失恋論

 忘れようと努力しても、出来なかった人に向けて書くブログ。同時に、恋をまだ一度もしたことがないという人に向けて。

クリスマスの思い出

2006-12-25 08:48:36 | Weblog
    クリスマスは男女で過ごすのは当たり前、という考え方は、逆に、そのステージに乗らなければ幸せではない、という図式を作り出してしまったと思います。
   けれども、それは決して本質ではありません。クリスマスとは、愛するものが近くに居る人も、居ない人も、その現在を肯定するためにあるのではないでしょうか。

   宮田珠己さんの『晴れた日は巨大仏を見に』に刺激されて『サンタ服を着た女の子』が出来た話はあとがきに記しましたが、もうひとつ、宮田さんが書いてこられたことと今回のサンタ本との共通点として、クリスマスは、ミニチュア化した世界を眺める喜びがあるのではないか、ということがありました。巨大な袋や箱に自分たちの町や村を包んでしまう、家族に似た人形を窓に飾っておく、キリストの生誕場面の模型を作ってそこにそれとなく自分の人形を紛れ込ませておく……バレエで有名な『くるみ割り人形』も女の子が人形と同じ大きさになって冒険する話でしたが、舞台はクリスマスの晩でした。

 キリストの生誕シーンは偶像崇拝に通じるとして教会で禁止された時期もあったのにもかかわらず、人々は自宅に隠し持ってその伝統を生き延びさせました。つまり、信仰よりも何よりも先行して、自分たちの似姿をかたどった小さな世界を作りたいという願望があって、そのスタイルとして、集合無意識的に民衆の中に息づいているその国の宗教的世界観が選ばれているのではないか。

 宮田さんは紀行エッセイを得意としますが、グルメにも関心がないし、人との出会いにもそれほど比重は置きません。その国の人々が伽藍やミニチュアを作って親しむ習慣を見出して、小宇宙を紹介していくのです。

 来年二月に出るという宮田さんの新作もベトナムの盆栽をテーマにしたものです。先日のイベントでゲストに来ていただいたときも、その写真をスライドで投影しながら、話を進めていきました。

 宮田さんの友人である女性が妊娠してマタニティブルーになったとき、彼はその女性に「生誕シーン」のミニチュアをプレゼントしたというのです。

 あの「青い鳥」の童話のように、この世界に生まれてくること、そして生まれてくる命を受け止めることは、実はめでたいだけでなく、憂鬱なことなのかもしれません。

 でもミニチュアを眺めるように、この世界を捉えなおすことが出来れば、サンタさんの靴下の中のように、いっとき楽しく感じられるのかもしれない。

 寒く暗いトンネルを潜り抜ければ、そこには、たくさんの飾りが吊り下げられたツリーや、いろんなものが乗っかったケーキが!

僕はキリスト教信者ではありませんが、教会の幼稚園で育ちました。あの教会の、太陽が差し込んでくる色付きガラスには魅入られてしまいます。

 あるいはクリスマスツリーに飾られたメタリックブルーやレッドの小さな箱。中には何も入ってないとわかっているのに、またそれ自体高価なものではないということもわかってい

るのに、なぜ大人になってもそこに魅入られてしまうのか。

 イベントの最後でも語ったように『サンタ服を着た女の子』は自分にとってそれを探す旅、でもありました。

 クリスマスツリーにヒカリモノを飾るという発想はもともと、木々の葉の間から見上げた星空からだといわれています。

 つまりある種の主観、角度を立体化して再現したのがクリスマスであり、やはりミニチュアを愛でるキモチがそこに通底すると思われます。

 それは宗教よりも実は先行した欲求ではないのかと僕は本にも書きましたが、もっと言えば、それこそが宗教の根にあるものではないでしょうか。

 「これは誓ってもいいんだけれどね、最後の最後に私たちははっと悟るんだよ、神様は前々から私たちの前にそのお姿を現わしていらっしゃったんだということを。物事のあるがままの姿。私たちがいつも目にしていたもの、それがまさに神様のお姿だったんだよ」(トルーマン・カポーティ作、村上春樹訳『クリスマスの思い出』より)

