かなり古いスタンダード曲などについて、あれこれグダグダ書き連ねてきているが、比較的新しい時代(といっても1970年代だが)にも優れた歌が数多く生まれている。今回の歌は、中でも五指に入れてもいい名曲である。「悲しみのクラウン」という邦題もある「Send In The Clowns」である。
1957年の「ウエストサイド物語」の作詞(作曲はレナード・バーンスタイン)で一躍評価され、1971年の「カンパニー」、72年の「フォリーズ」、73年の「リトル・ナイト・ミュージック」まで3年連続をはじめ計6回のトニー賞を受賞するなど、ブロードウェイを代表する作詞・作曲家として、今なお活躍を続けるスティーヴン・ソンドハイム。この曲は、代表作「リトル・ナイト・ミュージック」のステージを彩る1曲として書かれた。
ミュージカルとしてはかなりのヒット作だったようだが、原作はイングマール・ベルイマンの映画「夏の夜は三たび微笑む」(Smiles Of A Summer Night-1955)である。スウェーデンの巨匠ベルイマンの映画といえば、深刻で難解な作品というイメージが浮かぶのだが、これは珍しくも楽しい恋愛喜劇であった。ベルイマンお得意の20世紀初頭のスウェーデンの地方の牧歌的生活を背景とした作品で、監督自身によれば「愛というものを少し斜めから見つめてみよう」として製作されたのだが、傑作喜劇の出来上がりとなった。北欧の白夜の中で、弁護士と16歳の幼な妻を中心に、四組の男女が入り乱れてのすったもんだの挙句に、白夜が明ける頃、登場人物たちがそれぞれおさまるところにおさまる、というストーリーだった。キャストは知らない俳優たちであるが、見事な演技アンサンブルだった。
ミュージカルの方は、この映画を下敷きに、旅芸人の一座の看板女優が、苦難を乗り越え、別れた夫とよりを戻すという筋書きで、この曲は、今夜復縁を切りだそうとしている彼女が、はっきりしない元の亭主の言葉を聞き、怒りや失望、やるせなさの入り混じる感情を美しいメロディに乗せて切なく歌うナンバーである。歌としては、どちらかと言えば地味な部類に入るが、内容がドラマティックであり、ベルイマンの映画同様、難解だと評されることの多いソンドハイムの作品中、ミュージカルの劇中歌の枠を超えたポピュラリティを持った曲である。
♪私はやっと地上に降りて あなたは空にいる
道化師を呼んでほしい
心を引き裂かれている人 動くこともできない人
道化師を呼んでください
扉を開けるのをやめたら
欲しいのはあなたの愛だと知った
また入口に入ろうとしたら そこには誰もいない
あなたは笑い話が嫌いでしょうか
あなたとは同じものが好きだと思っていたけど
そうじゃないんですね
だけど道化師はどこ?
早く 道化師をつれてきてほしい
いや 道化師はここにいるのかも
面白い? 奇妙?
経験の豊富な私が こんなふうに
時機を逸してしまうなんて
それで 道化師はどこ?
