東京大学入試地理B

東京大学入試問題(前期)地理Bの問題・解答・解説。2006年・2007年の2年分。

東大地理B第1問設問C 

2006年09月13日 | 東京大学
東京大学2006年前期入試地理B第1問設問C

設問C 下表はエクアドル、ペルー、ブラジルの3か国の輸出品の構成を示したものである。
(1)ブラジルの輸出の特徴を、エクアドル・ペルーと比較しながら60字以内で述べよ。
(2)ブラジルの輸出構成の変化を生み出した、近年における産業構造の変化について、60字以内で説明せよ。 



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解答
第1問 設問C
(1) 輸出比率が高いのは、エクアドルは一次産品、ペルーは基礎金属。ブラジルは機械・輸送機器の工業製品である。
(2) コーヒーのモノカルチャー経済経済から、外資との合弁企業で、輸出指向型の鉄鋼・機械・自動車工業に変化した。
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解説
第1問 設問C
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(1)
1.エクアドルの輸出品(2003年。輸出総額60億ドル)
  原油  39.3%
  バナナ 18.2% 
  魚介類 12.6%
  切り花   4.9%
  石油製品 2.5%
問題(表2)では農産物35.3%、鉱産物37.1%となっているが、具体的輸出品は農産物はバナナと切り花、鉱産物は原油である。
エクアドルには自国通貨がなく、アメリカドルを使っている。最大の輸出先はアメリカ40.6%である。


2.ペルーの輸出品(2003年。輸出総額90億ドル)
  金  23.1%  
  銅  10.4%
  飼料  8.8%
  衣類  7.5%
  亜鉛鉱 4.9%
問題(表2)の基礎金属とは、金と銅である。ペルー国内で選鉱・精錬をして、金と銅の加工レベルを上げ、原石のまま輸出はしない。付加価値を高めて輸出している。日本では、金は非貨幣用、つまり工業用あるいは資産用金塊である。工業用とはハイテク産業の中で使用される。同程度に多いのは資産としてを金塊である。世界的にも同じ傾向である。
飼料の輸出とは、アンチョビーの魚粉を家畜の飼料として輸出することである。表2では、農産物の輸出の中に含まれる。アンチョビーは寒流のパルー海流で運ばれ、チリとペルーの漁獲量が多い。


3.ブラジルの輸出品(2003年。輸出総額731億ドル)
  自動車 7.8%
  機械  7.8%
  鉄鋼  6.9%
  大豆  5.9%
  肉類  5.6%
ブラジルはコーヒーの輸出金額は世界一であり、世界全体の32%を占める。しかし、ブラジルの経済に占める地位は低下した。農産物の中で比較しても、大豆・肉類よりも輸出額は少ない。
ブラジルはBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中でも、政治・経済が安定している。

4.ブラジルの工業化
ブラジルは人口が多く、低賃金労働力が豊富である。また、発展途上国のなあって比較的政情が安定していた。1950年代にはアメリカ、ドイツ、フランス企業がブラジルに進出し、自動車の部品製造と自動車の組立生産を開始した。
日本の鉄鋼企業も、ブラジルの豊富で高品質の鉄鉱石を安定輸入するため、ブラジル企業と合弁で、イタビラ鉄山に近いイパチンガにウジミナス製鉄所(新日本製鐵)、輸出港ヴィトリアにツバロン製鉄所(川崎製鉄)が、製鉄所を建設した。
ブラジルの政権交代、石油危機でしばらく外国資本の進出が途絶えたが、1980年代からは、自動車、航空部品、小型航空機など、海外企業と合弁で付加価値の高い輸出用の工業製品を生産している。


ブラジルの日産ルノー自動車工場は、メルコスール(南米南部共同市場。アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)を新しい市場としてねらいを定め、これらの国に売れるデザインの自動車をつブラジル工場で生産した。日産がフロンティア、ルノーがマスターである。  
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総括
この入試問題の難度をあげるため、エクアドル・ペルー・ブラジルの個々の輸出商品をあげず、農産物・鉱産物・基礎金属・輸送機器のような、抽象的区分の統計(表2)を用いている。
エクアドルの農産物ならばバナナ、ペルーの基礎金属ならば金と銅、ブラジルの輸送機器となれば外資系の自動車となる。これに気づけば簡単な問題で、あとは作文力ということになる。
このような抽象的商品区分の表から具体的商品を推察するのは、並みの大学受験生のレベルでは難しい。やっぱり東大の問題である。
(2)予備校・出版社の解答例では、ブラジルの経済自由化が始まってから鉱工業が発展したかのように書かれているが、これは誤り。
ブラジルが外資を規制したのは1960年代に軍部が政権を掌握した一時期だけであり、戦後、ほぼ一貫して外資導入に積極的であった。



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