幣・硬貨の製造コストや管理・保管コストなど現金を扱うことのコスト

日本の現金主義の伝統は明治期以降、戦前の富国強兵策の中で戦費調達の為に国民に貯金を奨励することなどで作られたこと。

最後にクレジットカード以外の非現金決済として、デビットカード・プリペイドカード(au walletなど)。非現金決済化の大きなエンジンとなっている「ポイント」制度


4月23日2時限・最新のクレジットカード事情
講師は島貫和久氏(三菱UFJニコス株式会社、常務執行役員)

まずは非現金決済の手段である、クレジット・デビット・プリペイドそれぞれの特徴を紹介。
クレジットカードは日本では90%がマンスリークリア(いわゆる翌月1括払い)であること
デビットカード(銀行口座からの即時引き落とし)
プリペイドカード(前払い)各種商品券類、近年普及のsuicaなど交通系やWAONなど流通系電子マネー。そして国際ブランド型(au walletのようなクレジットカードのシステムに似ているもの)

高齢化社会の問題。一口に高齢者といっても社会参加に個人差もあり定義が難しいこと
三菱UFJニコスでは、80歳以上での限度額引き下げや更新可否の伺いなどを試行していること。
リスクコントロールの観点から高齢者にはプリペイドが良いのでは?

更に横須賀市のプレミアム商品券で、衣笠商店街の協力を得てプリペイドカード型商品券を試行したこと。
近年の悪用(特殊詐欺の例)
台頭している中国銀聯カードの紹介。中国国内向けから日本を含めアジアパシフィックを中心に海外展開している点

クレジットカード会社の直近の課題として「カード情報保護・カード偽造防止(ICカード普及)・不正使用対策」があること。

FinTeck・IoT・apple payなど先端技術の話。将来はカード会社は、物理的なプラスチックカードの枠に捉われない「決済ビジネス」をおこうなう会社になっていくのでは?という話


4月23日3時限・カードの基礎知識
講師は風間眞一氏(元・日本信販広報部長)
クレジットカード・デビットカード・プリペイドカードの仕組みやそれぞれの特徴から始まり、クレジットカードの仕組みや各種機能、支払方式(一括、ボーナス一括、分割、リボ)、分割・リボ手数料の計算方式などを紹介

日本では9割がマンスリークリアと呼ばれる一括払いでデビットの変形、ロングタームデビットと呼べること。

2015年調査の日常的な支払の金額別の決済手段として、1万円超の50%がクレジットカードで、1万円が現金かクレジットカードの分かれ目であるが、1001円~5000円でも2割がクレジットカードである。
1000円超の支払では調査開始以来、年々現金比率が下がっていること

今後の課題として、
未開拓分野でのクレジットカード決済導入推進。地方や公共料金、教育など
クレジットカードに対する消費者教育の必要性。メリット・デメリットを未成年のうちに知ることの必要性


4月23日4時限・我が国のクレジットカードの歴史
講師は前時限に引き続き風間眞一氏が担当

日本におけるクレジットカード進化の歴史を概説

日本におけるクレジットカードの先祖は1951年に生まれたクーポンチケットを使った分割払い。これは主に企業の福利厚生目的で利用したもの。
しかしその後、小規模小売店保護を目的とした34年通達で割賦販売には規制がかかるも、60年代にはプラスチックカード・口座振替・キャッシング・紛失盗難保険などが登場し現代に通じる進化が。
口座振替に関しては「銀行の信用が高い」日本独特であり米国ではそれほど普及していないこと。また給料振込みが徐々に広がってくることも関連しているよう。

その後も海外旅行自由化やオイルショック以降の販促手段としてなど、時代の潮流にあわせてどんどん進化していきます。1984年から現代では一般的な提携カードが登場。

現在の各種カードにVISA・MASTERなどの国際ブランドが付いている姿は、86~89年に各社がようやくVISA・MASTERと契約して発行出来るようになったところ。
また90年代の規制緩和で分割払い・リボ払いの取扱が出来るようなったこと。

80~90年代の色々な進化で提携カード・国際ブランド・一括・分割・リボなど複数の支払手段が選択できる現代のクレジットカードが形作られた。といって良さそうです。
90年代といえば、関空開港、阪神淡路大震災など私もリアルに覚えている時期。意外に最近であることに結構ビックりします。

また00年代の各社合併でカード会社が3代グループに再編された背景として、90年代の年会費無料化、加盟店手数料率の引き下げダンピング、会員特典などで経営の圧迫が原因であること。
これら「消費者が安心して便利にお得に使えるクレジットカード」の実現との引換えであったように感じます。

私の感想ですが、「国際カードの本格展開」の86年頃の日本信販がVISAを口説き落としてVISA付きのカードを発行できるようになったあたり、講師の先生が特に熱く語っていたような気がします。この辺り、講師の風間氏自身の色々な思い出があるのかも?と思いました。


4月24日1時限・信用情報の知識
講師は由井敬氏(一般社団法人日本クレジット協会顧問)

クレジット事業の根底である3大要素「資金・システム・信用」のうち信用にスポットをあて掘り下げる講義

まずは根底として個人情報と信用情報の違い
次に信用調査・信用情報の役割の中で、3つのC「capital(財産)capacity(支払能力)character(性格)」
クレジットカード申し込み時などの審査というと、勤務先企業の格、正規か非正規か、年収などが話題になりますが、それはあくまで一つの要素のよう「お金は持っていても払いが悪ければいい客とはいえない←性格」

日本信販創業者、山田光成氏の名言として「勤続三年妻子あり」(信用できる要素)

信用情報というと日本では悪いイメージがあるが、いい信用情報(長年滞納がない)は「何もない」に勝る

日本における信用情報機関の成り立ちと歴史から役割の変化。
現在の信用情報機関の役割と機能。

海外、主に米国の信用情報機関の日本とは大きく違うスタイル

プライバシー保護(情報コントロール)や本人開示に関する件。

近年問題となっている、端末の分割購入が一般化している中での携帯電話未払いによる延滞等の情報が原因で住宅ローン契約などに支障が出ていること。奨学金返済や家賃支払にも及んでいる例。

現在日本では複数ある信用情報機関の統合案への是非など。


4月24日2時限・カード関連行政と法規。講師は前時限に引き続き由井敬氏

主にクレジットカードに関する法規制を解説
物販機能部分での経済産業省。貸金機能としての金融庁の2つの省庁が所管する縦割状態であること。
銀行発行か信販会社発行かで適用法規が異なること。
関連法として「割賦販売法」「貸金業法」「資金決済法」「個人情報保護法」「犯罪収益移転防止法」

クレジットカードは貸金業法のH18年改正。割賦販売法のH20年改正の影響を大きく受けていること
貸金業法の総量規制に関して。

特に割賦販売法の支払可能額見込み額計算。貸金業法の総量規制(年収の3分の1)による限度額設定に関しては、日本の法律は世界でも独特である点。(韓国の制度には類似。諸外国はカード会社の自己責任。

私の感想として、限度額設定に関する規制として、多重債務防止など消費者保護の側面が強い一方で、カード会社の保護の側面もあるのかなと感じます。
金融ビックバン時の日本の金融行政は「護送船団方式」である。とよく言われました。カード会社の自己責任といえば一見妥当に見えますが「貸し倒れリスクに強い巨大資本企業が、一定の貸し倒れ覚悟で大きな枠を設定し市場を寡占・独占」することを防いでいる側面も感じます。
特に00年代半ばのカード会社の大規模合併など、必ずしも国内カード会社の経営が順風満帆でない中で、巨大外資に市場を蹂躙されるのを未然に防ぐ。という政府の思惑もあるのかもと。

この他に実際のクレジットカード申込書をベースに、申込書記載欄と法律で要求されている内容。
クレジットカードと同封されて郵送される約款を元に重要な部分の解説など、クレジットカードを所持・利用する上で知っておきたい実践的な面も解説されました。


4月24日3時限・キャッシュレス社会の未来展望。(まとめと提言)
講師は23日1時限と同じく、小河俊紀氏が担当

これまでの講義の復習となるような内容として、
野村総研の予測として2020年のキャッシュレス社会市場は87兆円(決済率29%)があること。
仮設としてカード決済率が米国並みの40%になった場合、個人消費が4兆円底上げされるという小河氏自身の推計。
カード決済率が低い公共料金・教育分野への導入が鍵。小額分野へはデビット・プリペイドの普及が必要であること。未成年者も含めた消費者教育の必要性なども解説。
不正利用としてはウイルスに感染したPCからのカード番号流出が多いことなど。