道化師は いなければならないんだけど
多分 次の年には…
というような、わかったようなわからないような内容の歌である。歌詞に使われている単語はそんなに難しくはなさそうだが、語っている内容が深遠なので、これ以上上手く訳出できなかったのが残念…(泣)
一度は引退したフランク・シナトラが1973年にカムバックした時、この歌を取り上げ好評を博し、1975年にはジュディ・コリンズが歌って同年のグラミー賞「Song Of The Year」(最優秀歌曲賞)を受賞した。サラ・ヴォーンは1974年、77年、81年の3回も録音している。特に81年はカウント・ベイシー楽団との共演(画像)で、ジョージ・ギャフニーのピアノ伴奏を効果的に使ったりして傑出した出来栄えとなっている。スケールが大きく、歌いこむほどにこの歌が味わい深いものとなってくる。こういう歌こそ、文字通り、大人のための、大人でなくては歌えない大人の歌だとつくづく思い知らされる。
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「大人ってもっと大人と思ってた」
1957年の「ウエストサイド物語」の作詞(作曲はレナード・バーンスタイン)で一躍評価され、1971年の「カンパニー」、72年の「フォリーズ」、73年の「リトル・ナイト・ミュージック」まで3年連続をはじめ計6回のトニー賞を受賞するなど、ブロードウェイを代表する作詞・作曲家として、今なお活躍を続けるスティーヴン・ソンドハイム。この曲は、代表作「リトル・ナイト・ミュージック」のステージを彩る1曲として書かれた。
ミュージカルとしてはかなりのヒット作だったようだが、原作はイングマール・ベルイマンの映画「夏の夜は三たび微笑む」(Smiles Of A Summer Night-1955)である。スウェーデンの巨匠ベルイマンの映画といえば、深刻で難解な作品というイメージが浮かぶのだが、これは珍しくも楽しい恋愛喜劇であった。ベルイマンお得意の20世紀初頭のスウェーデンの地方の牧歌的生活を背景とした作品で、監督自身によれば「愛というものを少し斜めから見つめてみよう」として製作されたのだが、傑作喜劇の出来上がりとなった。北欧の白夜の中で、弁護士と16歳の幼な妻を中心に、四組の男女が入り乱れてのすったもんだの挙句に、白夜が明ける頃、登場人物たちがそれぞれおさまるところにおさまる、というストーリーだった。キャストは知らない俳優たちであるが、見事な演技アンサンブルだった。
ミュージカルの方は、この映画を下敷きに、旅芸人の一座の看板女優が、苦難を乗り越え、別れた夫とよりを戻すという筋書きで、この曲は、今夜復縁を切りだそうとしている彼女が、はっきりしない元の亭主の言葉を聞き、怒りや失望、やるせなさの入り混じる感情を美しいメロディに乗せて切なく歌うナンバーである。歌としては、どちらかと言えば地味な部類に入るが、内容がドラマティックであり、ベルイマンの映画同様、難解だと評されることの多いソンドハイムの作品中、ミュージカルの劇中歌の枠を超えたポピュラリティを持った曲である。
♪私はやっと地上に降りて あなたは空にいる
道化師を呼んでほしい
心を引き裂かれている人 動くこともできない人
道化師を呼んでください
扉を開けるのをやめたら
欲しいのはあなたの愛だと知った
また入口に入ろうとしたら そこには誰もいない
あなたは笑い話が嫌いでしょうか
あなたとは同じものが好きだと思っていたけど
そうじゃないんですね
だけど道化師はどこ?
早く 道化師をつれてきてほしい
いや 道化師はここにいるのかも
面白い? 奇妙?
経験の豊富な私が こんなふうに
時機を逸してしまうなんて
それで 道化師はどこ?
道化師は いなければならないんだけど
多分 次の年には…
というような、わかったようなわからないような内容の歌である。歌詞に使われている単語はそんなに難しくはなさそうだが、語っている内容が深遠なので、これ以上上手く訳出できなかったのが残念…(泣)
一度は引退したフランク・シナトラが1973年にカムバックした時、この歌を取り上げ好評を博し、1975年にはジュディ・コリンズが歌って同年のグラミー賞「Song Of The Year」(最優秀歌曲賞)を受賞した。サラ・ヴォーンは1974年、77年、81年の3回も録音している。特に81年はカウント・ベイシー楽団との共演(画像)で、ジョージ・ギャフニーのピアノ伴奏を効果的に使ったりして傑出した出来栄えとなっている。スケールが大きく、歌いこむほどにこの歌が味わい深いものとなってくる。こういう歌こそ、文字通り、大人のための、大人でなくては歌えない大人の歌だとつくづく思い知らされる。
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「大人ってもっと大人と思ってた」