隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

生への渇望~『市子』

2024年05月05日 19時52分39秒 | 映画レビュー

2024.05.05(日)



『市子』
 監督:戸田彬弘/脚本:上村奈帆・戸田彬弘/原作:戸田彬弘
 出演:杉咲花/若葉竜也/森永悠希/渡辺大知/宇野祥平/中村ゆり/中田青渚/石川瑠華/倉悠貴
  https://happinet-phantom.com/ichiko-movie/index.html
映画『市子』予告編|主演:杉咲花  12.8(金)公開

 戸籍をもたない子どもたち、ネグレクト、ヤングケアラー・・・。
 深刻な社会問題を提示しながら、それを軽く超える圧倒的な力で、「人間」を、若い女性を、必死に生きることの尊さと危うさを、愛しても届かない切なさを、画面全体で静かに語る。
 心に残るシーンはしばしわが身を突き通して動かなくさせるほどの迫力だったのに、暑苦しい言葉もメッセージもなく、ただただ主人公の表情に発する声に反応するこちらの心。それに尽きる。
 出演者は誰もすばらしい。
 そして杉咲花の全身から伝わる悲しさに、市子がどんな罪を犯してでも自分を生きていく日々を祈るような、複雑な思いを抱く。あれほどの生への渇望を抱いたことがあるだろうかと自分を振り返る。
 若葉竜也扮する長谷川の目の中には、市子の未来がどんな形で映っているのだろう。それを想像して絶望的な気持ちになるのは、きっとこちらの勝手な解釈なんだろう。


 唐十郎さんが亡くなった。

 生意気で自意識過剰だった恥ずかしい日々に、彼と寺山修司氏が見せてくれた「怖い世界」が少しだけ蘇る。
 合掌。


 住宅街の坂道から、道志の山の向こうに少しだけ白い富士山のピークが見えた。

 白くなければ、あれが富士山だなんて気づかないだろう、と、この季節にここを歩くたびに相方と笑う。


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