森の時間 SINCE 2002

Le Temps Du Bois

ニューデンバー - カナダ日系人収容の町

2017年08月09日 | 随想・エッセイ

 

カルガリーで暮らした6年間、夏になるとBC州南部からBigSkyモンタナ州やオレゴン州までロッキー山中をChevy-Astroでキャンプしながらドライブ旅をしていた。愛車は、オートキャンプ用に奮発したStarCraft仕様のConversion Vanで、サスペンションを取り替えて乗り心地良く改造していた。

ある夏、BC州に点在する日系人収容所があった場所を廻るルートでオートキャンプに出かけた。山間の針葉樹の森に包まれたニューデンバーという小さな集落に辿り着き、その町に吸い込まれるように散策したことがあった。幾重にも連なるロッキーの奥深い谷間に小さなログキャビンが整然と並び、沢山の日本人が暮らした痕跡と日本の田舎町がモダンに再現されたような家並みに驚き、感動した。山々と高い木々に囲まれているので日照時間は短く、暖房の乏しい当時の冬の生活は厳しかっただろう辺地。この町は近くに炭鉱があった頃は栄えていて、日本からのカナダ移住者の最初の定住地でもあったらしい。

戦時下、Vancouverで財産を没収された日系人は、廃村になっていたその町に強制疎開・収容された。丸太の廃屋を改修して暮らし、戦後も元の住居には戻らずにこの町で暮らし続けた方々が多く居られた。日本的家屋に改修された小さな丸太小屋と日本的な前庭が整然と並んだ風景、日本的な墓石で埋まる墓地には花が手向けられていて、日本的な生活感がまだ活きていた。

町のちっぽけなグロサリーで出会った日系のお爺さんと言葉を交わした。日本人と話して懐かしく、楽しそうだった。整然と並ぶ家々の大部分は既に長い間空き家になり、再び廃屋になって森に還りつつあった。朽ちて行く過程にある集落の静寂の中に、一軒の家の煙突から真っ直ぐ上る一本の白煙が見え、人が生活している温もりが伝わってきた。木々に覆われ、自然に溶け込みそうなその家の窓にはテーブルランプの明かりが見えた。住人は、ただその日を待っているかのように毎日同じことを規則正しく、静かに繰り返す日系のお年寄りだろうと想った。

今日は台風一過。太平洋高気圧が内陸の川越まで湿った熱気を送り込み、寒暖計は早朝から30℃を越えた酷暑の日。あの頃キャンプに連れ回った息子から、仕事の一環でBC州の鉱山や炭鉱に研修旅行に行くと行程表を送って来た。ドライブした懐かしい地名が記載されている。思わず当時のアルバムを探し出し、今日は記憶を呼び起こし思い出に耽った。こんな暑い日は室内で想いに耽るのが良い。

 

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

観天望気

2017年08月01日 | 日記


「森の時間」は霧雨。標高千メートル。夏山の趣き。静かな朝。
「霧の深い朝は晴れ」の通りに、みるみる青空が広がり、夏の太陽。久しぶりの強い日差し。早速に布団を広げた。
今日は北軽井沢に移動する。週末は森の時間ファンが3名来られ、音楽、柔道、銀行、異なる分野の観点で話しが弾んだ。皆さんは御巣鷹山慰霊登山をされて、十国峠越えで到着。
滞在中はずっと雨。夜の帳と供に焚き火の炎が心を開き、社会の疑問、思い、人生を静かに語る。

この時期、今年生まれた小さめのツバメが沢山飛んでいる。長い渡り旅とエサ獲りの飛行訓練のようだ。かなり低く、近くを飛び回っている。
「ツバメが低く飛ぶと雨」の通りに、俄かに雲が空を覆い、雨が降り出した。急いで布団を取り込んだ。
自然現象や生物の動きの様子から天気を予測し、農作業や行動を決める、昔からの伝承があるが、以前より変化が目まぐるしく、聞き伝えや身についた本能では予測がむずかしくなってきた気がするが、言い伝えはまだ生きている。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする