○「流行語大賞」予想が終わり、「今年の漢字」の発表も終わって、いよいよ今年の振り返りの大詰めと言えば「今年の10大ニュース予想」である。中でも、一般投票で選ぶスタイルの代表格が、この「読売新聞・読者が選ぶ10大ニュース」。
○昨年は、国内編が的中7個と何の感想も浮かばない(ある意味一番困る)結果に終わった一方、海外編は的中9個で図書カード獲得と、ひとまずの面目を保った当ブログであるが今年はどうか。ではまず国内編から。
1.企画主旨
○12月17日で既に投票が締め切られているが、あらかじめノミネートされた「日本編」「海外編」の主要ニュース(今年は日本編60個・海外編51個)から、各10項目を読者が選んで投票し、それぞれ得票率の多かった上位10個が「今年の10大ニュース」。
○決定したトップテンと投票内容が完全一致した応募者に賞金、次いで一致率が高かった所定の人数に記念品が贈呈される。よって、純粋に個人の主観で投票というより「みんなが重要と思ってそうな項目」に票が偏るという、まんま「美人投票理論」的な行動を取る応募者もいるのではと思う。というか、この予想記事自体がそれ。
2.日本編ノミネート項目
○では、どのような項目が具体的にノミネートされたのか。一挙紹介。
(1) 1月 日航が会社更生法の適用を申請、過去最大の破綻
(2) 1月 トヨタが大規模リコール
(3) 1月 鳥取連続不審死、元ホステスを強盗殺人容疑で逮捕
(4) 2月 埼玉連続不審死、交際相手の女を殺人容疑で逮捕
(5) 2月 朝青龍が現役引退、泥酔暴行問題で引責
(6) 2月 バンクーバー五輪、日本は銀3銅2
(7) 3月 北教組幹部ら逮捕、民主議員に違法献金
(8) 3月 核持ち込みなど「密約」認定
(9) 3月 シー・シェパード元船長を逮捕
(10) 3月 足利事件再審、菅家さんに無罪判決
(11) 3月 毒ギョーザ事件で元従業員を逮捕
(12) 3月 水俣病集団訴訟が和解
(13) 3月 「高さ日本一」スカイツリー
(14) 4月 若林元農相が「二重投票」で議員辞職
(15) 4月 野口さんと山崎さんが宇宙で対面
(16) 4月 井上ひさしさん死去
(17) 4月 明石歩道橋事故で初の強制起訴
(18) 4月 宮崎で「口蹄疫」発生
(19) 5月 「もんじゅ」が14年5か月ぶり運転再開
(20) 5月 日米共同文書で「普天間」移設先は名護、社民連立離脱
(21) 6月 「子ども手当」支給開始
(22) 6月 鳩山首相退陣、後継に菅副総理・財務相
(23) 6月 小惑星探査機「はやぶさ」帰還
(24) 6月 サッカーW杯、日本は決勝T進出
(25) 6月 高速道路の無料化実験スタート
(26) 7月 野球賭博関与で琴光喜ら解雇
(27) 7月 参院選で民主大敗
(28) 7月 改正臓器移植法が全面施行
(29) 7月 金賢姫元工作員が来日
(30) 7月 所在不明の「100歳以上」相次ぐ
(31) 7月 大阪で2児放置し死亡させた母親逮捕、児童虐待事件相次ぐ
(32) 8月 広島・平和記念式典に米大使ら初出席
(33) 8月 瀬戸内海で海保ヘリ墜落、5人死亡
(34) 8月 高校野球、沖縄・興南が春夏連覇
(35) 8月 宮里藍選手が米ツアー今季5勝目
(36) 9月 113年間で最も暑い夏、気象庁発表
(37) 9月 初代若乃花・花田勝治さん死去
(38) 9月 鈴木宗男衆院議員の実刑確定、失職
(39) 9月 尖閣諸島沖で中国漁船が海保巡視船と衝突、海上保安官が撮影ビデオを流出
(40) 9月 日本振興銀が破綻、初のペイオフ発動
(41) 9月 民主代表選で菅首相再選
(42) 9月 政府・日銀、6年半ぶり円売り介入
(43) 9月 郵便不正事件の押収証拠改ざんで大阪地検特捜検事を逮捕、村木元局長の無罪確定
(44) 9月 イチロー選手が10年連続200安打、自らの大リーグ記録更新
(45) 10月 たばこ増税で大幅値上げ
(46) 10月 小沢民主元代表、強制起訴へ
(47) 10月 名古屋市議会のリコール署名簿提出
(48) 10月 日銀「ゼロ金利」復活
(49) 10月 ノーベル化学賞に根岸氏、鈴木氏
(50) 10月 内村選手が世界体操で日本人初の2連覇
(51) 10月 二十三世本因坊・坂田栄男さん死去
(52) 10月 正倉院「幻の宝剣」、1250年ぶり確認
(53) 10月 警視庁テロ資料がネット上に流出
