会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

企業会計を取り巻く環境変化で提言(自由民主党)

企業会計を取り巻く環境変化で提言

自由民主党の企業会計に関する小委員会は、「金融調査会・企業会計に関する小委員会 提言」(2024年8月30日付)を公表しました。9月10日に鈴木俊一金融担当大臣に提言されたそうです。

「企業会計を取り巻く環境の変化に対応し、わが国資本市場の国際的な信認を維持していくために必要な方策について取りまとめ」たとのことです。

「提言では、企業の情報開示について生物多様性や人的資本といった新たな企業の情報開示が求められる中、新たな基準策定や定量評価手法の確立等について検討を求め、具体的な論点を提示したほか、株主総会前の有価証券報告書の公表についても関連する課題の抽出と環境整備に向けた方策について検討するよう求めました。

また、会計監査の質の向上についても、公認会計士試験等の選考・育成の在り方等について提言しました。」

全9ページです。内容は以下のとおり。

経団連や会計士協会が主張しそうな内容が多いようです。

気になる箇所をいくつかピックアップすると...

「刑事罰で 財務諸表の作成責任を問わなければ、抑止力は働かないと考えられるが、東芝事件以降、監査人に対 する一層の規制強化がなされたが、企業経営者に対する規制強化は行われていない。また、経営者に対 する罰則は、現在でも刑事罰を問うことができるが、実際に発生している経営者不正の件数に比べ、実際に訴追に至った事例数が著しく少ない。これらも踏まえつつ、監査人と企業に対する規制環境の適切なバ ランスをとるようにすべきと考える。」(4ページ)

「現時点での最善の努力を以て善意の開示を行うことにより、経営者、企業の虚偽記載とみなさない、あるいは監査においても同様のセーフハーバー的な規定を置くことを検討すべきである。」(4ページ)

「株主総会前に有価証券報告書が公表されていないことは諸外国の状況 に鑑みても不適切であり、当該企業のみならず、日本市場・日本企業の信用・レピュテーションを毀損する ことになりかねない。また、こうした状況を踏まえ、株主総会の時期の設定についても、多様な時期への設定がなされるべきである。こうした問題意識も踏まえ、政府においては、金融庁が中心となり、関係省庁と 連携し、企業における有価証券報告書の開示と株主総会の開催のタイミングや関連する実務等について 実態把握を進め、関連する課題の抽出必要な環境整備に向けた方策について検討すべきである。」(4ページ)

「本来的には、適時開示を行うことにより明確になる、当該企業のリスク感応度の高さ、予期せぬ事象が 発生した時の対応こそが、長期の収益性を期待する長期投資家の求める企業の実態を映す鏡であること を考えれば、こうした適時開示を上場企業に対し適切な手段でエンフォースしていくことが求められる。

一方で、企業の担当者や監査法人の負担を考えたとき、こうした適時開示が充分に行われているならば、 決算短信も含む四半期開示は完全に任意化されることも検討されるべきである。」(5ページ)

公認会計士試験制度については、これまで公認会計士・監査審査会において、試験合格者の質を維 持・向上するため、一定の合格水準を確保するなど、適切に運用がなされており、今後も継続していく必 要がある。公認会計士試験の受験資格や試験科目については、見直しの是非についての意見が分かれ ており、公認会計士に求められる資質の変化に応じて見直す必要があるとの意見が聞かれる一方で、受 験者の負担等も踏まえ慎重に検討する必要があるとの意見も聞かれるところである。また、公認会計士試 験の内容については、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、実践的な思考力、判断力等の判定に意を用いるものでなければならないところ、足元の試験内容では、それが必ずしも適切に運用されていないことを懸念する声も聞かれる。試験制度の検討にあたっては、これらの点についても議論する必要があ る。

試験合格後の能力開発については、公認会計士の質の向上や、実務補習の実効性確保の観点か ら、修了考査が難しく、このことが公認会計士として新たに登録できる者の数が伸び悩んでいる原因の一つにもなっているとの意見が聞かれた。この点について、日本公認会計士協会と会計教育研修機構におい て、実務補習と修了考査の連携等に向けて検討を開始しており、こうした取組みを引き続き推し進めてい く必要がある。」(7ページ)

グローバルネットワークとの関係に関して十分な開示を行うことは、資本市場の参加者等が監査法人における監査品質の向上に向けた考え 方や取組みなどを適切に評価する上で重要である。

したがって、今後、行政当局や日本公認会計士協会においては、こうした開示が制度趣旨にのっとって 適切になされているか、注意深く検証していく必要がある。また、特にグローバルネットワーク等との関係が有するリスクについて、グローバルネットワークやグループ内の構成組織がグローバルネットワーク等の運営に対 して監視を行う関係もみられるため、行政当局はグローバルネットワーク等に対するガバナンスが適切に機能しているか、その実態を把握するとともに、監査法人のガバナンス・コードのさらなる改定について、継続的に検討していく必要がある。」(8ページ)

「特に本提言が着目する企業の情報開示及び監査の観点から、上場企業の増加や監査業務の高度化・多様化に伴い監査法人のキャパシティが追い付かないという問題が生じる可能性がある。各企業や監査法人にかかる負担、作業の煩雑さやコスト、加えて将来的に上場企業の「監査難民」の可能性すら指 摘される状況を考えれば、監査法人がキャパシティビルディングに取り組むなど、何らかの対応が早急に必要である。また、市場サイドでは、上場にあたっての審査の厳格化や、企業のレイヤー別に適用される規制 や監査のあり方などについて検討する必要がある。」(9ページ)

コメント一覧

これは
素晴らしい提言ですね。
政連が頑張ってくれたのでしょう。
金融庁は耳が痛いかもしれません。
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