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かいひろしの部屋 (法律、ほか情報掲載)

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刑法のお勉強12

2018年12月07日 | 5刑法
 


学習テキスト

第三章 構成要件論(B)

第一節 構成要件の概念と理論

一 構成要件の概念

(1)刑法各本条の構造



・刑法典第二編「罪」の刑法各則の規定を刑法各本条と呼ぶが、刑法各本条は、他の法律規定と同様、法律要件と法律効果とから構成されている。

⇒刑法199条を例にとると、前段の「人を殺すこと」が法律要件であり、後段の「死刑または無期もしくは三年以上の懲役に処する」というのが法律効果である。



※法律要件の多くは、直接犯罪行為に関する記述であり、これを法学上「構成要件」と呼んでいる。もっとも、構成要件は条件そのものではなく、これに解釈を施して得られた観念である。



(2)構成要件の意義

・構成要件は、観念形象すなわち抽象的一般的な観念であり、個別具体的な現実の犯罪行為とは区別される。

⇒現実に犯罪行為が構成要件にあてはまることを構成要件該当性といい、構成要件に該当した犯罪事実を構成要件該当事実という。



※たとえば、殺人罪においては、「人を殺すこと」が構成要件であり、AがBを射殺したという現実の犯罪行為が「人を殺すこと」という構成要件に当てはまるとき、そこに殺人罪の構成要件該当性が認められ、AがBを射殺したという事実は構成要件該当事実となる。

⇒このように構成要件は、行為が構成要件に該当するという法的評価を下すための判断基準としての役割を果たしている。



・構成要件は、犯罪を輪郭づけたものであるから、例えば同じく人の死を惹起する行為であっても、殺人と過失致死は構成要件を異にする。傷害致死、遺棄致死、逮捕監禁致死についても同様である。



・構成要件は、行為が違法であるかどうか、責任があるかどうかという実質的・価値的な判断を避けて、もっぱら犯罪の輪郭づけに奉仕しようとする観念的形象である点において、価値に関係してとはいえ、それ自体は形式的・価値中立的な性質をもっている。



※その点で、構成要件該当性の判断は、実質的な価値判断である違法性・有責性の判断から区別される。



二 構成要件の理論

(1)ドイツにおける変貌

・構成要件概念は、近代ドイツ刑法において、抽象的化された個々の犯罪をを意味する実体法上の概念として発展してきている。



(イ)ベーリングの構成要件論

・『犯罪論』では、内部的矛盾を包蔵していた。即ち、人権保障機能と犯罪個別化機能とが、両立しないのである。

構成要件に、全く主観的・規範的要素を取り除いてしまって、一定事実(行為)の犯罪類型をつくり得るかということである。



・この矛盾を解決する新しい試みが『構成要件論』における「指導形相における構成要件」であった。

⇒犯罪類型の客観的側面をも規制する「指導形象」こそが構成要件であるとしている。



・個々の犯罪を個別化する機能とともに、犯罪の主観的側面(故意・過失)をも指導し規制する機能が明確にされた。犯罪の主観面と客観面とを統一的に指導するのを構成要件としたのである。



(ロ)マイヤーの構成要件論

・マイヤーのは、刑罰法条の基本形式の分析から始まった。刑法の法条は、刑罰条件と法的刑の二つの部分からなるという。そして、構成要件を外部的(客観的)構成要件と内部的(主観的)構成要件とに分けた。

⇒構成要件を違法性の徴表とした。これを否定する事実(違法阻却原因)があれば推定的効力はなくなる。構成要件は違法性の認識根拠である。



・ベーリングの没価値的な構成要件論の中に規範的なもの、即ち、価値観形的要素を発見した。そして、規範的要素の構成要件・違法・責任という三分法的体系的思惟を指導した。



(ハ)メッガーの構成要件論

・規範的要素も主観的要素も構成要件の要素に組み入れるとともに、構成要件と違法との関係はさらに接近し、構成要件に該当することは違法性の「存在根拠」であるとした。



・実質的な観点から、処罰に値する違法な行為の類型化されたものが構成要件だとされた。構成要件に該当する行為は、原則として違法である。例外として、違法阻却事由を認める。



・各種の犯罪に共通な一般的構成要件を認めない、又構成要件の総体を違法と解するので、構成要件と違法性とは同質のものになった。

⇒メツガーは、構成要件の内容に客観的要素と主観的要素と規範的要素との三種があることを認める。



※行為―不法(構成要件+違法性)―責任という犯罪体系。



【参考】

(2)日本における変貌



①小野清一郎

・ 構成要件の理論において構成要件というのは、法律上 の概念である。

構成要件は、社会生活において現れる事実を類型化した観念形象であり、それを抽象化した法律上の観念である。



・ 構成要件は、構成要素よりも具体的な統一性をもった概念である。



・ ベーリング・マイヤー流の構成要件論に正しい核心があるとし、メツガーの理論には構成要件と違法性の区別を曖昧にする点に疑問があるとされ、構成要件が違法な行為の類型であるだけでなく、道義的責任の類型であるという独自の考え方を展開した。