(54) 10月 COP10「名古屋議定書」採択
(55) 10月 羽田空港拡張、32年ぶり国際定期便
(56) 11月 露大統領が北方領土訪問
(57) 11月 ロッテが5年ぶり日本一
(58) 11月 白鵬の連勝63でストップ
(59) 11月 裁判員裁判で初の死刑判決
(60) 11月 柳田法相辞任、「国会軽視」発言で
3.予想上の注意
○予想する上で、特におさえておきたい3つの傾向性がある。
【傾向1】ニュース自体の重大性はもとより「お茶の間レベルの分かりやすさ・サプライズ感」が重視される。
○この企画は、ジャーナリストやメディア企業が独自に選定した類似企画と違い、不特定多数の人間による得票率で選ぶ企画である。そのため、
①ワイドショー的・三面記事的な色彩が強い、またそういう切り口で捉えやすい話題の方が総じて有利である(例:08年1位「中国製ギョーザで中毒、中国産食品のトラブル相次ぐ」)。政治や政局の話題は相応にランクされるが、お茶の間的にややこしい話題はあまり上位に来ない。
②オリンピックの金メダルとかノーベル賞といった「国の栄誉」にわかりやすく絡む話題は、当然のように有利。
③天災や事故の場合、もっとも単純な比較の尺度である「被害者数の大小」が重要。また同じような被害規模なら、一番「事件感」が強い大地震が有利。
④項目や解説欄に「史上最大」「初の」「歴史的な」「前代未聞」といった注釈が付いていると、投票者の判断を助ける意味で多少有利。
【傾向2】ジャンルやテーマが重複していたり、類似性が強い話題が複数ノミネートしていると、投票行動が割れてしまい、結果的にそれぞれの得票率が伸び悩むことがある。
○「10個まで」という枠が予め決められている中、誰でもできる限り広いジャンルやテーマからバランスよく10個を選ぼうとする(はずである)。ジャンルとは例えば「野球」でも良いし「民主党政権」でも良い。
○同一ジャンル・テーマ内でカブっている候補が多いほど、またカブリの程度が強いほど、票が分散するリスクを持っている。個々のニュースだけで考えずに、カブる要素を持った別の候補がノミネートしていないか、検証する必要がある。
○「10個まで」という枠が予め決められている裏返しとして、ジャンルやテーマがカブッた候補が複数あり、その中の1つを選ぶことで、他のいくつかの候補のテーマまでを包含できそうなものがあった場合、その候補が重宝がられる(票を集める)可能性がある。
【傾向3】同企画独自の特徴として、例年「皇室」「大相撲」「プロ野球」の候補が非常に強い。
○「3大鉄板ジャンル」と言っても良い。ただし「プロ野球」の場合、特に「巨人」関連の候補があるか否かが、かなり全体の順位に影響する。
○例えば、プロ野球最大のイベントと言うと日本シリーズであり、必然的に「○○球団が日本一」という話題はトップテンの常連である(05年8位「ロッテ日本一」、06年8位「日本ハム日本一」等)。
ところが、こと巨人がリーグ優勝しながら別の球団がシリーズ制覇した年に限っては、「巨人のリーグ優勝」自体が別にノミネートされるため、【傾向2】の通り投票が割れ、この傾向が当てはまらない(07年「中日日本一」、08年「西武日本一」)。
○もちろんどこが優勝とか、そんなことが吹っ飛ぶほど大きな話題があった年は、そちらが上位に来ることは言うまでもない(04年3位「プロ野球界大揺れ、50年ぶり新球団」)。それが巨人絡みであった場合は、さらにいわずもがな(01年8位「長嶋監督勇退」)。
4.1次選考
○全60個を、テーマの有利不利や、報道された量感(個人的印象だが)から、1/3の20個に絞ってみた。「どんなラインナップになるにせよ、これ以外からトップテン入りする事態は考えにくい」という一次絞り込みである。その中で特に、トップテン上位に入るかは別として、最低でもトップテン落ちは考えにくいという「Aランク」を以下の3つとした。
【Aランク―3個】
(24) 6月 サッカーW杯、日本は決勝T進出
(36) 9月 113年間で最も暑い夏、気象庁発表
(39) 9月 尖閣諸島沖で中国漁船が海保巡視船と衝突、海上保安官が撮影ビデオを流出
○その他の有力候補は以下の17個。それぞれ軽い寸評を付す。
【Bランク―17個】
(1) 1月 日航が会社更生法の適用を申請、過去最大の破綻
○会社知名度・生活への影響とインパクト大。事業会社の倒産として「過去最大」も入賞にはプラス。懸念材料は、昨年も日航経営危機の話題がノミネートしていたこと。
