岩谷宏と一緒

岩谷宏の同居人岩谷啓子(けい子)が、犬猫まみれの官能の日々を綴る

岩谷宏のロック論 58 アメリカ

2008-09-10 07:33:31 | 岩谷宏 ロック
アメリカ

アメリカ人の性格は未知なるものに出会うことによって、
みずからを拡大しない。
むしろ、未知なるものはただちに恐脅、恐怖、絶滅の対象。
これら、不毛なワン・パターン娯楽映画に、今日も長い列ができる。
彼等が映画館に入りきったら、ガソリンをかけて焼いてしまおう。

上陸した清教徒たちが、原住民(インディアンという、
間違った名前で呼ばれている)に対して最初に行ったことはなにか。
答=殺した。

vulnerable、よく使われる形容詞で、良い意味を持つ。
英和辞典を引いてみよう・・・・・・傷つけられやすい、攻撃されやすい・・・・・・
これが、日本語の「感じやすい」とほぼ同じ意味を持つ。
きわめて単層的で原始的な人格概念。
感じることについての、もっと肯定的・積極的・複層的・宇宙全体包括的な
人格概念を示す一般的な形容詞はない(日本語にもない)。
要するに、(広い意味での)他者を感取する能力は、
はじめから欠落している。


日本語でも、「あの子は感じやすいタチだから」などと言った場合、
この”感じやすい”には、拡大的で積極的ニュアンスは全くない。
日本人、以外とアメリカ人に近いかも・・・・。


北米、中南米、あの広い大陸を、英語系およびスペイン語系白人が
おおいつくしている、ものすごい単調と退屈だ。


アメリカ人のメンタリティー、あるいはアメリカ的なメンタリティに対して、
はっきりと否定・否認が行われたのは、ロックの世界からだが、
不思議なことにまだ、他の分野に波及していない。
このメンタリティに、多くの黒人すらおかされていることへの警告も、
皮肉なことに白人ロック・ミュージシャン(デビッド・ボウイ)からなされた。


飛行機---、燃料が供給され続け、エンジンが正常に動き続けねば落ちる、
という、考えてみればおっそろしいシロモノである。
こんなものを考え出し、考えたばかりか生産し就航させている神経は
まともではない。
自然や宇宙の条件とよく調和し、うまくおり合った、
いわゆるソフト・テクノロジーの発想がないという点で、
白人は無神経は野蛮人である。


歴史のなりゆきは、まともでない神経に罰を下す。
これからは二十世紀にかけて毎年ますます、飛行機事故は増えるであろう。
ブルジョワ観光客をどっさり乗せた飛行機が、人里はなれたところに、
どんどん墜落するのは大いに結構だが。


私達が彼等をほろぼすことはできないだろう。
彼等が、彼等の愚直な志向性のなり行きの果てに、
勝手にほろんでくれるだろう。


「ロックからの散弾銃」より。



岩谷宏のロック論 57 ストーンズ

2008-09-10 07:22:07 | 岩谷宏 ロック
IT'S ONLY ROCK'N ROLL

THE ROLLING STONES


胸にペンを突き立て
ステージを血の海に…
きみはご満足か それとも
きみの目に 私はただの
変わった男の子か?


わが身にナイフ突き刺し
今このステージで自殺すれば
きみのもの欲しげな気持はおさまるのか
きみの痛みはやわらぐのか
頭がすっきりするのか?


おためごかしのラブソングで
きみの浮気心をそそったところで
なんになる
私の孤独な癒えぬ


胸にザックリ傷を開け
血をしたたらせば
きみはご満足か それとも
きみの目に私はただの
狂った男の子か?


でも
これがロック
私はロックが好き

訳/岩谷宏


ー「guts ガッツ」昭和50年10月増刊
「ロックアイドルたち」より、23ページ