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赤表紙本「指輪物語」と、その他愛する本たちの読書記録とあれこれ

中つ国と指輪・3

2006年03月03日 | 指輪物語
第三期に中つ国に居た人々の中で、指輪を破壊しうる手(意思)を持つことができたのは、ガンダルフ(とマイアたち)とトム・ボンバディル、エルロンド、ガラドリエルくらいだったのではないか。
色々なものからかけ離れた存在であるトム・ボンバディルには、指輪との接点が全くなかったし、
ガンダルフやガラドリエルは、その意思と力の強さゆえに、自らもまた善なる悪になりうることを自覚していた。

破壊しうる手(意志)をもつことと、実際に破壊することとにははるかな違いがある。
破壊する意志を持っているということは、同時に強い力を持っているということにもなる。善を希求する強い意思と力は同時に、諸刃の剣となりかねない。
ガンダルフやガラドリエルの偉大なところは、自らの力を正確に認識し、その力の影響を見いだせるところにあると思う(もちろん、それだけではないが・・・)。

この辺りが、指輪の巧妙なところだと思う。
指輪との接点の全く無いトム・ボンバディル。そもそも、指輪に対する興味も欲望ももたないため、破壊のための一歩を踏み出すことが無い。
破壊しうる力を持つものは、同時にその力を認識しているがために、自らを指輪から遠ざける(遠ざけるという意志を持ち、それを実行するところがまた偉大)。
・・・どこか、出口の無い環状迷路に迷い込んだような気がしてくる。


フロドはあくまでも指輪所持者(Ring bearer)だ。
bearを辞書で引いてみると・・・

1:運ぶ・持って行く・伝える
2:(重さを)ささえる
3:(費用を)持つ・(義務・責任などを)負う・分担する
4:(特にcan notに伴って)(苦痛に)耐える
5:受けるに適する・耐える・許す・できる
6:身につける・帯びる
7:心に持つ・(うらみ・悪意を)抱く
8:(関係・名声・称号などを)持つ
9:(利子を)生む・(花を)つける・(実を)結ぶ
10:押しやる
11:(権力・職権を)ふるう・行使する

また、類義語に
bear=苦痛・困難な闇・不愉快・不便などを「我慢する・辛抱する」

興味深い。

運命がフロドに任じたことは、運び、重さをささえ、義務と責任を負い、耐え、身だけでなく心にも持ち、
権力をふるい、押しやり、暗い思いを抱き、実を結び、困難な闇を辛抱することだったのか。

上に書いたことは、でてきた単語の意味を並べただけで、実際には文法上の制約がある使い方もあると思う。また、トールキンがどの部分をbearに込めたのかもわからない。そして、指輪を運ぶ=bearすることと、指輪所持者である=Ring bearerであることとにも違いがあると思う。

ただ、この単語の持つものを、フロドはほとんど全て経験したのだと思った。
(費用を持つことと、利子を生むこと以外は。)


私はフロドが好きで、フロドに関しては冷静に見ることができない。
でも、フロドだけが苦しんだのだとも、フロドが一番苦しんだのだとも思わない。
少なくとも、フロドは死ななかった。生きて帰った(後の苦しみはさておき)。
指輪戦争で命を落としたたくさんの兵達を思えば、幸運だった。

ただ、bearの全てを、全身全霊をかけて体験したフロドに、胸が痛む。

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2 コメント

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実は (ラッコ庵)
2006-03-04 18:59:52
トム・ボンバディルとゴールドベリのエピソードは、すごく好きです。

映画ではカットされてて残念でしたが、本筋とはあまり関係ないから、一番初めにカットされそうな部分ではあります。



初めてPJ監督を見たとき、「トム・ボンバディルを演じられそう」と思ったものですが、このごろやせちゃいましたね。
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ラッコ庵さん♪♪♪ (kail)
2006-03-06 12:19:52
文章で伝えられるものと映像で伝えられるものは違うので、トム・ボンバディルを映画からカットしたのは良かったと思います(残念だけど)。

トムと指輪のエピソード、語り、歌など、文章だから伝わってくるものがあると思うので。

私は、指輪物語は神話と伝説のはざまと感じているのですが、トムのエピソードなどは神話より(神の話ではないけれど)に思えます。

そして、こうした部分が指輪や中つ国の不思議さを増す一助になっていると思います。



ストレート(?)だった映画と、長々しい(?)原作と、両方楽しめるのはラッキーかも(^^)。



>PJ監督

やせましたね~~@@

別人かと思っちゃいましただよ~~
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