航空・鉄道業界で繰延税金資産が急増しているという記事。
「航空・鉄道業界で実質上の税金の前払いに当たる「繰り延べ税金資産」が急増している。JR東日本やANAホールディングス(HD)など主要5社では6月末に2020年3月末比75%増の約1兆3200億円と最大になった。同資産は将来、想定した収益を確保できなければ取り崩す必要があり利益を押し下げる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が長引くようなら、中長期での取り崩しリスクも増しかねない。」
具体的に取り上げているのは、6月末の金額が大きい順に、JR東日本、ANAHD、JAL、JR東海、JR西日本です。
発生原因別では、繰越欠損金が多いそうです。
回収可能性について、ANAとJALがコメントしていますが、どちらも、短期的な業績数字で、すぐに取り崩されることはないということを述べています。
記事では、JR東日本とJALのKAMの記載にふれています。
しかし、これは会社が記載している「重要な会計上の見積り」の注記を見た方がより直接的でしょう(注記に含めていれば、ですが)。
JR東日本の例(2021年3月期有報より)
(画像クリックで拡大)
同じくJR東日本の原因別の注記も見てみました。
繰越欠損金がかなりの部分を占めるという不健全な状態です。ただし、評価性引当額も、ある程度増やしています。
こういう大企業を念頭に、金融庁などが、監査人に対し、過度に悲観的な予測をするなと連呼しているのでしょう。
かつて金融機関の繰延税金資産が社会的問題となったように、数年後(早ければ当期末)、多くの会社で、繰延税金資産回収可能性が議論の的になるおそれはありそうです。そのころになれば、バラ色の計画が実現可能かどうか、見極めがつくでしょう。
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事