(5) 2月 朝青龍が現役引退、泥酔暴行問題で引責
○「3大鉄板ジャンル」の大相撲。現役の大横綱が不祥事で引退と、例年なら問題なくトップテンクラスだが、相撲界からの重複候補が多く、票の分散が心配。
(18) 4月 宮崎で「口蹄疫」発生
○一地方の畜産業が丸ごと壊滅していく様子を、日々リアルタイムで見せられる衝撃は強かった。
(20) 5月 日米共同文書で「普天間」移設先は名護、社民連立離脱
○「民主党政権」から多数ノミネートの1つ。(22)とは原因-結果のような関係にあり、重複感が強い。
(22) 6月 鳩山首相退陣、後継に菅副総理・財務相
○これも「民主党政権」という大テーマの一つ。「普天間」「政治とカネ」「選挙」などいくつかの小テーマに全て絡む。参考までに、福田退陣は08年2位、安倍退陣は07年1位。
(23) 6月 小惑星探査機「はやぶさ」帰還
○テーマがカブる候補もなく、お茶の間受けする要素も強かったバランスの良い候補。
(26) 7月 野球賭博関与で琴光喜ら解雇
○大相撲関係2つ目。票の分散リスクが心配だが、相撲界全体への影響を俯瞰してみるならこれが一番か。NHKの中継が「史上初めて」中止というのもプラスポイント。
(27) 7月 参院選で民主大敗
これも「民主党政権」関連。国政選挙の話題は当然毎回強く、自民惨敗の3年前参院選は07年4位。今回の場合「大敗」だが「地滑り的」という程のインパクトはないのが、やや微妙なところ。
(30) 7月 所在不明の「100歳以上」相次ぐ
○「消えた高齢者」問題。事件そのもののサプライズ感は強かったが、それを今年の10大ニュースに入れるかというと、もう一つパンチが弱い気も。
(42) 9月 政府・日銀、6年半ぶり円売り介入
○経済情勢全般にちゃんと触れる形で10個選びたいが、どの候補にも決め手がないとき、消去法的に得票集めそうな候補。ただ、円高の話題は昨年もノミネートされている(19位)。
(43) 9月 郵便不正事件の押収証拠改ざんで大阪地検特捜検事を逮捕、村木元局長の無罪確定
○昨年10位「菅家さん釈放」と同様の「社会派」候補。お茶の間受けという点では一歩劣るが、マスコミ内の選考に基づく類似企画では軒並み最上位ランク(時事通信2位、新聞乃新聞社2位)。
(44) 9月 イチロー選手が10年連続200安打、自らの大リーグ記録更新
○10年という節目感はあるものの、「9年連続」で昨年トップテンに入っており、同じ話題で?と考えると微妙。野球界でのノミネートが少ない点はプラス。
(46) 10月 小沢民主元代表、強制起訴へ
○他の民主党絡みの候補が「普天間→総理交代→選挙」と、政権迷走の時系列っぽい流れで括れるのに対し、これだけがちょっと切り離された話題の印象。
(49) 10月 ノーベル化学賞に根岸氏、鈴木氏
○01年以降、日本人ノーベル賞の話題はトップテン落ちしたことが一度もない強力テーマ。が、前回の授賞の話(08年)から間が短いせいか、インパクトがやや薄い気がするのが若干気がかり。
(57) 11月 ロッテが5年ぶり日本一
○「3大鉄板ジャンル」の一角・プロ野球からのノミネートが、今年はなんとこれ1つ。票割れがない分、大きく得票数を落とさなそう。ただし、前回日本一からの期間が短い点が心配材料。
(58) 11月 白鵬の連勝63でストップ
○大相撲で3つ目の候補。朝青龍や野球賭博の「不祥事系」と「大記録系」のどちらに得票が流れるか、なかなか読みづらい。「新記録」でない点がマイナス材料。
(59) 11月 裁判員裁判で初の死刑判決
○社会的な関心・話題性は高かったが「裁判員制度スタート」が昨年3位であり、重複感が投票に響くか。
5.2次選考
○Aランク3つは当確扱いなので、Bランクの18項目を7つに絞る必要がある。そこで見方を変え、この18項目を以下の5グループに分けて考えてみる。
≪グループ①-ジャンルが政治・政局関連≫
(20)「普天間」、 (22)鳩山退陣→菅総理、 (27)参院選、 (46)小沢強制起訴へ
≪グループ②-ジャンルが大相撲≫
(5) 朝青龍引退、 (26)野球賭博、 (58)白鵬63連勝
≪グループ③-①・②以外の入賞定番ジャンル≫
(49)ノーベル賞、 (57)ロッテ日本一
≪グループ④-昨年類似項目がノミネート≫
(42) 円売り介入、 (44)イチロー200安打、 (59)裁判員死刑判決
