この夏、北のモスクワ周辺では、灼熱で森が焼けた。 ウクライナでも摂氏40度の異常な夏が続いたそうだが、 日照時間が短くなるにつれて、木々が黄葉に色づき始めていた。異常に熱い夏の次に続くのは、短い秋とマイナス30度の例年にない寒さの冬との気象予報が出されているらしい。異常に寒い冬の訪れを前に、寒さに慣れているはずのキエフの人々が言う、「地球がおかしくなってしまった。何かが起こる。怖い。」 千年以上続く石畳、森の都市と言われるキエフの公園の木々は、急変する人間の営みが地球に負担をかけ、地球が呻き声をあげている事をきっと感じている。今、キエフに居る。
自然環境問題とは縁遠そうなウクライナで、気候の異常を嘆く言葉は意外な気がした。 チェルノブイリはここから100km程度の北にある。ソ連邦時代に人間の起こした直接的環境汚染の洗礼は受けているので、産業原因による環境悪化には敏感とは思っていたが、地球の急激な変化に危機感を持つウクライナの人々の言葉を聞いて、この天体の生命環境は急激に変化していると痛感した。欲望の笛に導かれる人類の滅亡の歩みは、もはや止められない。文明化して以来、数千年の人類の営みが地球を滅ぼす。地球の限界を感じた最期の人類は、何れは宇宙に脱出する。何万、何億年もの間、宇宙を放浪している間に姿形が変った人類の末裔が、別の地球を見つけるようなことが何万年後かに起こるのかも知れない。
ある取引の見極めと契約交渉にキエフに飛んできた。実現すれば、クルド地区の経済発展の為の資するかもしれないが、地球の滅亡を助長する大型石油産出設備の供給になる。10年前に、達成感と自戒をもって自ら「筆を折った」はずの仕事だったが・・・。