 これは逆にも言えます。物事をあるがままの姿をありがたがることなんて、普段はなかなか出来はしない。だからこそ、希釈化という過程を経て捉え返すことで、愛し得るのではないか、と。

 そしてカポーティ少年が寄宿舎に入ることでクリスマスの温かい時間と決別するように、冬至が明けるとともに、眠っていた現実そのものが目を覚ます、そこに至るまでのリハビリ期間ではないのかと。

 中沢新一は、クリスマスというものは、むしろ大人になっているからこそ必要なものなのではないかと言っています。そう、子どもの目に帰ることの出来る時間だからです。

 サンタクロースさえ、居ると信じていたあの頃に――。

本日サンタ女子パーティです!

2006-12-18 08:13:28 | Weblog
  

 あわてんぼうのサンタのように、鐘を鳴らし忘れたり、煙突から落ちたりしないようにと思いながらも、泣いても笑っても、今日になりました!
 ロフトプラスワンの地下室が、いかに「女の子の部屋」になるのか、ぜひ遊びに来て下さい!
 
 子どものときから、オママゴトが好きでした。女の子に混じってのお茶会が!
 サンタ女子がステージに一堂に会するさまが、いまは頭に思い浮かべていますが、それが現実になるなんて!
 
 この日のための、本には登場しないオリジナル・サンタ服が多数登場します!

 ……などと自然に出来てくるように言っていますが、本でも「サンタ服制作」でクレジットされている沙貴子嬢が、夜なべをして縫ってくれていることでしょう!
 
 昨日は私の実家で朝から夜まで通しリハーサルしてみました。でもそれはツリーの形をうすぼんやりと想像しているようなもので、実際のひとつひとつの出し物がどうなるかはまさに本番の一回だけのもの。

 割れてみないとなにが出てくるかわからないクス玉のようなイベントです!

 今回は本自体にビジュアル含めた色んな要素がありますので、イベントも写真展とか平行してやりたかったのですが、結局一箇所ですべての要素を集約させることになりました。

  本に登場するサンタガールズのみんなにも出演してもらって、本の中の要素をどんな風に舞台で見せていくか、考えています。
  サンタ女子ファッションショーを、ぜひ見に来て下さい。
  そして会場にサンタ服を着てきた方は、ぜひ見せてください!

  本の中でも現代の「ハプニング」として触れさせていただいた「悩殺ハレンチ集団」デリシャスウィートスのメンバーの方が出てくださるのはとても嬉しいです。
  僕やお店の人以外に司会の方をお願いすることで、ショー的要素のぎごちなさがなくなり、またツカミOKなイベントに、と思い、靖国神社の見世物小屋のイベントなどでも絶妙な司会を見せ、また歌と踊りも見事な佐藤梟さんにお願いしました。
  
  デリシャのチムニーさんには本当にお世話になっています。60・70年代の「ハプニングエロ」を僕だけの視点で捉えてしまったら、単なる過去賛美になってしまう。いま20代前半で、その時代を知らないけれど、人一倍愛しているチムニーさんの視点を通ることでポップになるし、彼女のイラストコラムとあいまみえることで、裸女がスキーをしたり、バットを振ったりする絵も面白く見ることができるのだと思います。
  今回のイベントでも同じメンバーの魔子さんとともに踊りを見せてくださいます。

  宮田珠己さんとはコーナーを作ってじっくりトークをします。『サンタ服を着た女の子』の発想のきっかけとなった宮田さんの『晴れた日は巨大仏を見に』から、僕は物事を風景として見る視点を多く学びました。クリスマスは風景を自分のものにする季節でもあると思います。きっとそんな話題も出るでしょう。

  枡野浩一さんにはサンタ女子と「しゃべり場」していただければと思っています。NHKの本家「しゃべり場」にも出演したことのある枡野さんなので、サンタ女子のクリスマスのあり方について、男と女の思いの溝について、本音で語ってくださるのではないかと思っております。

  ライターの永田王さんは乙女な僕と正反対なオヤジな女性ですが、まだ何回も会ったことがないのに気の合う人です。いつも「チンコチンコ」とおっしゃるので、僕が赤面してしまいます。どんなトークが飛び出すのやら、ドキドキです。

  三坂知絵子さんは来春、団鬼六先生の「花と蛇」の舞台で主役の令夫人を演じる女優さん。今回のイベントでも、独特のシチュエーションでの扮装を考えておられるとのこと、楽しみです!