≪グループ⑤-その他≫
(1)日航破綻、 (18)宮崎口蹄疫、 (23)はやぶさ帰還、 (30)所在不明高齢者問題、 (43)郵便不正事件
○トップテンの定番「政治・政局関連」「大相撲」の両方で、取捨選択の難しい有力候補が並立していることが、今年の予想を大変に難しくしている。具体的な取捨選択は後回しに、ひとまず①・②両グループから1つずつは生き残ると仮定して、2枠を仮押さえしておく。
○グループ③の(49)(57)は、共にトップテンの常連テーマであり、同ジャンルで投票が割れそうな心配はない。2枠を使って両者生き残ると考える(と言い切って良いほど、過去に比べて決定力がない気もするのが、頭痛いところだが)。
○グループ④の(42)(44)(59)、グループ⑤の(45)は、投票を抑制する要因が明確に見えており、他にも有力候補がひしめく中、トップテン入りまでする勢いは乏しい気がする。脱落。
○そうなるとグループ⑤からの入賞枠は基本3枠。【傾向1】の「お茶の間レベルの分かりやすさ・サプライズ感」という尺度に照らすと、(23)>(1)>(18)=(30)>(43)というところか。かたや、政治・経済・司法といった社会全般からみた「大ごと感」という意味では((23)はそういう視点でみるニュースではないので除くとして)、(30)だけがやや減点といったところ。
トータルで見て(1)(18)(23)が生き残りで、(30)(43)が次点と考える。
○グループ①・②の取捨選択に戻る。
グループ①。(22)とそれ以外の3つが、内容的に少しずつカブっていて、とりわけ(20)との重複感が強い。一方(20)(22)(27)は時系列の流れとして一つに括れるのに対し、(46)だけ少し独立の話題という感じである。
つまり4項目のうち、1つで最も幅広い話題をカバーできる意味で有利なのは(22)であり、その(22)と重複感の強い(20)が、逆に一番不利ということではないか。
もちろん、政治から入賞が1つとは限らないので次点を考えると、これは選挙=入賞の定番という強みで(27)を挙げておきたい。
グループ②。「不祥事系」という意味で(5)(26)がカブり、「現役横綱の話題」という意味で(5)(58)にも若干重複感がある。(5)が一歩後退か。
問題の大きさや中継中止など「前代未聞」感では(26)だが、記憶の新しさや話題の継続性では(58)。迷った末だが、やはり「新記録」でない点(それもまさかの2日目で記録が途絶えるあっけなさ感)を踏まえ、(26)を残し、(58)を次点。
6.結論
○長々と書いてきたが、結局こういうことである。
【トップテン入り】
◎(1) 1月 日航が会社更生法の適用を申請、過去最大の破綻
◎(18) 4月 宮崎で「口蹄疫」発生
◎(22) 6月 鳩山首相退陣、後継に菅副総理・財務相
◎(23) 6月 小惑星探査機「はやぶさ」帰還
◎(24) 6月 サッカーW杯、日本は決勝T進出
◎(26) 7月 野球賭博関与で琴光喜ら解雇
◎(36) 9月 113年間で最も暑い夏、気象庁発表
◎(39) 9月 尖閣諸島沖で中国漁船が海保巡視船と衝突、海上保安官が撮影ビデオを流出
◎(49) 10月 ノーベル化学賞に根岸氏、鈴木氏
◎(57) 11月 ロッテが5年ぶり日本一
【次点レベル】
○(27) 7月 参院選で民主大敗
○(30) 7月 所在不明の「100歳以上」相次ぐ
○(43) 9月 郵便不正事件の押収証拠改ざんで大阪地検特捜検事を逮捕、村木元局長の無罪確定
○(58) 11月 白鵬の連勝63でストップ
【穴レベル】
△(5) 2月 朝青龍が現役引退、泥酔暴行問題で引責
△(20) 5月 日米共同文書で「普天間」移設先は名護、社民連立離脱
△(42) 9月 政府・日銀、6年半ぶり円売り介入
△(44) 9月 イチロー選手が10年連続200安打、自らの大リーグ記録更新
△(46) 10月 小沢民主元代表、強制起訴へ
△(59) 11月 裁判員裁判で初の死刑判決
○ただこれだけの結論を得るために、私は一体、何を延々書き連ねてきたのだろうか。長ければ長いほど、大ハズレのときがより恥ずかしいわけだが。全体の1位は順当中の順当として(39)尖閣問題を予想。あり得そうな「ハズレ」のパターンとして、大相撲内での票の分散リスクが高い(26)や、定番ではあるもののやや決め手に欠ける印象の残る(49)がトップテン落ちし、(30)(43)のいずれかが繰り上がるケースを挙げておきたい。
