見かけなくなった。
頭にタライをのせて魚や野菜を売り歩く姿を見ない。
セリでは、仲買人組合の組合員しか、魚を買うことは
出来ないけれど、行商のオバァ達だけは黙認されていた。
魚の好みは地域によって違う。
主に居酒屋や街の人が好む魚が高値で取引されるが、
市内では売れないような魚を行商のオバァ達が買っていく。
釣りは魚を選んで釣れないので、行商のオバァ達は
ありがたい。
行商は、直接各家庭を回るので、そこの家の好みを
よく知っている。そして、行商のオバァ達は情報の
伝達者でもある。口から口へと伝わる情報には、
とかく尾ひれがつくものなので、信用で商売をしている
行商は自分で確かめた正確な情報をつたえてくれる。
テレビや新聞などなかった時代には、欠かせない
人たちだったのだろう。
行商で有名なのが「近江商人」。
近江商人のモットーは、
「売り手ヨシ 買い手ヨシ 地域ヨシ」の三方ヨシの
精神だと聞いたことがある。
地域は違っても商人哲学は同じだ。
朝、いっぱいの魚をタライにのせて、自分では頭の上に
乗せられないので、回りの人が手伝って頭の上にのっける。
そんな風景を見なくなった。
