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あなたまであと一歩 

すべての風景のそこに、あなたが居てほしい。
最愛の人との、とるにたらない日々の断片を綴ります。

またお化けがあらわれた

2012-05-31 | 揺れる
土曜日の事でため息がでるからか、弱いくせに、ぐずぐずな気分でヒロのビールを半分貰ってほろ酔い。

ヒロをこんなに思うのも意地なのかな。
どうでもヒロと幸せになるって意地なのかな。
そうすることだけが唯一の予防策だと私は無意識に思ってるのかな。
今になっても子供みたいに残酷なほどにヒロが愛おしくて堪らない。

絶対にもう離れたくないとか、ちょっとでも私を思っていっぱい思って、って思う心を切り取って引き出しに仕舞ったり出したりと自在にコントロール出来たら、こんなに気掛かりじゃないだろうけど。
どんなに努力したところで、揺れるからこそ切なく、だから気持ちを固定するなんて出来っこなくても。



今日もやっぱりヒロが大好きでしようがないみたい、大好きアイシテル。

ちょっとおどけてそう言って私からヒロの首のあたりから腕を絡ませて抱きつく。
名前をゆっくりと優しく呼ばれて顔を上げる。
ヒロの顔に何のためらいもなく近づく。

唇を合わせてお互いを吸い込む、絡ませる。
それから見つめ合って思い出した。



そう言えばね、この前会社のメンバーでカラオケに行って来たんだけど。
それでね、その時ちょっと込み入ったやっかいな件が仕事であって、ヤバかったんだけど彼の活躍で事なきを得て、すごく助かったっていうか、お手柄だったんだけど。
いっしょに働いてて良かったって言ったらねキスされちゃった。
ちょうど真向いに座ってて…。

「キスされたの?どんな?」

言いながら何度も、こんな感じ?こんな感じ?って訊いてヒロがキスをくり返す。


う~ん、ぜんぜん大したことないチュッって感じでされても何にも感じない、そういう感じ。
どう思う?

「どう思うって、このタイミングで何で言うんだよ、そもそも。」

ソファーの裏側から背もたれに座って私を抱き寄せた、そのままの距離で話し続けるから、ヒロの表情が全部見えないくらいの至近距離で。
自慢してるのか、ヤキモチを妬かせたいのか、どっちだと言われた。

どっちも、って言ってみる。
どっちも違うけど、どっちもとだけ。

「聞けば良かっただろ。」

訊いたよ。
訊いたら、可愛いからって。
10も年下のクセに生意気なの、ってちょっと笑いながら囁く耳元に。

「カワイイからってウチの奥さんになんでキスするんだよ。」

近すぎてやっぱりヒロの表情はわからない。



だから、変でしょ?

そう言うと、変というより、まりんにそれだけスキがあるってことなんだよ、ってちょっと怒った声で言うから、そういうことかっておどけたつもりで応える。
それからひと呼吸置いて、もう1度自分からヒロにキスをする。


不安っていう嫌味なお化けが顔を出して私を嘲るように笑うから、ヒロに構ってほしくて言っちゃったのかも、大して言わなくてもいいこと。
恐らく酔った勢いで、彼は覚えていないだろうくらい、酔ってたから。
私だって、ハエが留まったかのような感じないキスなんてどうでも良かったし。

私はヒロの座るソファーの上に静かに自分の脚を乗せてヒロに絡ませるように、腰をヒロに預ける様に寄せて、私からヒロをきつく抱きしめる。


お化けが出てくるの。
そう言っても、もうヒロの耳には入らないみたい。


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包んでしまっていた心が飛び出て

2012-05-30 | 揺れる
土曜日のランチのエントリーを削除した、なんとなく。
とはいえ、削除した理由はある。

けっこうムキになってた自分ってどうなんだろう、って自問自答する。
まだ力業で感情を押し込んでた自分に愕然とする。

覚悟なんて出来てない、いつもその事実に弱ってた。

妻いる男を好きになりすぎた女を軽蔑して嫌悪して、どうしようもなく許せないって思ってるのは、私です。

たぶん怯えてきた。
どんなしっぺ返しが、この先に待ってるのか。

たぶん面白い暇つぶしに、ちょっと興味を引く面白可笑しい、誰にとってもきっとどうでもいいゴシップ。


同じヨガ教室の仲間とランチをした。
相手は私とヒロのことをもちろん知らないのだから、きっと悪気は無かったのだろうけれど。
非難をしたのは、ヒロじゃなく、さくちゃんのこと。

