雨の日には雨特有のにおいがあって、夏の夜にもやっぱりにおいがある。
夏が始まったころの夜は、昼間あんなにお日さまが照ってまぶしかったのに、どこかひんやりした感じもあるのはこの街特有のものか。
翌日のランチのロールサンド用のパンを調達しにコンビニに出かけた帰り、家の近くに出来たダイソーのピンク色の看板を見てウズウズする。
プチプラの小物入れとか可愛いチープグッズには心揺さぶられるけどヒロが嫌がるから我慢。
それは105円だから、とかそういうことじゃなくて、コチャコチャと小物を並べたりするより統一感を大事にしたいらしく。
ダイソーで統一するとか、って半ばやけ気味のジョークに真顔で返してくる。
あり得ないと言わんばかりだ。
こういうところの拘りをヒロは決して曲げない。
ちょっと油断してると、いつのまにか新しいお店が出来ていたりするから、そういう時に街も生きてるんだって思う。
やわらかい風が心地よくて、夜にブラブラする。
大きな白い犬を散歩させる女性や自転車の高校生とすれ違う夜。
この街の今頃の夜の匂いが好きだ。
少しだけ海のにおいも混じっているのは、港のある街だから?!
もう2本大きな通りを上がれば路面電車が走る通りに出る。
何年この街に暮らした?
課の後輩女性のIターン転勤を見送った。
2年9か月、彼女は初めての土地に転属する。
この街で育って、独り暮らしは初めてだと聞く。
小中高大学就職すべてこの街で過ごしてきて、新しい何かを掴めたらと彼女は言って空港の手荷物検査場の前で何度も会釈して頭を揺らして笑顔で入っていった。
3年後また戻ってくると約束して。
Mr.Children -Tomorrow never knows & HANABI ap bank fes 12 LIVE
去年はMちゃんを送り出した。
今年はYさん。
私も見知らぬこの地にやってきて今日も立っている、ただし辛うじて。
そんなに遅くなっただろうか。
夜の散歩を心配したヒロが迎えに来てくれた。
「何やってんの?」
遊び過ぎ?
心配した?
そう訊くと、するだろっ、何時だと思ってんだよって呆れ顔で言うから思わず声を出して笑う。
だってさ夏のいいにおいが始まったから簡単に家に入るのがもったいなくて。
結局もう1周マンションの周りを寄りそって腕を絡めて歩く。
内緒の話をおしえてあげると、ヒロはただ首を傾げて、一拍おいてからマジって訊いてきた。
ベランダに置いた大きなグレーのプランターで順調に育ってるんだよ、さつま芋。
プランターじゃ無理だろって笑うけど、そうとも限らない。
深いし大きいし、すでに根が長くなっている苗?だもの、いけるかもしれない。
パッションフルーツといい、今年の我が家のベランダは楽しみが多いのだ。
暫くしてヒロは、くすくす笑い始めた。
ちょっとバカにしてる、でも愛情もあるよねきっとその瞳の中に。
つないだ手を揺らすから、ヒロから溢れ出た愛情が勢いよく私に降ってくる気がした。
私の日常はたまに苦しいけど淡々と流れている。
少しがっかりするほどに。
7月になったな、ってヒロが当たり前のことを言うのを目を少し閉じて訊くと、今度こそ間違いなく愛が溢れてる気がした。
そんな世間話の挨拶代わりみたいなセリフにさえ癒されるんだもの。
ねえ、私はヒロに愛されてるよね?
俯き加減に小声で唱える。
「ええ?」
って訊き返すヒロに、ううん答えなくていい、って言って歩幅をヒロに合わせるように大きくする。
「なんでそんな当然のこと、訊くなよ。」
。。。なんだ聞えてたか。
私たちは細心の注意を払いながら、自分たち勝手に今日も暮らす。


夏が始まったころの夜は、昼間あんなにお日さまが照ってまぶしかったのに、どこかひんやりした感じもあるのはこの街特有のものか。
翌日のランチのロールサンド用のパンを調達しにコンビニに出かけた帰り、家の近くに出来たダイソーのピンク色の看板を見てウズウズする。
プチプラの小物入れとか可愛いチープグッズには心揺さぶられるけどヒロが嫌がるから我慢。
それは105円だから、とかそういうことじゃなくて、コチャコチャと小物を並べたりするより統一感を大事にしたいらしく。
ダイソーで統一するとか、って半ばやけ気味のジョークに真顔で返してくる。
あり得ないと言わんばかりだ。
こういうところの拘りをヒロは決して曲げない。
ちょっと油断してると、いつのまにか新しいお店が出来ていたりするから、そういう時に街も生きてるんだって思う。
やわらかい風が心地よくて、夜にブラブラする。
大きな白い犬を散歩させる女性や自転車の高校生とすれ違う夜。
この街の今頃の夜の匂いが好きだ。
少しだけ海のにおいも混じっているのは、港のある街だから?!
もう2本大きな通りを上がれば路面電車が走る通りに出る。
何年この街に暮らした?
課の後輩女性のIターン転勤を見送った。
2年9か月、彼女は初めての土地に転属する。
この街で育って、独り暮らしは初めてだと聞く。
小中高大学就職すべてこの街で過ごしてきて、新しい何かを掴めたらと彼女は言って空港の手荷物検査場の前で何度も会釈して頭を揺らして笑顔で入っていった。
3年後また戻ってくると約束して。
Mr.Children -Tomorrow never knows & HANABI ap bank fes 12 LIVE
去年はMちゃんを送り出した。
今年はYさん。
私も見知らぬこの地にやってきて今日も立っている、ただし辛うじて。
そんなに遅くなっただろうか。
夜の散歩を心配したヒロが迎えに来てくれた。
「何やってんの?」
遊び過ぎ?
心配した?
そう訊くと、するだろっ、何時だと思ってんだよって呆れ顔で言うから思わず声を出して笑う。
だってさ夏のいいにおいが始まったから簡単に家に入るのがもったいなくて。
結局もう1周マンションの周りを寄りそって腕を絡めて歩く。
内緒の話をおしえてあげると、ヒロはただ首を傾げて、一拍おいてからマジって訊いてきた。
ベランダに置いた大きなグレーのプランターで順調に育ってるんだよ、さつま芋。
プランターじゃ無理だろって笑うけど、そうとも限らない。
深いし大きいし、すでに根が長くなっている苗?だもの、いけるかもしれない。
パッションフルーツといい、今年の我が家のベランダは楽しみが多いのだ。
暫くしてヒロは、くすくす笑い始めた。
ちょっとバカにしてる、でも愛情もあるよねきっとその瞳の中に。
つないだ手を揺らすから、ヒロから溢れ出た愛情が勢いよく私に降ってくる気がした。
私の日常はたまに苦しいけど淡々と流れている。
少しがっかりするほどに。
7月になったな、ってヒロが当たり前のことを言うのを目を少し閉じて訊くと、今度こそ間違いなく愛が溢れてる気がした。
そんな世間話の挨拶代わりみたいなセリフにさえ癒されるんだもの。
ねえ、私はヒロに愛されてるよね?
俯き加減に小声で唱える。
「ええ?」
って訊き返すヒロに、ううん答えなくていい、って言って歩幅をヒロに合わせるように大きくする。
「なんでそんな当然のこと、訊くなよ。」
。。。なんだ聞えてたか。
私たちは細心の注意を払いながら、自分たち勝手に今日も暮らす。


