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「金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集」の公表(企業会計基準委員会)

「金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集」の公表

企業会計基準委員会は、「金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集」を、2018年8月30日に公表しました。

「金融商品会計の開発に着手するか否かを決定する前の段階で、適用上の課題とプロジェクトの進め方に対する意見を幅広く把握するため」(7項)の意見募集です。今年の11月30日までの募集となっています。

基準改正に着手するかどうかは未決定ですが、企業会計基準委員会としては、「我が国の会計基準を高品質なものとすることにつながり得る」(同上)、「金融危機時以降に改正された国際的な会計基準との整合性を図ることになり、国内外の企業間の財務諸表の比較可能性を向上させることに寄与し得る」(同上)として、着手すべきという立場です。

金融商品会計の主な分野としては、「金融商品の分類及び測定」、「金融資産の減損」、「ヘッジ会計」及び「金融商品の認識の中止」がありますが(8項)、「金融商品の認識の中止」以外の3分野をプロジェクトの検討の範囲に含めるとしています(9項)。

我が国の会計基準は、IASBとの東京合意(2007年)以後、基本的に、IFRSを国際的に整合性を図る対象としてきており(13項)、当文書では、IFRS の規定を基礎とした場合の各分野における主要な論点として、以下の項目を挙げています(18項)。

(1) 金融商品の分類及び測定

・株式について OCI オプションを適用した場合、当該株式の売却時に損益が計上されず、また減損損失が計上されないこと(ノンリサイクリング処理)

非上場株式について、貸借対照表において公正価値測定が求められること(評価差額は、原則として損益に計上され、OCI オプションが適用可能)

・日本基準において認められている管理上の区分による金融資産の組込デリバティブの区分処理が認められなくなり、リスク管理方法に影響を及ぼす可能性があること

(2) 金融資産の減損

・日本基準のように債務者の状況に応じた債権区分(一般債権、貸倒懸念債権及び破産更生債権等)に対応する貸倒引当金を計上するのではなく、個々の債権単位で債権の信用リスクが当初認識以降に著しく増大しているかどうかを評価したうえで予想信用損失を測定し、個々の債権の信用リスクに基づく予想信用損失を測定する一方、個々の債権に対する信用リスクのデータを整備し、当該データを保存するプロセスの整備やシステムの改修等が必要となること

・将来予測的な情報に基づき、企業の信用リスクを適切に反映する予想信用損失を測定する一方、将来予測的な情報を反映するためのデータの整備やその反映方法の妥当性を検証するプロセスの構築等が必要となること

(3) ヘッジ会計

ヘッジ有効性の定量的な評価が求められず、事後的にヘッジ有効性を満たさなくなった場合でも一定の状況ではヘッジ会計が継続される一方、原則として、ヘッジ非有効部分を算定して損益に認識すること

・ヘッジ手段としてのデリバティブを時価評価しない金利スワップの特例処理や振当処理が認められなくなるため、他のデリバティブと同様に、デリバティブの貸借対照表価額が時価を表すこととなる一方、金利スワップの特例処理や振当処理を適用している取引についてヘッジ会計を行う場合には、決算プロセスの変更等が必要となること

・銀行業及び保険業における包括ヘッジの対象となるヘッジ取引についてヘッジ会計を適用する場合には、ヘッジ会計の要件に対応するためのプロセスの変更等が必要となる可能性があること

「別紙 IFRS 及び米国会計基準について識別している適用上の課題」(20~198項)では、金融商品会計に関する IFRS 又は米国会計基準の内容を、我が国の連結財務諸表及び個別財務諸表に導入した場合における適用上の課題の分析を行っています。

当文書は60ページほどのものですが、最後の「適用上の課題」だけで50ページほどを占めています。「公表にあたって」では、この「適用上の課題」を簡略化したものが添付されています。

(補足)

大手監査法人の解説。

「金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集」のポイント(新日本監査法人)
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