さて(まだやるのか)、次回は海外編を。
○昨年は、国内編が的中7個と何の感想も浮かばない(ある意味一番困る)結果に終わった一方、海外編は的中9個で図書カード獲得と、ひとまずの面目を保った当ブログであるが今年はどうか。ではまず国内編から。
1.企画主旨
○12月17日で既に投票が締め切られているが、あらかじめノミネートされた「日本編」「海外編」の主要ニュース(今年は日本編60個・海外編51個)から、各10項目を読者が選んで投票し、それぞれ得票率の多かった上位10個が「今年の10大ニュース」。
○決定したトップテンと投票内容が完全一致した応募者に賞金、次いで一致率が高かった所定の人数に記念品が贈呈される。よって、純粋に個人の主観で投票というより「みんなが重要と思ってそうな項目」に票が偏るという、まんま「美人投票理論」的な行動を取る応募者もいるのではと思う。というか、この予想記事自体がそれ。
2.日本編ノミネート項目
○では、どのような項目が具体的にノミネートされたのか。一挙紹介。
(1) 1月 日航が会社更生法の適用を申請、過去最大の破綻
(2) 1月 トヨタが大規模リコール
(3) 1月 鳥取連続不審死、元ホステスを強盗殺人容疑で逮捕
(4) 2月 埼玉連続不審死、交際相手の女を殺人容疑で逮捕
(5) 2月 朝青龍が現役引退、泥酔暴行問題で引責
(6) 2月 バンクーバー五輪、日本は銀3銅2
(7) 3月 北教組幹部ら逮捕、民主議員に違法献金
(8) 3月 核持ち込みなど「密約」認定
(9) 3月 シー・シェパード元船長を逮捕
(10) 3月 足利事件再審、菅家さんに無罪判決
(11) 3月 毒ギョーザ事件で元従業員を逮捕
(12) 3月 水俣病集団訴訟が和解
(13) 3月 「高さ日本一」スカイツリー
(14) 4月 若林元農相が「二重投票」で議員辞職
(15) 4月 野口さんと山崎さんが宇宙で対面
(16) 4月 井上ひさしさん死去
(17) 4月 明石歩道橋事故で初の強制起訴
(18) 4月 宮崎で「口蹄疫」発生
(19) 5月 「もんじゅ」が14年5か月ぶり運転再開
(20) 5月 日米共同文書で「普天間」移設先は名護、社民連立離脱
(21) 6月 「子ども手当」支給開始
(22) 6月 鳩山首相退陣、後継に菅副総理・財務相
(23) 6月 小惑星探査機「はやぶさ」帰還
(24) 6月 サッカーW杯、日本は決勝T進出
(25) 6月 高速道路の無料化実験スタート
(26) 7月 野球賭博関与で琴光喜ら解雇
(27) 7月 参院選で民主大敗
(28) 7月 改正臓器移植法が全面施行
(29) 7月 金賢姫元工作員が来日
(30) 7月 所在不明の「100歳以上」相次ぐ
(31) 7月 大阪で2児放置し死亡させた母親逮捕、児童虐待事件相次ぐ
(32) 8月 広島・平和記念式典に米大使ら初出席
(33) 8月 瀬戸内海で海保ヘリ墜落、5人死亡
(34) 8月 高校野球、沖縄・興南が春夏連覇
(35) 8月 宮里藍選手が米ツアー今季5勝目
(36) 9月 113年間で最も暑い夏、気象庁発表
(37) 9月 初代若乃花・花田勝治さん死去
(38) 9月 鈴木宗男衆院議員の実刑確定、失職
(39) 9月 尖閣諸島沖で中国漁船が海保巡視船と衝突、海上保安官が撮影ビデオを流出
(40) 9月 日本振興銀が破綻、初のペイオフ発動
(41) 9月 民主代表選で菅首相再選
(42) 9月 政府・日銀、6年半ぶり円売り介入
(43) 9月 郵便不正事件の押収証拠改ざんで大阪地検特捜検事を逮捕、村木元局長の無罪確定
(44) 9月 イチロー選手が10年連続200安打、自らの大リーグ記録更新
(45) 10月 たばこ増税で大幅値上げ
(46) 10月 小沢民主元代表、強制起訴へ
(47) 10月 名古屋市議会のリコール署名簿提出
(48) 10月 日銀「ゼロ金利」復活
(49) 10月 ノーベル化学賞に根岸氏、鈴木氏
(50) 10月 内村選手が世界体操で日本人初の2連覇
(51) 10月 二十三世本因坊・坂田栄男さん死去
(52) 10月 正倉院「幻の宝剣」、1250年ぶり確認
(53) 10月 警視庁テロ資料がネット上に流出
(54) 10月 COP10「名古屋議定書」採択
(55) 10月 羽田空港拡張、32年ぶり国際定期便
