#595: It Had To Be You

2014-02-06 | Weblog
先日、仕事帰りに所用で新宿に足を向けたが、余りの人の多さと動線の複雑さに目が回る思いをした。
人混みに酔ったのだろうが、本当に目が回って気持ちが悪くなりかかった。
首都圏に40年以上も暮しているというのに相変わらずの田舎者だと自嘲せざるを得ないが、全面改装で人気だという伊勢丹新宿本店に入ってみたらさらにビックリ。
想像以上に買物客が多く、特に地下の食品売り場に若い女性が溢れている。
どうやら人気ブランドのチョコレート売場らしい。

2月…
そういえば、蚤助にはもう縁がないが、愛のヴァレンタイン・デイが近いのだった(笑)。
ということで、これまで取り上げなかったラヴ・ソングを紹介してみよう。

It had to be you, It had to be you
I wandered around and finally found the somebody who
Could make me be true and could make me be blue
Or even be glad, just to be sad - thinking of you

きっと君だったんだ 君に違いない
周りを見渡してみたけれども、結局、君しかいなかった
自分を素直にしてくれたり、ブルーにさせたり
それに君のことを思って 悲しくなることが 嬉しいとさえ思わせる

今まで会った他の子は 意地悪じゃなかったし
いらつかされたり 指図されることはなかったけど
こんなにも胸をときめかせてくれる子はいなかった
欠点だらけの君だけど それでもやはり君を愛しているんだ
君に違いない 素敵な君 君しかいない…

曲は“IT HAD TO BE YOU”(1924)である。


別れたことが間違いだったことに気づいた「私」がヨリを戻したがっているというシチュエーションであろうか。
どこか江戸前の都々逸の風味(といってもよくは知らないが)を感じさせる粋な小唄である。
スタンダード通を自負していても、こういう極めつけの佳曲を知らなければ小僧扱いされてしまいそうだ(笑)。

作詞はガス・カーン、作曲のアイシャム・ジョーンズは、ウディ・ハーマン楽団の前身バンドを作った人である。
発表当時、多くの人の心を打ったようで、たくさんのオーケストラの競作となったそうだ。

歌詞にもあるように、別れた相手というのが、どうやら意地悪で、イライラさせられたり、あれこれと指図するタイプだったようで、それをけなしまくっているのだが、そんな欠点だらけの人でも、いやそんな人だからこそ、君が好きなんだ、と言っているのだ。
このあたり、かの名曲“MY FUNNY VALENTINE”を彷彿とさせるところがあるのだが、こちらの方は何でこうなっちゃうんだろうか?

have to は「きっと~である」「~しなければならない」という慣用句だが、これを had to と過去形にすることによって「気づいてみたらそうだったんだ」というニュアンスが込められている。

この曲、映画でも何度となく使われている。

未見だが『彼奴(きやつ)は顔役だ!』(The Roaring Twenties‐1939)ではプリシラ・レインが歌っているそうだし、、『アニー・ホール』(Annie Hall‐1977)ではダイアン・キートン、『恋人たちの予感』(When Harry Met Sally...‐1989)ではフランク・シナトラの歌が大晦日のシーンでバックに流れたし、サウンドトラックではさらにハリー・コニック・Jr.が派手めに歌っていたと記憶する。

そして忘れちゃならない『カサブランカ』(Casablanca‐1942)ではドゥーリー・ウィルソンが演っていたね。
男の美学とダンディズムの映画、ハンフリー・ボガードの魅力が画面いっぱいに発揮された『カサブランカ』では、“Play it again, Sam」と言われてドゥーリー・ウィルソン扮するサムが歌う“AS TIME GOES BY”ばかりが強く印象に残るのだが、実はサムは“IT HAD TO BE YOU”も弾いているのだ。
「君しかいない」というボギーの心のうちを表わした歌として使われたということであろうか。

こういう歌はやはりミディアム・スローで歌わなければ味が出ない。

シナトラはもちろん必聴盤だが、意外にいいのが飄々としたニルソンの歌で、ジャズ・スタンダードに挑戦したこちらが、彼の優しさを物語っている(73年)。


ヴァレンタインということなので、やはり女性からの愛の告白がお約束。


(Dinah Shore/Dinah Sings, Previn Plays)

ダイナ・ショアがアンドレ・プレヴィンのピアノ、レッド・ミッチェルのベース、フランク・キャップのドラムスというトリオ伴奏で歌ったもの(59年)が最高である(こちら)。
彼女はヴァースから歌っているが、女性に「あなたしかいない」とこういう風に言われてしまうと、多くの男性諸君は心を動かされないはずがなかろう(笑)。

あなたしかいないと君も言われたか(蚤助)




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