・ 構成要件は、客観的・記述的なものであるが、規範的及び主観的要素を含んでいることを認める。



・ 構成要件概念は違法類型であると同時に責任類型でもあるとする。刑法の故意・過失という責任要素が、構成要件の個別化機能が徹底される。



②瀧川幸辰博士

・ エム・エー・マイヤーの認識根拠説からメツガーの違法類型説、ベーリング晩年の指導形象論へと変遷。



③佐伯千仭博士

・ 戦前からドイツの構成要件論をフォローし、違法類型論への方向を承認されていたが、同時に宮本英脩博士の可罰的類型論をふまえ、責任類型をも含む犯罪類型という構造をもった。



④牧野英一博士

・ 構成要件の導入は消極的で刑法の概念を客観主義の下に理解しようとすることに帰着し、思想的にも特に新しいものをつけ加えるものではないと評価されている。



⑤木村亀二博士

・ 構成要件論を受容した上で、構成要件は違法行為の定型であるとされていたが、構成要件を犯罪論の体系的出発点におくことと犯罪の本質を主観主義的に解することは別問題とした。



(3)現代の構成要件論



・今日では、刑法学説が構成要件論を何らかの形で犯罪論体系の中に組み込んでいる。いわゆる「行為論」もその例外ではない。しかし、構成要件の意義・内容・構成要件と違法性・有責性との関係については、いくつかの異なった見解が示される。



(イ)行為類型論

・構成要件を責任のみならず違法性からも截然(せつぜん)と分離し、これを形式的、価値中立的にもっぱら行為の類型と解する立場である。



構成要件の論理的な意味での違法・責任推定機能を否定し、事実上の推定のみを認める。



・この立場は、

構成要件を「犯罪を輪郭づける観念的形象(型)」と理解し刑法体系の論理として、構成要件は違法な行為と違法でない行為を均等に内含している、と主張する。



⇒構成要件を、形式的・価値中立的に捉え、違法論・責任論に固有の領域を認める点は、ベーリングの構成要件論に共通するが、構成要件の犯罪個別化機能を徹底させる見地から、行為意思を構成要件化した故意・過失を構成要件要素と解するところに相違がみられる。



(ロ)違法類型論

・構成要件を違法行為の類型と解する立場であって、現在の我が国の通説である。

⇒違法類型論は、構成要件と違法性との関係をどのように解するかによって、二つの見解に分かれる。



(a)構成要件該当性と違法性を区別。

・両者を原則(違法)と例外(違法阻却)の関係と捉え、構成要件に違法性推定機能を認めるも、構成要件該当性が違法性から独立して、しかも違法性判断の前に認定されなければならないと解する。



※我が国の多数説である。構成要件がもつ違法行為の「類型」としての側面を強調している。



(b)構成要件該当性と違法性を一体とみる立場。

・メッガーの新構成要件論の流れを汲む学説である。



※構成要件が「違法」行為の類型である点を重視する見解であるといえる。

 

※この見解の特徴

①構成要件該当性の中に違法性を取りこむ立場。

②構成要件該当性を違法性に解消しようと立場。



(ハ)違法有責類型論

・構成要件を違法行為の類型であるとするにとどまらず、有責行為の類型でもあるとする立場である。



⇒構成要件に違法性推定機能のみならず責任推定機能をも認めるところにその特色がある。



※違法有責類型論は、違法類型と有責類型の関係をどのようにみるかによって、



①違法類型と有責類型との間に密接な関連性を認め、故意・過失は責任要素であるとともに違法要素でもあると解し、故意犯と過失犯とは有責類型として区別されると同時に違法類型としても区別される。



②構成要件概念の内部で違法類型と有責類型とを峻別して考え、かつ、構成要件該当性を確定するにあたり、違法類型としての判断を有責類型としての判断に先行させようとする分析的立場に分かれる。



三 構成要件の機能

・罪刑法定主義的機能 - 処罰される行為を明示する機能



・犯罪個別化機能 - 成立し得る犯罪の罪名を明らかにする機能



・違法推定機能-構成要件に該当する行為は原則として違法であり、違法阻却事由があれば例外的に違法性が阻却されるという機能



・責任推定機能-構成要件に該当する行為は原則として有責であり、責任阻却事由があれば例外的に責任が阻却されるという機能



・故意規制機能-故意があるというために認識の対象として必要とする客観的事実を示す機能





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