  真生女王様は、小柄で目力の鋭い女王様。実にカッコイイんです。彼女の鞭が空気を切る音に、シビれときめきます。

  小説を書いた佐伯ツカサ嬢も、またエレガンスな雰囲気の人です。女の子のストーリーを舞台で見せる工夫を用意しています。

  さてさて、本番ではどんなコトになるのやら!

 ぜひ皆さん、プレゼントやロフト特製ケーキもご用意してますので、お越しくだされば幸いです!

 ♪あわてんぼうの サンタクロース
 しかたがないから おどったよ
 たのしく チャチャチャ
 たのしく チャチャチャ
 みんなもおどろよ ぼくと
 チャチャチャ チャチャチャ チャチャチャ

 
 切通理作PRESENTS
『サンタ服を着た女の子~ときめきクリスマス論』刊行記念
「サンタ女子たちとクリスマス・パーティ」
クリスマスはすべてが逆転する季節! 大人になった女子と男子が「乙女心」を再発見。歌、トーク、踊り・・・・誰の心の中にもある「女子の部屋」でハプニングを経験しませんか?
【司会】佐藤梟(デリシャスウィートス)
【出演】切通理作&サンタガールズ、枡野浩一(歌人)、宮田珠己(巨大仏エッセイスト)、チムニ-&魔子(デリシャスウィ-トス)、永田王(コラムニスト)、三坂知絵子(女優)、真生(女王様)、あいかわこうた(映画監督)ほかアーティスト、パフォーマー
12月18日(月)
Open18:30/Start19:30~23:00
会場・新宿ロフトプラスワン
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/
¥1000(飲食別)
※サンタ服着用者に割引あり  

 途中入退場はラフなのでいつでもお越しください!

片思いのクリスマス

2006-12-15 09:34:37 | Weblog
  『サンタ服を着た女の子』の新聞広告も朝日新聞等に昨日掲載され、刊行記念イベントまでは、あと今日含めて四日です。
  今回はトークイベントだけではなくて、ショー的要素があるので、構成台本を作りました。でもそれは素人の産物なので、音響や照明がうまくからんで、タイミングがズレないで進行できるのか、まったく未知数です。
  でも、そんなギクシャクも含めて「何が起るかわからない」ハプニングなイベントになると思うので、クリスマスに彼氏彼女と過ごせないという鬱憤がある方は、ぜひ一緒に晴らしましょう!

  今日の深夜二時半から放映されるMXテレビの「BONZO」にて、『サンタ服の女の子』の特集をしていただいてます。この本のもととなった、彼を振り向かせるためにサンタ服を作った女子の沙貴子クンと一緒に出演してきました。司会は名調子の鶴岡法斎さん。アイドルの久保亜佐香さんが沙貴子クン制作のオリジナル・サンタ服を着ます。沙貴子クンはとても堂々としていて、彼女は当然イベント当日にもサンタ服で出演するのですが、人前で喋るのは未知数だったのでもっとたどたどしい場合も可能性として含んだ台本を書いていました。でも堂々たるテレビ出演ぶりを見て「当日は大丈夫!」との確信を得ました!

  三回目を迎えた「キリミヤ・シネマラジオ」ではイベントに合わせてクリスマス映画について僕と宮川さんが一本ずつ好きなものを挙げて語るという内容です。
  ここを押してください。
  しかし、アクシデントによるノイズが発生し、僕が挙げている映画のくだりが丸ごと使えなくなりました。でも宮川さんの挙げた映画や、イベントについての話題はUPされていますのでぜひ皆さん聞いてみてください。初のゲストとして映画監督の高橋亨さんをお迎えしています。
  僕がクリスマス映画として挙げたのは、映画秘宝のいまの号で本を紹介いただいた際も話題に出た「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」でした。

