挽回

2009-11-24 02:33:01 | 管理人の生存確認日記(2012年まで)
 その前日、その情報をチラシで見つけ、私は早速電話をかけた。相手は実家の母である。手には四つ折り大判のカラーチラシ。かのユニクロがかのヒット商品ヒートテックTシャツをなんと600円也で売ってやる!と言ってきたのである。何を隠そうこのワタシ、全く同じ商品を僅か数日前に定価で購入したばかり、という曰くつきの代物である。かのユニクロが今回の大幅プライスダウンに踏み切った背景には、なんでもどこぞで新規開店するらしいというのがあるのだが、理由なんぞはどうでもいい。この破格商品、当然のことながら数に限りがあるのだが、他にもお買い得商品を多数取り揃えてお待ちしております感ありあり。見れば、当日は牛乳とアンパンが配られるとのよし何考えてんだこの会社は。そして開店時間は朝六時……あ゛? 朝の六時ぃ~!?
 いや、しかしである。そうしたお買い得商品購入もさることながら、そして、この寒い中朝六時に来いという高飛車な苦行もさることながら、そのイベント自体が楽しそうではあーりませんか。お祭みたいで。
 幾度目かの呼び出し音の後、母が出た。私はチラシ片手に情報をリーク。母はあっさりのたまった。
「やーよ。寒いもん」
 あ、そう。
 一人で並ぶ程の根性はない。そして、うちのだーりんがこうしたイベントに乗る筈もなく、私はあっさり諦めたのだった。

 翌日、そんなことはすっかり忘れ、私は日課のお散歩兼お使いで地元商店街を歩いていた。「お散歩兼」なので隣町まで毎度の如くに足を伸ばす。やがてコースを一周し、ウォーキングで体が程よく温まってきたところで、私は幹線道路沿いの広い舗装路に差しかかる。ふと、右手店舗の人だかりが目に入った。いつもであれば目もくれない私であるが、その時はどうした訳か好奇心が刺激され、ちょっと見てみるか、という気になった。もっとも理由がない訳でもない。手ぶらな上に暇だったんである。
 そこではご夫婦らしき中年の二人が、何やらワイワイ楽しげにワゴンを漁っていた。その店舗は、ゴミゴミ住宅が立て込んだこの近辺では珍しい郊外型駐車場完備の紳士服の大型店である。近所にその店が(かなり前に)できたことは、私も薄々知っていた。開店時の華々しい大型カラーチラシで見ていたし、何よりビルの上の看板がやたらとでかくて目立つからである。しかし如何せん取扱商品は紳士服である。自分には縁が全くないので一度も立ち寄った事はなかったのであった。しかし、あのご夫婦のウキウキした感じは「ああ、ユニクロに対抗して、なんか安く出してるな」と密かにアタリをつけさせるに十分である。
 ほう、かのユニクロの戦略に対抗し、すぐさま顧客確保に打って出るとは、さすが"紳士服の青木"。店員さんの機転を褒めてやりたい。総ガラス張りの店内でにこやかに会釈してきた感じの良い店員さんになんとなく会釈を返しつつ、そんなことを私は思う。ふと、ビルの上部に戴いた堂々たる大看板が目に入った。いや、

 "洋服の青山"か──!?

 めったなことは言わんで良かったー……。
 ともあれ、こういう紳士服のお店には私は馴染みがないのだが、だーりんに新しいトレーナーの一つでも買ってあげようか、と思いついた。と同時に、昨日ユニクロで出鼻を挫かれ降ってわいた購買意欲をすっかり削ぎ落とされたブルーな事件の方をも皮肉な気分と共に思い出すが、珍しく仏心を出した私は、ビニール入りの商品を手に手に笑顔で店内に入って行った夫婦連れと入れ替わりに、件のワゴンにぶらぶら向かう。問題は品質に見合う価格である。見れば、ワゴンの中の透明ビニールの中身は、どこにでもあるっちゃあるがまずまず普通のトレーナー。どれどれ、肝心の値段の方は──。
 袋を手に取り「……え?」と目が丸くなった。だって、ついてる値札が、
「さんびゃくえん?」

 まじすか。

 テンション上がったー!



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