スコーピオン・キャピタルという空売り投資家のターゲットとなったレーザーテック(東証プライム)が、反論のプレスリリースを出したという記事(スコーピオンのレポートなどについて→当サイトの関連記事)。すでにごく簡単なものは出していましたが、スコーピオンのレポートの中身に関して、少し詳しく反論しているようです。
会計に関する指摘に関しては...
「棚卸し資産の会計処理で完成品を意図的に計上しない不正があるとの指摘については「検収時点までは製品とはみなされず、一般に公正妥当と認められる会計基準に従い仕掛品と認識している」と説明した。顧客により完成品として検収されると同時に売り上げを計上しているという。
棚卸し資産高が膨らんでいるという指摘に対しては、レーザーテクの製品のリードタイムが1〜2年と長く、受注増で仕掛品も増えているとした。仕掛品の品質低下や販売価格の下落などによる価値減少については「適正に在庫評価へ反映している」とした。」
スコーピオンは、具体的な不正の証拠をもっているわけではなく、全体的な数字からの疑問点を指摘しているのが主のようです。会社の反論も会計の論点については一般論のようです。ただし、製品別の直近までの売上実績なども出しています。
一部報道についての補足説明(2024年6月6日)(レーザーテック)(PDFファイル)
(レーザーテックのプレスリリースより)
2024年6月期第3四半期の四半期報告書が開示済みです。たしかに、仕掛品が1200億円ほどあり、売上高1570億円(第3四半期累計)と比べると、すこし多いような印象を受けますが、外部からは、「リードタイムが1年から2年と長期に及ぶ」、「評価減や減損などは適正に会計処理」という会社の説明と、監査人のレビューを信じるしかありません。
いうまでもありませんが、仕掛品にしていれば、評価減検討の対象にならないということはありません。受注生産的な形態であれば、受注の契約金額と見込み原価総額とを比較して、赤字見込みであれば評価減(あるいは引当金計上)するということになるのでしょう。
レーザーテックの真実―スコーピオン「空売りレポート」の中身とは?(つばめ投資顧問)(YouTube動画あり)
「「レポート」というものがグレーな存在で、嘘を書いていたら風説の流布などの金融商品取引法上の犯罪に該当するのですが、会計の話となると、虚偽ではなく解釈の問題と捉えられるわけです。
解釈には唯一の正解は無く、周到に法的に問題の無い範囲で書かれていて、一見すると納得感のある内容となっています。
今回のスコーピオンのレポートは現地調査もかなり行っていて、横浜の工場をタイムラプスカメラやドローンを使って撮影するなど、執念深さを感じます。」
監査法人交代も、あやしいという根拠のひとつにしているそうです。
スコーピオンのレポート(概要)をざっとみてみましたが、レーザーテックの製品には技術的な問題があるということをしきりに指摘しているようです。また、レポートで指摘している監査人交代は、2018年(トーマツからPwCに交代)ですから、だいぶ前の話です。