(56) 11月 露大統領が北方領土訪問
(57) 11月 ロッテが5年ぶり日本一
(58) 11月 白鵬の連勝63でストップ
(59) 11月 裁判員裁判で初の死刑判決
(60) 11月 柳田法相辞任、「国会軽視」発言で
3.予想上の注意
○予想する上で、特におさえておきたい3つの傾向性がある。
【傾向1】ニュース自体の重大性はもとより「お茶の間レベルの分かりやすさ・サプライズ感」が重視される。
○この企画は、ジャーナリストやメディア企業が独自に選定した類似企画と違い、不特定多数の人間による得票率で選ぶ企画である。そのため、
①ワイドショー的・三面記事的な色彩が強い、またそういう切り口で捉えやすい話題の方が総じて有利である(例:08年1位「中国製ギョーザで中毒、中国産食品のトラブル相次ぐ」)。政治や政局の話題は相応にランクされるが、お茶の間的にややこしい話題はあまり上位に来ない。
②オリンピックの金メダルとかノーベル賞といった「国の栄誉」にわかりやすく絡む話題は、当然のように有利。
③天災や事故の場合、もっとも単純な比較の尺度である「被害者数の大小」が重要。また同じような被害規模なら、一番「事件感」が強い大地震が有利。
④項目や解説欄に「史上最大」「初の」「歴史的な」「前代未聞」といった注釈が付いていると、投票者の判断を助ける意味で多少有利。
【傾向2】ジャンルやテーマが重複していたり、類似性が強い話題が複数ノミネートしていると、投票行動が割れてしまい、結果的にそれぞれの得票率が伸び悩むことがある。
○「10個まで」という枠が予め決められている中、誰でもできる限り広いジャンルやテーマからバランスよく10個を選ぼうとする(はずである)。ジャンルとは例えば「野球」でも良いし「民主党政権」でも良い。
○同一ジャンル・テーマ内でカブっている候補が多いほど、またカブリの程度が強いほど、票が分散するリスクを持っている。個々のニュースだけで考えずに、カブる要素を持った別の候補がノミネートしていないか、検証する必要がある。
○「10個まで」という枠が予め決められている裏返しとして、ジャンルやテーマがカブッた候補が複数あり、その中の1つを選ぶことで、他のいくつかの候補のテーマまでを包含できそうなものがあった場合、その候補が重宝がられる(票を集める)可能性がある。
【傾向3】同企画独自の特徴として、例年「皇室」「大相撲」「プロ野球」の候補が非常に強い。
○「3大鉄板ジャンル」と言っても良い。ただし「プロ野球」の場合、特に「巨人」関連の候補があるか否かが、かなり全体の順位に影響する。
○例えば、プロ野球最大のイベントと言うと日本シリーズであり、必然的に「○○球団が日本一」という話題はトップテンの常連である(05年8位「ロッテ日本一」、06年8位「日本ハム日本一」等)。
ところが、こと巨人がリーグ優勝しながら別の球団がシリーズ制覇した年に限っては、「巨人のリーグ優勝」自体が別にノミネートされるため、【傾向2】の通り投票が割れ、この傾向が当てはまらない(07年「中日日本一」、08年「西武日本一」)。
○もちろんどこが優勝とか、そんなことが吹っ飛ぶほど大きな話題があった年は、そちらが上位に来ることは言うまでもない(04年3位「プロ野球界大揺れ、50年ぶり新球団」)。それが巨人絡みであった場合は、さらにいわずもがな(01年8位「長嶋監督勇退」)。
4.1次選考
○全60個を、テーマの有利不利や、報道された量感(個人的印象だが)から、1/3の20個に絞ってみた。「どんなラインナップになるにせよ、これ以外からトップテン入りする事態は考えにくい」という一次絞り込みである。その中で特に、トップテン上位に入るかは別として、最低でもトップテン落ちは考えにくいという「Aランク」を以下の3つとした。
【Aランク―3個】
(24) 6月 サッカーW杯、日本は決勝T進出
(36) 9月 113年間で最も暑い夏、気象庁発表
(39) 9月 尖閣諸島沖で中国漁船が海保巡視船と衝突、海上保安官が撮影ビデオを流出
○その他の有力候補は以下の17個。それぞれ軽い寸評を付す。
【Bランク―17個】
(1) 1月 日航が会社更生法の適用を申請、過去最大の破綻
○会社知名度・生活への影響とインパクト大。事業会社の倒産として「過去最大」も入賞にはプラス。懸念材料は、昨年も日航経営危機の話題がノミネートしていたこと。
(5) 2月 朝青龍が現役引退、泥酔暴行問題で引責
