かなぶち鍼灸調体堂の「先ずは只管打歩」なほぼ毎日譚

基盤を追求すると、ついに「歩く」迄遡ってきました。

アキレス腱付着部炎の対策

2014年06月16日 | ケア/故障
ちょうど一週間、更新を怠っていました。
先週に齢四十八歳となったので、心機一転、弊Blogもレベルアップを目指す所存です。

ということで、久し振りに"Competitor Running"誌の記事を日本語化しました。
踵の上部に痛みを覚えるという方、参考にして頂ければ幸いです。

アキレス腱付着部炎への対処方法
by Thomas C. Michaud, D.C.


 アキレス腱で故障が発生する部位は複数存在するが、ランニング関連で最も悪名高いのは、アキレス腱が踵骨に付着する部位で発生する「アキレス腱付着部炎」である。アキレス腱付着部炎は治療が困難なことで有名である。

 アキレス腱の故障(アキレス腱付着部炎を除く)に対する一般的な運動療法の治療成績は80~90%であるが、アキレス腱付着部炎については32%に過ぎないという研究結果も報告されている。アキレス腱付着部炎が発生しやすいのは、内足弓が高い/筋肉の柔軟性が乏しいランナーである。なお、ハグランド変形(骨隆起/軟部組織の肥厚。ここでは、アキレス腱付着部に慢性的に負荷がかかることにより、アキレス腱と踵骨の間にある滑液包で炎症が生じる事を指す)を有する人では発生率がより高くなる。

 最近まで研究者達の間では、アキレス腱付着部炎の進行原因の物理的理由は極めて単純であると考えられてきた。つまり、ランニング量が増えることで、踵骨との付着部においてアキレス腱の後部に過大な張力が加わり、その結果部分的に断裂することである、と。この考えは理論的には正しいように思われたが、最近の研究では逆であることが立証された。つまり、アキレス腱にかかる張力が最も低い、アキレス腱の前方部分において部分的な断裂が発生している、というのである。

 アキレス腱の様々な部位に張力計を取り付け、足関節をあらゆる方向へ動かした際にアキレス腱にかかる張力を測定した実験結果(ノースカロライナ大学で実施)でも、アキレス腱にかかる張力は、アキレス腱前部(=アキレス腱付着部炎が好発する部位)よりアキレス腱後部の方が遥かに大きかった。この結果から実験担当者らは、アキレス腱前部にかかる負荷(≒張力)が少ないことにより、アキレス腱前部が虚弱化しており、その結果として故障が発生しやすいのではないかと推測している。

 以上の事実を鑑みると、アキレス腱付着部炎の治療においては、アキレス腱前部の筋力強化が不可欠となる。具体的な方法は以下に示す。

【アキレス腱付着部炎対策としての筋力トレーニング方法】
 水平面に立ち、片手に負荷(ダンベルなど)を持ち、反対側の手は壁に付ける。この状態から、両足の踵を出来るだけ高く挙上し、続いて片側の足だけをゆっくりと元に戻す。これを両足について毎日、15反復/セット×3セット行う。負荷は、足が充分に疲労する程度とするのが望ましい。


 なお、2年以上アキレス腱付着部炎を患っている人27名を対象とした試験では、上記のトレーニングを3ヶ月間行うことで、約70%(≒19名)で症状が改善した。

 アキレス腱付着部炎が発生した場合に考慮すべきは、シューズのヒールカウンター(踵を覆う部分)が当該部位に当たらないようにする、ということである。ここ数年の流行としてヒールカウンターの傾斜角が急になり、その結果ヒールカウンターがアキレス腱に直接当たるようになった。そしてアキレス腱が踵骨に付着する部位が常に圧迫され、慢性的な炎症が発生し易くなった(ハグランド変形が発生している人では特に)。対策としては、ヒールカウンターの一部を切り取るのが有効である。なお、足関節の可動域を大きく制限するシューズは使用しないのが賢明である。なぜなら、そのようなシューズはアッパーが固く作られているが、その為にアキレス腱にかかる負荷が大きくなるからである。

 アキレス腱付着部炎の治療では、一般的な抗炎症剤(インドメタシンやセレコクシブ等)の使用は避けるべきである。これらは痛みの緩和には有効だが、最近の動物実験において治癒の進行を有意に遅らせる作用のあることが示された。治癒の進行が遅れると、アキレス腱付着部炎が慢性化し易い。ということで、急性期に投薬で炎症を一時的に抑えるよりかは、筋力トレーニングを通じてアキレス腱を強化することで問題の解決を図る方が望ましい。
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5 コメント

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Unknown (眠り猫)
2017-04-07 00:34:32
ブログを読ませていただきました。
そしてどうやら私はアキレス腱付着部炎のようです。
毎日10キロほど走るのを日課としていましたが、2週間ほど前から踵の後ろのあたりが痛み、とうとう歩くのにも支障が出るほどでランニングなどできる状況で亡くなってしまいました。思い当たるのは、シューズをトライスロン用のものに変えたこと、ジムで斜度を高めて高速で走る練習を行ったこと、体が昔から硬かったことでストレッチはずっとやっていなかったのですが、ふくらはぎが痛むようになってきたのでここ最近アキレス腱などのストレッチを長めにやるようになったこと。この3点ですが、どれも原因になりそうなことでした。しかしこのアキレス腱付着部炎とは面倒なことななってしまったなと言うのが正直なところです。アキレス腱付着部炎のための筋力トレーニングとは片足を爪先立ちしながら片足の踵を床に下ろすと言う反復動作でよろしいでしょうか。それだけ確認させていただきたくコメントさせていただきました。よろしくお願いします。
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補強運動以前に (弊堂代表)
2017-04-07 19:55:00
①痛みを覚えておられる間は、とにかく静養あるのみです。
②アキレス腱の筋力強化という目的では、カーフレイズで良いと思います。
③発症された理由は、
(a)シューズを変えた→筋肉への負荷の掛かり方が変わった
(b)トレッドミルで斜度を高める&高速で走る→”蹴る”動作≒終動負荷的な動作でアキレス腱に負荷が掛かった
ことかと想像します。(b)については、補強運動以前にランニングフォームの見直しが必要かと思います。言葉で表現するのは難しいのですが、「脚を前に運ぶ」のを意識して走られるのも一考かと思います。
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Unknown (眠り猫)
2017-04-12 13:21:26
ご丁寧なご指導ありがとうございます。
ぜひ今後の練習再開に向けて参考にさせていただきます。特に脚を前に運ぶというのを意識して練習したいと思います。とりあえず今は痛みが取れるまで悔しいですが我慢して安静にしています。色々と教えていただき本当にありがとうございました。
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ついでですが (弊堂代表)
2017-04-17 16:57:25
下肢(股関節〜足)全体のトレーニングとしては、四股踏みがベストだと私は信じています。お試しあれ。
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Unknown (眠り猫)
2017-04-20 22:41:53
ありがとうございます。
四股踏みもぜひ取り入れたいと思います。なってみて厄介な怪我だとよくわかったので今後の予防のためにもカーフレイズと四股踏みをしっかりとやっていきたいと思います。アドバイスとても感謝いたします。
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