講師小河氏の私案として、企業間商取引のクレジットカード化を提案。日本の中小企業法人支出のカード決済率は現在1.1%程度。一方で米国は8.4%であることを紹介。
日本の商慣習として売掛け・買掛けによる、後払いの掛け取引が主体であること。売掛け金回収の負担や所謂黒字倒産を防ぐ為にも、特に中小企業の企業間取引のカード化を提案

マイナンバー制度とクレジットカードの連携に関しても取り上げ。
各省庁・自治体などで分散管理されており、問題発生時の責任の所在が曖昧になる構造である点などを指摘。マイナンバーカードがそのもので買物が出来るようなシステムには問題があること。またカード紛失時の連絡窓口、対応など課題が多い。といったことなど

講義は半分程度の時間(45分ぐらい)で終了。残りの時間でレポートと事務局に提出する面接授業アンケートを書くことに。レポートのテーマは予告されていた通り
「2020年の米国並キャッシュレス社会化」「マイナンバーとクレジットカードの連携の是非」の2つ


4月24日4時限・パネルディスカッション
講師4人全員が集合して、まずは各講師から先ほどのレポートの中で興味深い内容のものを紹介

その後、学生側から質疑の形で発言。それにパネリストの講師が回答するといった形で進行

レポートに関しては「2020年の米国並キャッシュレス社会化」「マイナンバーとクレジットカードの連携の是非」この2つ共に未来の話なので正答はないもの。

レポートでは「2020年・・・・」の方は、米国並みになるというのは、半々程度。
ただ全体として「キャッシュレス比率が今よりも増える」という意見が大勢のよう。
米国並み比率実現の鍵として「セキュリティ・外国人対応・小規模店の経営問題、消費者教育」が鍵ではないか?という意見。

一方でコンビニでの非現金決済比率がここ数年で急上昇している点や、女性(特に主婦層)では60歳代でも電子マネー等への反応がよいこと(利便性とポイントなどお得さが牽引)など、「一度普及が始まれば一気に伸びる可能性がある」と今後に期待できることなど。

逆にマイナンバーに関してはレポートでは否定的意見がほとんど。マイナンバー制度自体が始まったばかりで未知数でありセキュリティ面での不安が高いことや、住基ネットが事実上失敗した件などが大きいよう。

マネーロンダリング・テロ資金対策など諸外国からの批判が強い中で個人・事業者共に「見える化・透明化」が国際社会の要請であること。

クレジットカードに関しては消費者教育の重要性。特に小学生の頃からプリペイドカードを教え、高校生ではクレジットや契約に関することなど「生きる為の知識」を教えるべきである。という学校教育の問題など
業界団体等で高校生へのカード教育を持ちかけても、教師自身がカード知識がなく「カード=借金=悪」の意識が強く、断られることが大半といった学校教育の問題への言及もありました。


講師の島貫氏はかってETC開発に携わったとのことでETC関するエピソードを紹介。
2000年沖縄サミットに間に合わせるような形で実用化を急ぐものの、当時は「料金所をノンストップで通過して何が楽しいんだ?」というような否定意見もあったそう。
ETCのここ5~10年の普及スピードを考えれば、市中の非現金決済率の急上昇はありえるとの見解も。

ETCシステムとしては非接触かつノンストップでゲートを通過するため、通信エラーによる徴収漏れに関してはかなり気を使っている(コストをかけている)こと。
これには、取り漏れに関しての考え方の国民性
欧米では「ある程度の取り漏れは仕方がない」イタリアのETCでは徴収率が80%程度
日本では「みんな平等ならば払うという意識」
よってイタリア並みの80%ではなく日本仕様の99%超にする為に、金額を言えないほどの莫大なコストをかけていること(80%でいいなら通行料金はだいぶ安く出来る)など興味深い話がありました。


といったところで2日間の講義を終了しました。

この記事は実際の講義を聴講してと当日配付されたレジュメを元に書いていますが、私の認識不足などにより、実際の講義での内容と異なっている可能性があります。

次回後編では、全体的なまとめや私の意見・感想を書きたいと思います。

次回に続く

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2016/4/27 23:35(JST)
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