スマイリーなbamboo日記

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2009-03-24 | 徒然
WBC決勝戦を終えたロサンゼルス。

シャンパンファイトが行われる会場の控え室には、原監督とイチローが残っていた。



原監督

「イチローくん、ありがとう。君たちは本当に素晴らしい侍戦士だ。最高の結果を残せたこと、本当に感謝しているよ。」

イチロー

「ありがとうございます。本当に最高の気分ですね。」


原監督

「大会前に私に話してくれた、スランプを演じるという君のアイデアも功を奏したんじゃないか?選手全員が素晴らしい闘志を持って戦ってくれた。」

イチロー

「はい…。そうなんですが…。」


原監督

「ん?どうした?」

イチロー

「いや、それが、監督には黙っていたんですが、その演技するっていう作戦、やっぱ止めちゃったんですよ、実は。」


原監督

「なんだって?」

イチロー

「いや、だって他の選手が全力でプレーしている中で、自分だけわざと手を抜くっていうのはマズいじゃないですか。」


原監督

「な…、それじゃ演技は無かったと?」

イチロー

「はい。初戦から全力でプレーしていました。」


原監督

「なんと…。ファウルフライを落としたり、バントをミスしたりしたのは、てっきり君の演技だと思っていたんだが、違ったというのかい?」

イチロー

「いやぁ、やっぱりこの時期にプレーのピークを持ってくるのは難しいですね。なかなか身体が思うように動かなかったですよ。」


原監督

「そんな…、それじゃ本当に調子が悪かったということか…。それじゃ今日の4安打はどうなんだ?」

イチロー

「さすがに同じ相手と5回もやれば、球すじもわかりますしね。ようやく捕らえられました。

でも、最後の打席は正直自信無かったなぁ。この大会、チャンスで全然ダメだったじゃないですか、僕。」


原監督

「・・・。」

イチロー

「やっぱ、僕、なんか持ってるんですね、きっと。はは。」


原監督

「それにしても、どうして作戦を止めたことを話してくれなかったんだ。こっちはハラハラしながら…」

イチロー

「ぷっ…。ハラ監督が、ハラハラ、ですか。。。」

原監督

「いや、今のはダジャレじゃないぞ。君の演技が過ぎると心配するところもあったんだぞ。」

イチロー

「すみません。なんか言いそびれちゃいまして。」

原監督

「言いそびれたって…そんな…。」


イチロー

「本当にすみませんでした。なんだか監督をだますようなことになってしまって。まぁ、勝ったんだから水に流すということで。」

原監督

「イチローくん、君って男は、どこまで底がしれないんだ…。」


イチロー

「さっ、監督。話はこれくらいにしましょうよ。みんな待ってますよ!早く会場に行きましょう!」



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あの瞬間、野球の神様が舞い降りたのか、それとも、彼自身が神になったのか――。



確かに、この大会の主役はイチローだけではない。

原監督を含め、勝利のために全力を注いだ全選手が、皆、主役である。

そして、日本の勝利を願い続けたファンの想いも。



ただ、やはり、強い気持ちを持っているだけでは、得点は入らない。

祈るだけでは、勝つことは出来ない。



10回のオモテ、

あの打席でヒットを打たなければ、勝利をその手には出来ないのだ。



もし、本来の調子のままであれば、あの打席、内野安打の可能性が高いイチローを敬遠することもあったはず。

そういうことも含めて――


あの場面で打席が回り、

あの状況で勝負となり、

あの瞬間にヒットが打てる。




出来ることなら、最後に、イチローに聞いてみたい。

数えきれないくらい、ヒットを打ってきた彼に。

その数、3,000本を超える、彼に。


その内の、たった1本、わずか1本のヒット。

その味は、一体どうだったのかと――。







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2 コメント

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すごかった! (hiro)
2009-03-29 21:34:16
こんばんは。
あの試合、最後にイチローが打った時、
真っ先に思い出したのが、kerokeroさんのブログ記事!
「やっぱ演技だったのか!」って(笑)
それくらいすごかったですね。
いい試合でした。
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夢のような物語 (kerokero)
2009-03-30 21:03:43
> hiroさん、コメントありがとうございます!

漫画でもないような出来すぎた結末でしたね。凄いという言葉しか出てきません。
北京の惨敗があったからこそ引き立つ今回の優勝。選手たちも疲れているでしょうけど、また国内でそれぞれ活躍してほしいですね!
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