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風俗誌出版社会長らを逮捕 自社株不正取得の疑い(日経より)

風俗誌出版社会長らを逮捕 自社株不正取得の疑い

自社株を不正に買い戻したとして、名古屋の風俗誌出版社の会長らが逮捕されたという記事。会社法の「会社財産を危うくする罪」だそうです。

「逮捕容疑は2008年9月、元役員名義の同社株25株を買い戻す際、会社法で自社株取得が認められるケースではなかったため、G容疑者(注:常務)ら4人が個人取得を装うことを計画。同社が4人に購入資金1億5000万円を短期融資し、不正に株式を買い戻した疑い。」

自社株の取得を不正に行うための一連の取引だと考えれば、このような構図になりますが、形式的には、株式の譲渡(元役員→G容疑者ら)が行われ、その取引で新たに株式を取得した者(G容疑者ら)に対して、たまたま会社から融資が行われたということになります。

これだけでは大きな事件にならないような気もしますが、暴力団が絡んでいるということで、一種の別件逮捕なのでしょう。

株不正入手の疑い、風俗誌会長ら逮捕 弘道会側と関係?(朝日)

「府警によると、1億5千万円はいったん元役員の口座に入り、N容疑者(注:会長)に渡った後、最終的に会社側に還流していた。N容疑者は会社に約16億円の債務があり、その返済にあてたとみられる。本来、ワ社株は1株5万円だったが、600万円として取引されていた。こうしたスキームはN容疑者の債務を減らし、会社の信用度を上げるためだったとみられる。」

N容疑者への債権が減り、G容疑者らへの債権が増えたということであれば、そのこと自体では、会社の財政状態には変わりはないということになります。むしろ、取引以前に、会長であるN容疑者に対して大きな債権が存在していたこと自体が問題のように思えます。

また、最終的に自己株式を法外な値段で買い取るというようなスキームであれば、もちろん会社の財産を損なうことになるので問題です(オリンパス事件でも海外子会社の優先株を高値で取得したことが問題になっていました)。

(参考)

会社法963条

5 第九百六十条第一項第三号から第七号までに掲げる者が、次のいずれかに該当する場合にも、第一項と同様とする。

一 何人の名義をもってするかを問わず、株式会社の計算において不正にその株式を取得したとき。

二 法令又は定款の規定に違反して、剰余金の配当をしたとき。

三 株式会社の目的の範囲外において、投機取引のために株式会社の財産を処分したとき。

(960条1項3号から7号は、「取締役、会計参与、監査役又は執行役」「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」などです。また、1項では「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」となっています。)
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