会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ユニゾ 迷走の末の会社解体【検証】なぜこうなったのか?(NHKより)

ユニゾ 迷走の末の会社解体【検証】なぜこうなったのか?

従業員による買収(EBO)で上場廃止になり、その後数年で破綻してしまったユニゾホールディングスを取り上げた記事。

当サイトでも何回か取り上げた会社です(→当サイトの関連記事)。

「かつて旧東証1部に上場し、優良企業とも言われたユニゾがなぜここまで追い込まれたのか。そして教訓として何をくみ取るべきか。これまでの取材をもとに検証します。」

経営者には大きな報酬が支払われていたそうです。

「「元社長は退職金をいくらもらったのか。計画倒産だったのではないか」

去年10月に都内で行われた債権者向けの説明会。債権者である学校法人の担当者が厳しい質問を投げかけました。

これに対し裁判所から選任された監督委員の弁護士は、元社長ら旧経営陣4人に対し

▽会社が役員退職慰労金あわせて1億2000万円を支払い
▽さらに顧問報酬として、あわせて8億3000万円を支払ったことを明らかにしました。

元社長ら旧経営陣4人は、EBOに伴って2020年6月に退任しましたが、その翌月に会社と顧問契約を結び、会社はおよそ1年にわたって顧問報酬を支払っていました。...

会社の代理人弁護士は、この役員退職慰労金と顧問報酬は、民事再生法上の「再生債務者(この場合はユニゾ)が再生債権者を害することを知ってした行為」に該当するとして、これに対する否認権を行使して返還を求める裁判を起こしたと説明しました。」

EBOのスキームは...

「今回のEBOでは、会社の従業員持ち株会社によって設立された会社の子会社「チトセア投資」がTOB=株式の公開買い付けによってユニゾを買収する形をとりました。

この際「チトセア投資」は、アメリカの投資ファンド、ローンスターグループからいわゆるLBO(レバレッジド・バイアウト)ファイナンスを受けることで巨額の買収資金を調達しました。」

「まず「チトセア投資」は、借り入れと優先株の発行によって投資ファンドからあわせて2000億円余りの買収資金を調達。2020年4月までにユニゾに対するTOBを成立させます。」

EBO後の資金の動きは...

「その後ユニゾから投資ファンドへの返済に必要な資金を調達し、同じ年の10月までにファンド側に返済しました。

その額は実に2500億円にのぼったといいます。

この過程で「チトセア投資」は買収先のユニゾから2500億円を借り入れましたが、これだけの巨額の資金をどのように工面したのか。

これはユニゾがみずから保有する不動産を売却して捻出したものだとされています。

投資ファンドへのスピード返済の結果、ユニゾの資産から2500億円分が社外に流出し、財務が損なわれたと会社の代理人弁護士は主張しています。」

ユニゾから「チトセア投資」への貸付金は破綻時点で2000億円も残っていました。

「「チトセア投資」への貸し付けは再生手続きの開始日である去年5月9日の時点で2000億円余り。これについてユニゾは、そのほとんどが回収不能と判断しているということです。」

役員に対して報酬返還や損害賠償を請求するそうです。

「12月19日の債権者向けの説明会では、会社代理人の弁護士から、旧役員に対して顧問報酬などの返還を求める訴訟とは別に、損害賠償請求を提起したとの報告がありました。

ユニゾから「チトセア投資」に流出し、さらに投資ファンドに渡った2500億円余りの一部を請求するとしていますが、訴訟戦略にも関わるので、その詳細は明らかにできないとしています。」

結局、このEBOスキームで誰が得をしたかというと、ローンスターが短期間に巨額の利益を得たことは間違いなさそうです。役員も多額の報酬を受け取っています。他方、記事の後半でふれているように社債権者が大きな損失を被っています。

日本証券業協会では、社債権者の保護について検討しているそうです。

「日本証券業協会は去年12月から、社債権者の保護などについて話し合うワーキンググループを開き、企業が融資を受ける際のコベナンツ(財務上の特約)の付与や社債投資家の投資判断に必要な情報の適時適切な開示などをテーマに議論が交わされています。」

法律学者のコメント。

「神作裕之 教授

「今回の構図は、支配株主(チトセア投資)が少数株主がいないことをいいことに、社債権者の利益を犠牲にして直接、自分たちの利益を図ったもの。債権者と株主の利益相反の典型的な場合だ。少数株主が存在し、少数株主の保護が適切に図られるときは、少数株主より優先度が高い債権者は通常は自動的に守られるメカニズムになっているが、今回はその仕組みが動かず、会社、ここでは支配株主が会社債権者を害する行為をした。会社法にはそのような行為を直接的に禁止する明文の規定はないので、社債権者は、適切なコベナンツを社債契約に置くことでみずからを守るべきところ、それをしていなかった。

今回のユニゾのケースから、社債権者は適切なコベナンツを置くように発行会社と交渉し、発行会社に関する情報を得て、それに基づいて適切な意思決定をすることの重要性が明らかになったと思う。こうした社債市場のメカニズムが機能することが期待される」」

会計的には、ユニゾから親会社であるチトセア投資への貸付金の評価が問題となります。この貸付金について、破綻前の決算では引当金はほとんど計上されていませんでした。チトセア投資の主な資産はユニゾの株式だったようですから、チトセアの連結決算ベースの純資産を算定し、それに基づき貸付金の回収可能性を検討すれば、引当金が必要ということになったかもしれません。

会計監査も問題です。上場していたときは、大手監査法人(たしか新日本)が監査していましたが、上場廃止後は、個人の会計士2名が監査人になっています。監査は正しく行われていたのでしょうか。

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