川崎フューチャー・ネットワーク(特定非営利活動法人)

みんなの力で、川崎を “環境都市” に!

川崎あるものさがし:その2 緑の基本計画、改定

2008-09-02 | 環境コラム
先日、とあるワークショップで、「都市の緑を守りたいと思った時、その障害と
なるものは何か? それを取り除くにはどうすれば良いか?」というテーマで、
数名の方と語り合う機会がありました。参加者により考え方も立場もさまざまで、
もともと結論を出すことが目的ではなかったため、意見を交換し合うにとどまっ
たのですが、その中にこんな意見がありました。

「都市の緑は利益を生まない。だから都市の人たちにとって、緑は邪魔者扱いな
のではないか。その意識を変えない限り、都市の緑は守れない」

むろん、意見をおっしゃられた方も参加者たちも、緑が邪魔者だなどとは露ほど
も思っていませんでしたが(だからこそ上記のテーマで真剣に話し合ったのです)、
なるほど、一理あるな、と思いました。現代社会では、残念ながら、何事も判断
の基準が“利益”、“経済効果”、“儲け”などに結びついて結論づけられがちです。
つまり“金”になることが、優先されてしまうのです。

土地は整地されて売りに出される時、初めて“利益”を生みます。こんもりとし
た山が緑で覆われ、花を咲かせ葉を茂らせているばかりでは、まったく“金”に
ならないのです。ああ、整地して区画整理して家やマンションを建てれば、もし
くは駐車場を作って貸し出せば、いったいいくら生み出してくれることか! もっ
たいない…と、そこに価値基準を見出す人たちにとっては、都市の緑は、まった
くムダなのでしょう。

個人的には、都市の緑は都市にあるがゆえに、ますます重要な意義があり、貴重
でもあるのだと考えているし、価値基準となるものは“金”だけではないだろう
とも考えていますが、確かに上記の考え方に頷く方は多いのでしょう。だから
こそ、都市の緑が切り崩されているのも事実だろうと思います。

もうずいぶんと長いこと、川崎市で緑が減っていくさまを見てきて、いくら痛み
を感じるほどに思ったとしても、涙を流して訴えたとしても、感情論では緑が守
れないことは理解しています。「緑は利益を生まない」の論理を打破するほどの
根拠が必要なのです。

さて、そこで、川崎市の緑の基本計画です。

この計画は、多くの方がご存知のように、平成7年に緑の基本計画(かわさき緑
の30プラン)として策定されました。それが10年経ち、社会情勢の変化への対応
や新総合計画(川崎再生フロンテイアプラン)や川崎市都市計画マスタープラン
などとの整合を図るため、平成17年度から改定作業が始められ、まもなく正式に
改定版が確定される予定になっています。
http://www.city.kawasaki.jp/pubcomment/info138/index.html

新たな改定版の概要として特筆されるのは、まず「多様な緑が市民をつなぐ 地
球環境都市かわさきへ」という基本理念に基づき、5つの緑の将来像と、5つの
基本方針、12のプロジェクト、それを支える50の基本施策があり、さらに132の
おもな取り組みが語られていることです。かなり細かな施策なので、緑に関して
何らかの活動をしている方は、おそらく、これらの中に関係・該当するものを見
つけられるでしょう。それらの活動が、今度の緑の基本計画の中で認められ、あ
る意味、推進することを保証されるわけです。

計画の中には、緑を点ではなくエリアや軸でとらえたり、これまで、あまり具体
的に踏み込めなかった多摩川河岸や臨海部にも踏み込んだりと、担当者の意欲や
思いが感じられるものとなっており、個人的にもひそかに喜ばしく頼もしく思っ
ている箇所がいくつもあります。

とはいえ、計画は「計画」に過ぎず、たとえば緑の重点地区として位置づけられ
たとしても、それだけで緑を守れるものでもなく、計画があるからと言って、安
心できるわけではありません。この新たな「計画」を生かしていけるとしたら、
それは活用していく市民次第でしょう。いえ、何としても、生かしていかなけれ
ばなりません。

川崎市内の最大の緑地である生田緑地のとなりに、今、開発計画がせまっていま
す。もともと向ヶ丘遊園地だったところに、マンション建設計画が持ち上がって
いるからです。土地所有者は、この地域が生田緑地につながっていることもあり、
緑地を残しつつも、建設図面を引きつつあるようです。

遊園地の跡地は“利益”を生まないかもしれません。でも、本当にそうでしょう
か? 今こそ“金”に優る利益を、市民の手で生み出すべきなのではないでしょ
うか。

かつて遊園地の一角であったバラ苑は、川崎市の所有となり、今、市民活動団体
の手によって世話をされ、開花の季節には解放されて、市民の憩いの場となって
います。生田緑地には、1997~2001年にかけて自然の権利訴訟を行ってきた歴史
がありますが、緑の基本計画(改訂版)は、その歴史の延長線上にあるはずです。

川崎市は多摩川を挟んで東京の隣にあり、142.70km2の中に、1,374,079人が住ん
でいます(平成20年2月1日現在)。政令指定都市17市の中で最も面積が小さく、
人口は全国第9位だそうです。たぶん「都市」と呼ぶことに異議はないでしょう。

「都市(川崎)の緑は守れるだろうか? そのために必要なものは何か?」

川崎市には、新たなる緑の基本計画(改訂版)があります。川崎市緑の基本計画
と、川崎市民の力が試されています。

                          2008.5.5「KF-net通信 Vol.3」掲載
                                三枝信子

☆あるものさがしとは:
 川崎市には、こんな良いものがあるよ! というご紹介のコーナーです。
 推薦も歓迎します。
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