東京大学入試地理B

東京大学入試問題(前期)地理Bの問題・解答・解説。2006年・2007年の2年分。

07年第2問設問A 食料の国別消費量

2007年03月01日 | 東京大学
第2問 食料と環境に関する設問Aと設問Bに答えなさい。

第2問設問A 次の表は、いくつかの国の一人当たり食料供給量(年)を示す。 



(1)表のA~Dの食料は、いも類、水産物、肉類、乳製品のうちのどれか。

(2)上の問(1)で、Aを判断した理由を、複数の国をあげ、30字以内で述べよ。

(3)いも類に含まれる主要作物は、さつまいも、じゃがいも、キャッサバ、タロイモ、ヤムイモである。インドネシア、ナイジェリア、タンザニア、ブラジルのいずれの国においても、その国のいも類供給量の半分以上を占めているのは、どのいもか。

(4)肉類に含まれる主なものは、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉である。中国、ドイツ、スペインにおいて、肉類供給量の半分以上を占めるのはどれか。

(5)穀物供給量のうち、中国では米と小麦の生産量が多い。中国において、米および小麦の生産に見られる中国の地域的差異もついて、自然環境にも言及して、60字以内で述べなさい。

(6)インドでは牛糞が伝統的に利用されてきた。インドにおける牛糞の独特の利用方法について、30字以内で述べなさい。

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第2問設問A解答
(1)A-水産物 B-肉類 C-乳製品 D-いも類
(2)内陸国のモンゴルで少なく、沿岸国のノルウェーで多いから。
(3)キャッサバ
(4)豚肉
(5)年降水量750~1000mmの秦嶺山脈・淮河線より北は冷涼少雨で小麦、南は温暖多雨で稲作が盛ん。
(6)住宅の壁材の一部や、炊事などの燃料として使われる。
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第2問設問A解説

(1)水産物供給量
日本は水産物62.7、肉類42.4、乳製品93.6、いも類22.2、穀物111.7である(単位kg、2004年)である。
水産物供給量(1人1日、単位g。2003年)
モルディブ  [33万人] 495
サモア    [19万人] 248
アイスランド [29万人] 247
キリバス   [10万人] 204
日 本   [12,808万人] 181
セーシュル  [8万人] 168
リトアニア  [231万人] 165
ポルトガル [1,049万人] 162
韓 国  [4,782万人] 160
マレーシア [2,534万人] 153
ノルウェー  [462万人] 149
*[ ]は人口を示す。
魚介類の摂取量の多いのは人口の少ない島国である。日本は人口が多く、国全体としての魚介類の摂取量も多い。ノルウェーは水産物輸出第2位である(1位は中国)。水産物輸入第1位は日本である。


(2)魚介類の供給量の多い国
ノルウェーの漁業 北海漁場が近いこと、ロフォーテン諸島のような魚介類産卵水域があること、フィヨルドの水深が大きく漁港として適していること、暖流の北大西洋が流れて漁港の多くは不凍港であること、などが、ノルウェーの漁業の発達要因である。ノルウェー国内でも魚介類の需要が多いが、輸出も多い。
1990年以降、フィヨルドを仕切ってサケを養殖し、日本に養殖サケを輸出している。


(3)いも類(統計は2005年)
◆さつまいも
原産地は南アメリカの熱帯・亜熱帯地域。
世界の生産合計 1億294万トン
中国82.8% ウガンダ2.0%
◆じゃがいも
原産地は南アメリカのアンデス高地。
温帯・冷帯で栽培可能だが、アンデス以外では連作障害を起こす。
世界の生産合計 3億231万トン
中国22.6%  ロシア11.6%  インド7.7%
◆ヤムいも
原産地は東南アジアの焼畑農業地域。日本のヤマイモ。
世界の生産合計 3986万トン
ナイジェリア66.7%  ガーナ9.8%
◆タロいも
原産地は東南アジアの焼畑農業地域。日本のサトイモ。
世界の生産合計 1059万トン
ナイジェリア38.0%  ガーナ17.0%  中国15.5%
◆キャッサバ
原産地はブラジルの熱帯雨林~サバナの焼畑農業地域。
世界の生産合計 2億030万トン
ナイジェリア18.8%  ブラジル13.1%  インドネシア9.6%

キャッサバ  マニオク、マンジョーカともいわれる。熱帯低木で、根を食べる。熱帯の自給作物である。甘味の強いキャッサバはゆでて食べる。しかし、苦みのあるキャッサバはそのまでは食べられず、タピオカの原料のデンプンに加工される。
ブラジル原産のキャッサバが、アフリカで栽培されている。17世紀、ブラジルを植民地としていたポルトガル人貿易商人が、アフリカから奴隷を輸出する時、船中で奴隷の食料としてキャッサバを食べさせた。黒人奴隷貿易のために、アフリカでキャッサバの栽培が盛んになったのである。



(4)肉類の主要生産国(2005年)
◆牛肉
世界生産合計 6,019万トン
アメリカ18.7% ブラジル12.9%  中国11.3%
◆豚肉 
世界生産合計 1億0224万トン
中国48.9% アメリカ9.2% ドイツ4.4%
◆羊肉
世界生産合計 1,306万トン
中国33.3%  インド5.5%  オーストラリア4.7%

鶏肉 アメリカの生産量が多い。鶏肉は発展途上国では各戸が庭先で飼っている。しかし、鳥インフルエンザが人間の新型インフルエンザ流行の原因になるとして、インドネシアでは庭先飼いを禁じた。他の東南アジア諸国も禁じる方向にある。そのため、鳥インフルエンザとは一応は無関係の、ブラジルの鶏肉生産が増加している。



(5)中国の農業地域
チンリン・ホワイ線 秦嶺山脈(チンリン山脈)と淮河(ホワイ川)を結ぶ線が、畑作・稲作の境界線である。チンリン・ホワイ線は年降水量が750~1,000mmであり、これより北は畑作、南は稲作である。アメリカ同様、降水量と気温で大まかな農業地域が決まる、適地適作である。




(6)インドの牛
インドの牛肉消費量増加 ヒンドゥー教では牛は神の使いであり、牛肉を食べるのはタブーであった。しかし、インドの牛肉消費量は年400万トンに増え、アメリカ、中国、ブラジルに次いで世界第4位である。経済発展とともに、経済格差が広がったといわれるが、その経済的に恵まれたインド人は牛肉を食べるようになった。
しかし、国家全体が牛肉を食べるのをタブーとしていた時代は終わったわけではない。牛肉を食べないし、牛の糞を壁に塗り込めて断熱性を高めたり、燃料を買えない家庭では牛糞を丸めて保存して炊事用の燃料として使う。そのような家庭が少なくない。



 
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第2問設問Aは終了
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