浮気して妻子を捨てるようなひとは、きっと同じことをくり返す。
そういうひとを許せない。
略奪して奥さんに収まったひとだって、必ずしっぺ返しがきて同じ目に合う。

私は冷静を保って余裕で発言したつもりだった。


覚悟は出来てる。


私のことを言ったわけではないのに、ついそう言ったのは、もうそれこそが冷静でいられなかった証拠そのものである。

Mちゃんに言われた。
たぶん来週には、ヨガ教室の半分くらいの人は、薄っすらとでも知ってると思いますよ、って。


そうだよねぇ、まあいいけど。

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13年目の真実

2012-01-22 | 揺れる
不思議と涙は出なかった。
それが真実なら、仕方がないと思った。

なんで言わなかったの?

「なんでだろうなぁ。…言いそびれたんだな、たぶん。」


言う機会なんて、何度も何回もあったはず。




ヒロの子どもが欲しかったのか、ヒロが欲しかったのか。
それとも…。

「彼女は、オレと居ても楽しそうじゃなかった。オレは彼女より4歳も年下だったし、オレも馴染めなかった。」

たった4歳じゃない。

「萎縮してたよ、雲の上の恩師のお嬢さんだし、な…。」

親とは別居していても、彼女はヒロがいないと迷わず実家で暮らしていたらしい。
でも、働いていなければ、私だってそうしてたかも。

ヒロは、今でこそ穏やかにしているし、表情も柔らかいけれど、昔は頑なな顔をしたひとだった。
周りを寄せ付けたくないってオーラを出しているような、人見知りで、特定のひとの前でしか相好を崩さない、とでも言おうか。


結婚する前からわかってたんでしょ?なんで断らなかったの?

「そういうもんかなって思った、あの頃は。」

ヒロの職場には、そうやって上司や先輩のお嬢さんといっしょになる人がいっぱいいるのだそうだ。
若い頃は、とりわけ忙しくて、なかなか出会いがなかったり、出会えても時間がなくて振られたり。
もちろん、そうじゃない人もいるのだろうが、ヒロは精神的にも肉体的にも余裕がなかったらしい。
痩せすぎていて、青白い顔をしてた、あの頃のヒロ。

「自分から行動起こすの苦手なんだよ、気持ちを伝えるのが得意じゃない、知ってるだろ?」



知らない、そうだっけ?

「そうだろ。」

私は、ただヒロを見つめた。
確かに、最初に好意を示したのは、私だったかもしれない。
でも、その後は、いつもヒロが手を引いてくれたじゃない。

「それは違うよ、いつもまりんが決めてた。」

そして、私はハッキリと意思表示をしてくれるから、安心出来たと言った。


生理がずっとなくて、妊娠したと思い込んでたらしい。
ずっとあとで、彼女の通っていた病院の先生から、卵管が詰まっていただけではなく、卵巣不全だったと聞いて、妊娠したと思い込んでいたと知った。
父親には言えなくて、軽い気持ちで母親が流産したと伝えたらしい。


だから、彼女のお父さんは、知らなかったんだ。


彼女は病気だったのに、ヒロは優しくなかったのね。
私が優しくさせなかったんだよね、本当は優しいのに。

私がヒロを好きだと言わなかったら、違ってたんだよね。
ヒロはたとえ馴染めなくて別れたくても言い出せなくて、そのまま結婚してたよね。

「そうだと思う。」

ヒロの表情を読み取る。
私がヒロの気を引かなければ、彼女は今も元気に暮らしていたのだろう。
もし、彼女がヒロに愛想を尽かして別れたとしても。

彼女はお風呂で手首を切って、私を非難した。
あの寒い冬から13年が経とうとしてる。


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