
読者の皆さんは中村仲蔵という人物をご存じだろうか。江戸時代中期の歌舞伎役者であり、名門の出身でなく、大部屋俳優からスタートして、名題に出世した立志伝中の人物だ。
中村仲蔵は、そのエピソードが落語にもなっていたりして、その筋では有名なのだが、ゆえあって、個人的に稽古を始めている。
音源は、各種あるんだが、いろいろ調査しているうちに、2021年にNHKのドラマで「忠臣蔵狂詩曲№5中村仲蔵出世階段」というのをやっていたことを知った。
DVDでも販売していて、これを買おうか・・・なんて思ったが、知人がたまたまビデオに録画していたことを知り、DVDに焼いてもらい見ることができた。
中村仲蔵出世階段と書いて、「なかむらなかぞうしゅっせのきざはし」と読ませる。早い話が、彼が出世するに至るサクセスストーリーだ。
落語になっている部分は、このドラマの最後の部分だが、一気に見てしまった。結論からいうと、大変に感動した。
主人公は中村勘九郎なので、芝居がらみのところは本物。そして、個人的に萌えポイントでもあり、感動したのは奥さん役が上白石萌音だったこと。
最近見た「35年目のラブレター」でも感じたが、貧乏で苦労人の奥様をやらせると、抜群にいい。妙に暗くないのがまたいい。しかも三味線を弾いて歌うのが上手い。
さて、クライマックスは落語にもなっている部分だが、事実関係として、名題になって最初の頃にやったのが、仮名手本忠臣蔵の五段目の斧定九郎ただ一役だったこと。
今歌舞伎にお詳しい方なら、斧定九郎と言われれば、左右写真のようなイメージが湧くだろう。だが、今イメージする斧定九郎の形は、中村仲蔵が今の形に大改編したものなのだ。
なにしろ、当時は山賊そのもののいでたちで、いきなり出てきて五十両の金を奪い、その直後に流れ弾に当たって死んでしまうという・・・しかもセリフは金を数えて言う「五十両」、ただひとつ・・・
つまり、当時この役は名題がやるようなものではなかったという。さて仲蔵がこの役を仰せつけられた理由については、諸説あるようだが、ドラマでは出世を喜ばない脚本家がいやがらせのためにという設定だった。
いろいろ調べてみると、当の仲蔵が二代目仲蔵に後日談として語ったことによると、ドラマの設定はほぼ真実の様子。実際、落語の方でも三遊亭圓生はその型でやっていた。
もっとも、林家正蔵(彦六の正蔵)でも20分ほどでやっているのを、圓生だと75分となっているので、現実論として演ずるにはそのまま踏襲はしにくいが・・・
そして名題がやらないような役を完全に別物に仕立て、現在に至る形でいまや、見せ場のひとつになるくらいの役にしたのだから、その功績たるや・・・である。
完全な一発逆転のストーリーということになる・・・
だけに・・・突き詰めていけばいくほど、演じるのが大変だと思い知らされている。これという面白い話ではないし、見せ場をどう演じるかが難しい。
やはり手を出してはいけないネタなのかも知れない・・・でも、そういうネタに限ってやりたくなるんだよなあ(汗)
さてさて、どうしよう・・・言ってる時点でその気だろって・・・(苦笑)
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