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[経済短評]生存のための選択肢

2011-11-02 23:51:10 | マネー&ポリティックス

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インタビュー:高福祉維持なら消費税25%必要=福田東大教授 (ロイター)

財政難、税収入の減少と高齢化に伴う社会保障負担の増大、それに加えて震災復興と原発事故の費用負担など、税と社会保障の問題は切迫したものとなりつつあります。その中で政府は無駄を省き事業仕分けをして何とか費用を捻出しようと悪あがきをしています。先月には首相が公務員宿舎建設の見直しを表明したり、今月にはまた「事業仕分け」を行おうとして、がんばって財源を確保しようと必死です。その一方で、それだけでは足りないことも明白な今、消費税を上げるか否か、ではなく何%消費税を上げるべきかという部分に焦点が当たってるようです。

そうした中、東京大学大学院の福田慎一教授がロイターとのインタビューにおいて、「このまま社会保障制度の歳出にメスを入れなければ、消費税は10%ではなく25%程度まで増税する必要がある」と述べています。教授は「政府は社会保障制度の議論を小出しにして最終的な姿を示さず、負担についても消費税の引き上げ幅について当面5%としているにすぎない」と指摘した上で、「低負担高福祉という幻想を示している」と言い切っています。そして政府は何をするべきか、教授はかなり率直な形でこのように述べています。

国民に、税と社会保障の姿の選択肢を示すべき。スウェーデン型の高負担高福祉にするなら消費税25%で今の制度を維持するか、英国型のように負担も小さく、老後は自己責任でという選択肢にするか、きちんと選択肢を示した方が良い。唯一選択肢を示して国民に問うたのは、小泉政権時の郵政改革だけ。不満は言うが、選択を問うことなく、どうしたらいいか議論してこなかったのがこれまでの日本」

ここで教授は大変重要なことを話していると思います。政治は「選択肢を示すべき」ということです。現在は、今の社会保障制度を前提としているかすらもわからないまま、消費税を何%上げるか、財源をどうするのかという、政治家も国民もメディアもとっつきやすい議論に終始しています。しかしそこからは社会保障の大枠の将来像は見えてきません。「社会保障=税制」つまり「社会保障=金」という、そのとおりなのだけど政策上の議論が起こりにくい状況だと言えます。

また、政党はそうした議論から出た結論らしきものに対して、正面切った審判を仰ごうともしませんでした。同時に有権者も税金の上昇はいやだということしか頭になく、社会保障制度そのものに対して真剣に選択肢を求めませんでした。今のように議論していればいつか景気も回復して税収も上がり、財政問題も解決して、それなりの福祉を得られる、とでも考えているかのようです。

さて、教授は大雑把に分けて、消費税の大増税をやむを得ない「高負担高福祉」と自己責任の増大をやむを得ない「低負担低福祉」での選択を迫っています。現行の「低負担高福祉」という考え方は、経済が右肩上がりで人口もそれなりに増えていくことが前提としたものでした。しかし人口は減少し経済成長も現在の消費税率を超えることはまずありません。その一方で現役世代は次々と引退を迎えようとしています。どちらの選択肢を選ぶにしても、現行の社会制度及び税制を変えていく他はないのであり、勝手に税収が増えることを見込んではいけないのです。

個人的には「低負担低福祉」という道がいいのではないかと思います。それには「高負担高福祉」を目指す場合同様に何かを変えなければなりません。例えば、その中の一つが「定年」「老後」「引退後」という概念ではないかと思います。現在は医療の発達により定年年齢とされる60歳以上でも元気に動くことができます。一方で年金受給開始年齢も少しずつ遅くなっています。そうなると定年を遅らせる、または定年後でも働くことで収入を得る、もしくはその収入とわずかな年金を頼りに生活を続けていくという制度も作っていく必要にあると思います(別に早い段階で引退するという選択肢をなくせとはいいません)。

「そんなにも長く働くひつようがあるのか」と言われそうですが、それをしたくなれければ今の時点から高い税金を払う覚悟をしなければなりません。いずれにしても何もしないのが一番の悪、何かを堪忍しなければ暗い将来が待っているように感じます。しかし問題は政治の世界はそこまでの視野を持った議論をできるかどうかであり、次の総選挙で有権者が真剣に社会保障制度を考えることができるかだと思います。

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