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第3話(3)

 「比叡」誕生(3)

 推進器は高速回転するので、バランスが大切だ。
バランスが良くないと船体振動を誘発し、推進系の損傷につながる。

 いままでは静的バランス試験だけだったが、今回は動的バランス試験も行うこととした。

 工場でその試験に立ち会っていると、造船部で甲鉄*を担当している長尾君が見学に来た。
「やあ、推進器の方は順調そうだね。」
「お手本があったので、何とかなったよ。君の方はどうかね。」

 「船材の高張力鋼は八幡製鉄所の協力で作れたが、問題は甲鉄の方なんだ。」
「“金剛”の資料が不十分だったのか?」

 「従来のKC鋼にかえ、表面にニッケルやクロムを入れた甲鉄を作ったんだが、イギリスから渡された“金剛”の試験片に比べ、耐弾性が今一なのだ。」

 「製造時の細かいノウハウまでは教えたくなかったのだろう。」

 「まあいいさ、このところ徹夜続きだが、最良のものを作ってみせるよ。」
「期待しているぞ。」

*甲鉄:
 舷側や砲塔等を敵の砲弾から守るため貼り付ける装甲板。
 二重構造になっており、表面側は硬く貫通されにくい材質を、内側は爆発力を吸収する
 粘い材質を用いた。
 「比叡」の舷側甲鉄厚さは20センチだった。

     
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