富士乃湯は食べるお宿?

富士乃湯は、老舗のお宿と紹介したが、その歴史を感じさせる美術品や骨董品の数々が展示されている。

　チェックインの際、大女将が案内してくれたが、西郷孤月氏の手になる古美術品のコレクションや、かつて松本城主からいただいた貴重な品々が並んでいる。

　この西郷氏の品物はかつて「なんでも鑑定団」にも登場したという。その一方で、100年経つお部屋を改装し、ラウンジ仕立てとして一組限定で宿泊できるようにしたり、お風呂の混雑状況をリアルタイムで調べられるしくみを導入するなど、新しい取り組みも・・・

　

　この不断の取り組みや、シンプルだがどこかあかぬけたセンスって、どこかで・・・と思ったが、小生お気に入りの桜田温泉山芳園にセンスが似ているような・・・

　たとえば部屋の鍵に小さなライトがついていて、暗いところを照らすしくみになっていたり、若女将のお勧めスポットが網羅されている浅間温泉のお散歩地図などに、そのセンスが垣間見えた。

　

　この地図も手作りながらしっかりした印刷物として出来上がっているのもステキだったし、お部屋にあった書き物には、スイーツやお味噌など、ジャンル別に松本市周辺のお勧めのお店が紹介されていた。これもまた桜田温泉っぽいなあと・・・

　さて、表題に「食べるお宿」と書いたが、食事は二食とも部屋食。階段も多く、スタッフさん的には大変だろうが、これもお宿のこだわりの様子。

　

　そして、その内容だが、二食とも品数といい、そのお味といい、抜群のものであった。特に信州サーモンのマリネやローストビーフは、絶品の一言だった。

　また、若女将は利き酒師でもあり、吟味された季節の地酒のラインナップも抜群。お勧めの銘柄を美味しくいただくと、さらに食事も美味しくなるという。

 

　この辺も、ワインソムリエでもある桜田温泉の若女将に相通ずるような・・・

　そして、対応してくれる中居さんがやたら若いお嬢さんたちなのだ・・・で、今回は新人さんらしい人を先輩が指導している様子。

 

　聞くと、信州大の学生さんたちという。確かに、近くに信州大はあるし、繁閑のあるお仕事で規模的にも定住のスタッフさんは使いにくいだろう。

　多少たどたどしさはあったが、初々しく、一生懸命さが見えて個人的には好感が持てた。名門大学の若者が、こうして頑張ってくれるのもいい。

 

　食事の満足度は抜群で、お風呂の数はもう少しだが、お宿自体がもてなしの心にあふれ、かつ新しい工夫も続けている・・・

　個人的には大変気に入ってしまった。これはリピート間違いなしだ。

　

　チェックアウト後、バスまで時間があったので、若女将の散歩地図を片手にぶらりとしてみた。

　実際歩いてみると、浅間温泉に対する愛情が感じられる地図だということがよくわかった。富士乃湯は、食べにくるだけでも価値があるが、トータルでの満足度も抜群のお宿だった。