○「3大鉄板ジャンル」の大相撲。現役の大横綱が不祥事で引退と、例年なら問題なくトップテンクラスだが、相撲界からの重複候補が多く、票の分散が心配。
(18) 4月 宮崎で「口蹄疫」発生
○一地方の畜産業が丸ごと壊滅していく様子を、日々リアルタイムで見せられる衝撃は強かった。
(20) 5月 日米共同文書で「普天間」移設先は名護、社民連立離脱
○「民主党政権」から多数ノミネートの1つ。(22)とは原因-結果のような関係にあり、重複感が強い。
(22) 6月 鳩山首相退陣、後継に菅副総理・財務相
○これも「民主党政権」という大テーマの一つ。「普天間」「政治とカネ」「選挙」などいくつかの小テーマに全て絡む。参考までに、福田退陣は08年2位、安倍退陣は07年1位。
(23) 6月 小惑星探査機「はやぶさ」帰還
○テーマがカブる候補もなく、お茶の間受けする要素も強かったバランスの良い候補。
(26) 7月 野球賭博関与で琴光喜ら解雇
○大相撲関係2つ目。票の分散リスクが心配だが、相撲界全体への影響を俯瞰してみるならこれが一番か。NHKの中継が「史上初めて」中止というのもプラスポイント。
(27) 7月 参院選で民主大敗
これも「民主党政権」関連。国政選挙の話題は当然毎回強く、自民惨敗の3年前参院選は07年4位。今回の場合「大敗」だが「地滑り的」という程のインパクトはないのが、やや微妙なところ。
(30) 7月 所在不明の「100歳以上」相次ぐ
○「消えた高齢者」問題。事件そのもののサプライズ感は強かったが、それを今年の10大ニュースに入れるかというと、もう一つパンチが弱い気も。
(42) 9月 政府・日銀、6年半ぶり円売り介入
○経済情勢全般にちゃんと触れる形で10個選びたいが、どの候補にも決め手がないとき、消去法的に得票集めそうな候補。ただ、円高の話題は昨年もノミネートされている(19位)。
(43) 9月 郵便不正事件の押収証拠改ざんで大阪地検特捜検事を逮捕、村木元局長の無罪確定
○昨年10位「菅家さん釈放」と同様の「社会派」候補。お茶の間受けという点では一歩劣るが、マスコミ内の選考に基づく類似企画では軒並み最上位ランク(時事通信2位、新聞乃新聞社2位)。
(44) 9月 イチロー選手が10年連続200安打、自らの大リーグ記録更新
○10年という節目感はあるものの、「9年連続」で昨年トップテンに入っており、同じ話題で?と考えると微妙。野球界でのノミネートが少ない点はプラス。
(46) 10月 小沢民主元代表、強制起訴へ
○他の民主党絡みの候補が「普天間→総理交代→選挙」と、政権迷走の時系列っぽい流れで括れるのに対し、これだけがちょっと切り離された話題の印象。
(49) 10月 ノーベル化学賞に根岸氏、鈴木氏
○01年以降、日本人ノーベル賞の話題はトップテン落ちしたことが一度もない強力テーマ。が、前回の授賞の話(08年)から間が短いせいか、インパクトがやや薄い気がするのが若干気がかり。
(57) 11月 ロッテが5年ぶり日本一
○「3大鉄板ジャンル」の一角・プロ野球からのノミネートが、今年はなんとこれ1つ。票割れがない分、大きく得票数を落とさなそう。ただし、前回日本一からの期間が短い点が心配材料。
(58) 11月 白鵬の連勝63でストップ
○大相撲で3つ目の候補。朝青龍や野球賭博の「不祥事系」と「大記録系」のどちらに得票が流れるか、なかなか読みづらい。「新記録」でない点がマイナス材料。
(59) 11月 裁判員裁判で初の死刑判決
○社会的な関心・話題性は高かったが「裁判員制度スタート」が昨年3位であり、重複感が投票に響くか。
5.2次選考
○Aランク3つは当確扱いなので、Bランクの18項目を7つに絞る必要がある。そこで見方を変え、この18項目を以下の5グループに分けて考えてみる。
≪グループ①-ジャンルが政治・政局関連≫
(20)「普天間」、 (22)鳩山退陣→菅総理、 (27)参院選、 (46)小沢強制起訴へ
≪グループ②-ジャンルが大相撲≫
(5) 朝青龍引退、 (26)野球賭博、 (58)白鵬63連勝
≪グループ③-①・②以外の入賞定番ジャンル≫
(49)ノーベル賞、 (57)ロッテ日本一
≪グループ④-昨年類似項目がノミネート≫
(42) 円売り介入、 (44)イチロー200安打、 (59)裁判員死刑判決
≪グループ⑤-その他≫