  この映画を僕が好きなのは第一に、あの楽しい人形たちの動きですが、クリスマスの話であるというところに絡めて言うと、まずは片思いの話であるということ。ハロウインだったら喜ばれる「恐怖とスリル」をクリスマスに配って恐れられ、撃墜されてしまうスケリントン。でも彼らはまったく悪意ではない。クリスマスが楽しそうで、自分も参加したかっただけ。なのに、場の空気を読めないで阻害されてしまう。
  スケリントンは悲しみますが、しかし自分がそういう存在でしかないなら次のハロウインにはもっと恐がらせてやる、と自分を肯定します。こんなところも好きですね。

  この映画でハロウインとクリスマスは逆立したものとして描かれますが、もともとクリスマス自体にもそうした二面性がありました。地下に眠った精霊がよみがえり、それとコンタクトする季節という意味で、もともとクリスマスとハロウインは似ていましたし、本にも書きましたが東北のナマハゲのように、サンタは子どもたちにご褒美をあげる存在であるとともに罰したり、間引きしたりする怖い存在でもあったのです。
  クリスマスは死者がよみがえるだけでなく、動物が人間と会話したり、身分制の強い時代でも奴隷と主人の関係が入れ替わったりする期間限定の異空間だったのです。

  だったら、女の子がサンタになったっていいじゃない!
  ……というのが『サンタ服の女の子』の主張なのですが、はてさて、それは受け入れられる主張なのか、はたまたスケリントンのように撃墜されてしまうのか。
  後者だったとしても、骨を拾いに来て下さい!



  切通理作PRESENTS
『サンタ服を着た女の子~ときめきクリスマス論』刊行記念
「サンタ女子たちとクリスマス・パーティ」
クリスマスはすべてが逆転する季節! 大人になった女子と男子が「乙女心」を再発見。歌、トーク、踊り・・・・誰の心の中にもある「女子の部屋」でハプニングを経験しない?
【司会】佐藤梟(デリシャスウィートス)
【出演】切通理作&サンタガールズ、枡野浩一(歌人)、宮田珠己(巨大仏エッセイスト)、チムニ-&魔子(デリシャスウィ-トス)、永田王(コラムニスト)、三坂知絵子(女優)、真生(女王様)、あいかわこうた(映画監督)ほかアーティスト、パフォーマー
Open18:30/Start19:30
会場・新宿ロフトプラスワン
ここを押してください。
¥1000(飲食別)
※サンタ服着用者に割引あり。既にサンタ服で来てくれるという人から連絡あって、嬉しい限りです!

「失恋論」精神を引き継ぐ「サンタ服の女の子」!

2006-12-03 17:38:54 | Weblog
   『失恋論』のせつなさを引き継ぐ形で、白水社から出す新刊『サンタ服を着た女の子~ときめきクリスマス論』についての話をさせていただきます。

 昔は女子が好きな男子のためにセーターを編むということがありましたが、いまでは、それはやや「重い」ことに入るようです。でも「サンタ服」なら・・・・・・。
 この本では、服作りのプロでもない20歳の女の子が、やや倦怠期の彼氏を振り向かせるために、自分のスタイルに合ったミニスカサンタ服を作り始めたことから始まり、色んな女の子にイブに着るサンタ服をデザインして配って着てもらう、という運動に発展していきます。
 本来独り言と妄想の世界を現実に引きずり出し、一年に一回だけ「私がプレゼント!」と宣言しても浮かない季節、クリスマスの女子のありかたをフォトストーリーやエッセイで構成したものです。
 トンガリ帽子で「へへっ」と自嘲気味に笑いながら、雪の降り出した町を全力疾走する、任侠映画でどうにもならない男たちが雨の降り出した街を出入りに向けて出発するのと同じように、女子の存在がクリスマスからはみだしてしまう本になったと思います。

 本だけで完結せず、読んだ女の子が真似したくなり、実際にクリスマスにはサンタ服を着てもらう後押しをすることが出来たらなと思っています。そしてクリスマスを真っ赤な偽物サンタ、である女の子で染めてしまいたいのです。たとえつかの間、妄想上であっても。
 もしご興味を持っていただけましたら、ぜひご一読・ご感想お寄せください!