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冬のソナタに恋をして

過去との対峙

ミニョンはユジンを車に乗せて、南怡島に向かった。
どこに行くとは言わずに、
「ユジンさん、今日は仕事をサボって、2人でドライブしましょう。」とニッコリ笑った。
ミニョンはデートするような気分で、ウキウキしていたが、ユジンは無表情で物思いに沈む様子だった。さっき、母親からミニョンとの関係を注意されたことが気になって、サンヒョクのことを考えていた。南怡島に近づくにつれて、ユジンの顔は暗く曇ったが、ミニョンは気が付かないふりをして、車を船着場に止めた。
「キレイなところですね」
「ミニョンさん、違う場所に行きませんか」
しかし、ミニョンは車のドアを開けて、ユジンを誘った。ユジンは渋々車から降りて、一緒に船に乗った。

久しぶりの南怡島は、少しずつ春の気配を見せており、雪はまばらに積もっているだけだった。
ユジンはいろんな思いを胸に、景色を見つめながらぼんやりと歩いていた。どうしてもミニョンといると、チュンサンを思い出してしまい、物陰からチュンサンが現れるのではないか、と思ってしまう。自分が18歳にもどった気分になった。あの楽しかった思い出と、景色は何ら変わりはないのに、彼だけがいない。

むこうからミニョンが走ってくるのが見えた。手にはサングラス付きフードのジャケットを持っている。ユジンが寒いから、とわざわざ持って来てくれたのだ。
ユジンは慌ててフードを被り、目元を隠した。
チュンサンにそっくりなミニョンに話しかけられて、その直後に2人乗りの自転車を見たら、思わず涙がこぼれたのだ。
ユジンはいったい何のために、ミニョンは自分を南怡島に連れて来たのだろう、と思った。


ミニョンは静かに涙を流すユジンを見ていた。ユジンが忘れられない彼との思い出の場所を見たかったのもあるが、何よりユジンに現実を見て欲しかった。チュンサンは死んでしまったけれど、チュンサンではないが、ユジンをまた明るい日差しの中に連れ出すことが出来る、自分を見て欲しかった。
「影の国へ行った人の話を知ってますか?」
「知りません。どんな話ですか?」
「影の国に行った人がいたんです。でも誰も彼に気がつかなかったんです。」
「それで?」
「それで、、、その人は寂しかったんですって。おしまい。つまんない話ですよね。」
ユジンは寂しそうに笑った。あのとき、チュンサンの気持ちをわかってあげられなかった自分を悔やんだ。もっと深いところで理解したかった。死んでしまうならば。
「誰に聞いたんですか?」
「、、、友達です。」
「ああ、その友達は寂しかったんですね。」
「そうなんです。そのときはちゃんと理解してあげられなかった、、、でも今はそう思います。」
「その友達は今どこにいるんですか?」
ユジンは答えずにじっとミニョンを見ていた。
「なぜ私をここに連れて来たんですか。」
すると、ミニョンは真っ直ぐに目を見ていった。
「バレましたか」
「どうしてここだと分かったんですか?」
「だって思い出が少ないって言ったから」
ユジンは完全に心を閉ざして、くるりと向きを変えて帰ろうとした。
するとミニョンが腕を掴んで言った。
「ユジンさん、来てください。」
ミニョンはユジンを湖岸に連れて行った。

「ユジンさん、いったい何が見えますか?」
南怡島は美しさに溢れていた。周りの山々にはほんのりと雪が積もってキラキラと輝いている。葉がすっかり落ちた木々たちは、サワサワと静かな音楽を奏でていた。冬鳥たちの優しい歌声、湖岸に反射した夕陽のきらめき、何もかもが美しく、世界は穏やかさと優しさに満ちているのに。

しかし、ユジンの顔は悲しみをたたえて、どこかみえない世界を漂っているようだった。
ミニョンは彼女の横顔をじっと見つめていた。一人きりの世界に閉じこもるユジンを、なんとか現実の世界に連れ戻したかった。
「ユジンさん、影の国にいるのはあなたでしょう?いつまでも悲しい思い出にしばられて、彼に囚われて、それで誰かを愛することができるんですか?それとも一生一人で過ごすんですか?」
ミニョンは真剣さと切なさの混じった口調でユジンに問いかけた。しかし、ユジンはいつまでも黙ったまま、湖面を見続けていた。
2人とも帰りのドライブは一言も口を聞かなかった。ユジンは完全に一人の世界に入っていた。ミニョンは目線も合わさずに、一礼して自分のホテルの部屋に入るユジンを見守った。
今日のことが吉と出るか、凶と出るか分からないが、ユジンの目を覚ますために、一石投じたことに悔いはなかった。
一方でユジンも、ミニョンに言われたことが心の中で波紋のように広がって、いつまでも考え続けていた。
2人の眠れない夜がふけていった。

コメント一覧

kirakira0611
@satochannoniwa さま、そう言っていただけるとありがたいです。
またよかったら読みに来てくださいね。
わたしも忘れて何回も動画で確認してます。
satochannoniwa
私は あれほど観たのに、、
もう、忘れてる、 ありがとう、、
kirakira0611
@usagimini さま、そうなんですね。
わたしはそこまでとは思ってませんでした。観る人の数だけいろんな見方があって面白いですね。
参考になりました。
usagimini
こんばんは。あ~、このシーンねぇ…^^
ここで、ユジンの中のチュンサンの想い出がミニョンにに塗り替わった んですよねえ。
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