(1)日航破綻、 (18)宮崎口蹄疫、 (23)はやぶさ帰還、 (30)所在不明高齢者問題、 (43)郵便不正事件
○トップテンの定番「政治・政局関連」「大相撲」の両方で、取捨選択の難しい有力候補が並立していることが、今年の予想を大変に難しくしている。具体的な取捨選択は後回しに、ひとまず①・②両グループから1つずつは生き残ると仮定して、2枠を仮押さえしておく。
○グループ③の(49)(57)は、共にトップテンの常連テーマであり、同ジャンルで投票が割れそうな心配はない。2枠を使って両者生き残ると考える(と言い切って良いほど、過去に比べて決定力がない気もするのが、頭痛いところだが)。
○グループ④の(42)(44)(59)、グループ⑤の(45)は、投票を抑制する要因が明確に見えており、他にも有力候補がひしめく中、トップテン入りまでする勢いは乏しい気がする。脱落。
○そうなるとグループ⑤からの入賞枠は基本3枠。【傾向1】の「お茶の間レベルの分かりやすさ・サプライズ感」という尺度に照らすと、(23)>(1)>(18)=(30)>(43)というところか。かたや、政治・経済・司法といった社会全般からみた「大ごと感」という意味では((23)はそういう視点でみるニュースではないので除くとして)、(30)だけがやや減点といったところ。
トータルで見て(1)(18)(23)が生き残りで、(30)(43)が次点と考える。
○グループ①・②の取捨選択に戻る。
グループ①。(22)とそれ以外の3つが、内容的に少しずつカブっていて、とりわけ(20)との重複感が強い。一方(20)(22)(27)は時系列の流れとして一つに括れるのに対し、(46)だけ少し独立の話題という感じである。
つまり4項目のうち、1つで最も幅広い話題をカバーできる意味で有利なのは(22)であり、その(22)と重複感の強い(20)が、逆に一番不利ということではないか。
もちろん、政治から入賞が1つとは限らないので次点を考えると、これは選挙=入賞の定番という強みで(27)を挙げておきたい。
グループ②。「不祥事系」という意味で(5)(26)がカブり、「現役横綱の話題」という意味で(5)(58)にも若干重複感がある。(5)が一歩後退か。
問題の大きさや中継中止など「前代未聞」感では(26)だが、記憶の新しさや話題の継続性では(58)。迷った末だが、やはり「新記録」でない点(それもまさかの2日目で記録が途絶えるあっけなさ感)を踏まえ、(26)を残し、(58)を次点。
6.結論
○長々と書いてきたが、結局こういうことである。
【トップテン入り】
◎(1) 1月 日航が会社更生法の適用を申請、過去最大の破綻
◎(18) 4月 宮崎で「口蹄疫」発生
◎(22) 6月 鳩山首相退陣、後継に菅副総理・財務相
◎(23) 6月 小惑星探査機「はやぶさ」帰還
◎(24) 6月 サッカーW杯、日本は決勝T進出
◎(26) 7月 野球賭博関与で琴光喜ら解雇
◎(36) 9月 113年間で最も暑い夏、気象庁発表
◎(39) 9月 尖閣諸島沖で中国漁船が海保巡視船と衝突、海上保安官が撮影ビデオを流出
◎(49) 10月 ノーベル化学賞に根岸氏、鈴木氏
◎(57) 11月 ロッテが5年ぶり日本一
【次点レベル】
○(27) 7月 参院選で民主大敗
○(30) 7月 所在不明の「100歳以上」相次ぐ
○(43) 9月 郵便不正事件の押収証拠改ざんで大阪地検特捜検事を逮捕、村木元局長の無罪確定
○(58) 11月 白鵬の連勝63でストップ
【穴レベル】
△(5) 2月 朝青龍が現役引退、泥酔暴行問題で引責
△(20) 5月 日米共同文書で「普天間」移設先は名護、社民連立離脱
△(42) 9月 政府・日銀、6年半ぶり円売り介入
△(44) 9月 イチロー選手が10年連続200安打、自らの大リーグ記録更新
△(46) 10月 小沢民主元代表、強制起訴へ
△(59) 11月 裁判員裁判で初の死刑判決
○ただこれだけの結論を得るために、私は一体、何を延々書き連ねてきたのだろうか。長ければ長いほど、大ハズレのときがより恥ずかしいわけだが。全体の1位は順当中の順当として(39)尖閣問題を予想。あり得そうな「ハズレ」のパターンとして、大相撲内での票の分散リスクが高い(26)や、定番ではあるもののやや決め手に欠ける印象の残る(49)がトップテン落ちし、(30)(43)のいずれかが繰り上がるケースを挙げておきたい。
さて(まだやるのか)、次回は海外編を。