サステナビリティ基準委員会がサステナビリティ開示基準の公開草案を公表
サステナビリティ基準委員会は、以下のサステナビリティ開示基準の公開草案を、2024年3月29日に公表しました。
・サステナビリティ開示ユニバーサル基準公開草案「サステナビリティ開示基準の適用(案)」
・サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第1号「一般開示基準(案)」
・サステナビリティ開示テーマ別基準公開草案第2号「気候関連開示基準(案)」
「当委員会は、当委員会が高品質で国際的に整合性のあるサステナビリティ開示基準を開発するにあたり、グローバル・ベースラインとされるIFRSサステナビリティ開示基準と整合性のあるものとすることが市場関係者にとって有用であると考えられたことから、我が国のサステナビリティ開示基準においても、IFRS S1号に相当する基準及びIFRS S2号に相当する基準の開発に取り組むこととし、検討を重ねてまいりました。」(プレスリリースより)
そもそも、適用対象企業は...
「本公開草案は、本公開草案の適用対象企業を定めていないが、金融庁から「SSBJ 基準の適用対象については、グローバル投資家との建設的な対話を中心に据えた企業(プライム上場企業ないしはその一部)から始めることが考えられる」との方向性が示されたこと(注)を踏まえ、プライム上場企業が適用することを想定し、本公開草案の開発を行った。
(注) 2024 年 2 月 19 日金融庁第 52 回金融審議会総会・資料1 説明資料(サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する検討)p.1 参照」(本公開草案の概要より)
基準の構成。
(本公開草案の概要より)
開発にあたっての基本的な方針。
「原則として国際的な基準の定めを取り入れるものの、すべての定めを無条件で取り入れることはしないこととした。」(同上)
「ガイダンスの情報源」における「SASB スタンダード」及び「産業別ガイダンス」の取扱い。
「サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別、並びに、識別したリスク及び機会に関する重要性がある情報の識別
- 「SASB スタンダード」(2023 年 12 月最終改正)を「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源とする。IFRS 財団により「SASB スタンダード」が改正された場合、IFRS 財団が公表する「SASB スタンダード」(2023 年 12 月最終改正)に代えて、改正後の「SASB スタンダード」を参照し、その適用可能性を考慮することができる(適用基準案第 45 項及び第 46 項、第 54 項及び第 55 項並びに BC72 項から BC74 項)。
気候関連のリスク及び機会の識別、並びに、開示する産業別の指標の決定
- 「産業別ガイダンス」(2023 年 6 月公表)を「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源とする。「SASB スタンダード」(2023 年 12 月最終改正)についても、「適用基準」の適用を通じて「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源とする(気候基準案第 17 項及び第 89 項並びに BC41 項から BC46項)。」
スコープ 1、スコープ 2 及びスコープ 3 の温室効果ガス排出量の合計値 。
「気候基準案は、スコープ 1 温室効果ガス排出、スコープ 2 温室効果ガス排出及びスコープ 3 温室効果ガス排出の絶対総量の合計値を開示しなければならないとすることを提案している(気候基準案第 49 項並びに BC100 項及び BC101 項)。」(同上)
スコープ 2 温室効果ガス排出におけるロケーション基準とマーケット基準 。
「気候基準案は、スコープ 2 温室効果ガス排出について、ロケーション基準によるスコープ 2 温室効果ガス排出量を開示しなければならないとしたうえで、当該開示に加え、少なくとも次のいずれかの事項を開示しなければならないとすることを提案している(気候基準案第 56 項及び第 57 項並びに BC127 項から BC132 項)。
(1) 契約証書を企業が有している場合、スコープ 2 温室効果ガス排出を理解するうえで必要な、当該契約証書に関する情報
(2) マーケット基準によるスコープ 2 温室効果ガス排出量(この場合においても、温室効果ガス排出の測定方法に関する開示(気候基準案第 65 項)を行わなければならない。)」(同上)
産業横断的指標等(気候関連のリスク及び機会) 。
「気候基準案は、気候関連のリスク及び機会に関する産業横断的指標等に関連して、次の事項を開示しなければならないとすることを提案している(気候基準案第 46 項(2)から(4)、第 80 項から第 82 項及び BC170 項から BC172 項)。
気候関連の移行リスク
- 気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の金額及びパーセンテージ、又は、気候関連の移行リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいずれか
気候関連の物理的リスク
- 気候関連の物理的リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の金額及びパーセンテージ、又は、気候関連の物理的リスクに対して脆弱な資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいずれか
気候関連の機会
- 気候関連の機会と整合した資産又は事業活動の金額及びパーセンテージ、又は、気候関連の機会と整合した資産又は事業活動の規模に関する情報の少なくともいずれか」(同上)
産業横断的指標等(資本投下)。
「気候基準案は、資本投下に関する産業横断的指標等に関連して、次の事項を開示しなければならないとすることを提案している(気候基準案第 46 項(5)、第 83 項並びにBC177 項及び BC178 項)。
- 気候関連のリスク及び機会に投下された資本的支出、ファイナンス又は投資の金額(IFRS S2 号と同様の定め)」(同上)
産業横断的指標等(内部炭素価格)。
「気候基準案は、内部炭素価格に関する産業横断的指標等に関連して、IFRS S2 号と同様に、次の事項に関する情報を開示しなければならないとすることを提案している(気候基準案第 46 項(6)、第 84 項並びに BC182 項及び BC183 項)。
(1) 内部炭素価格を意思決定に用いている場合、次の事項に関する情報
① 内部炭素価格の適用方法(例えば、投資判断、移転価格及びシナリオ分析)
② 温室効果ガス排出に係るコストの評価に用いている内部炭素価格(温室効果ガス排出のメートル・トン当たりの価格で表す。)
(2) 内部炭素価格を意思決定に用いていない場合、その旨」(同上)
経過措置。
「本公開草案では、サステナビリティ開示基準に従い開示を行うことを要求又は容認する法令に従い開示を行う場合と、任意でサステナビリティ開示基準に従った開示を行う場合について、それぞれ経過措置を定めることを提案している(適用基準案第 96 項から第 100 項、一般基準案第 42 項から第 44 項及び気候基準案第 103 項から第 107 項)。」(同上)
上記ページの末尾に、「サステナビリティ基準委員会研究員による解説」の動画と資料が掲載されています。動画は3本あり、全部で40分強の長さです。
日本の基準の解説書はまだ出ていませんが、IFRS基準の解説は大手監査法人から何冊か出ています。