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かいひろしの部屋 (法律、ほか情報掲載)

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民法のお勉強29

2019年04月19日 | 2民法総則
※表見代理(A)
・・・・・
第109条 代理権授与の表示による表見代理
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りではない。
・・・・・
第110条 権限外の行為の表見代理
 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
・・・・・
第112条 代理権消滅後の表見代理
 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りではない。
・・・・・
第761条 日常の家事に関する債務の連帯責任
 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務については、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対して責任を負わない旨の予告をした場合は、この限りではない。
・・・・・

第一項 表見代理

(意義)
 1、無権代理の要件に入るものにつき、無権代理人と本人との間に特殊の関係がある場合。
⇒無権代理人を真実の代理人と誤信して取引した相手方を保護、取引の安全を図ることを目的とする。

※無権代理行為が正当な代理行為(有権代理)であったかのごとく、本人に対して効力を生じさせる制度をいう。

 2、表見代理制度はどのような原則にしたがい規定されているか。
⇒これは「権利外観法理」というもので、虚偽の外観を作り出したことにつ  いて、責められるべき事情があるもの。

※外形通りの責任を負わせることにより、これを信じて取引をした者の保護を図る法理といえる。

 3、表見代理は、取引の安全のために、本人を犠牲にして相手方を保護する制度である。
⇒それが成立するためには、相手方の側に保護されてしかるべしと思われるだけの合理的理由がなくてはならない。

※他面、本人の側にも、相手方の利益の前に自己の利益を犠牲にされてもやむを得ないとみられるだけの事情があることを要す。

※109条代理権授与の表示による表見代理
・AがBに代理権を与えた旨を、Cに向かって表示したが、真実にはAB間に代理権授与がない場合にAB間に成立しうる表見代理である。

2 要件
① 本人が第三者に対して、ある者に代理権を与えた旨の表示をしたこと

※表示に関して
・「表示」とは、代理権授与の意思表示ではなく、授権があったということについての「観念の通知」を意味する。

※「表示」は、書面によると口頭によると新聞広告によるとを問わない。
A代理人名を記した委任状を同人に交付して、同人がこれを第三者に提示すること
B受任者白紙の白紙委任状を代理人に交付して、同人をしてこれを第三者に提示せしめることも「表示」とされる。

※「代理権を与えた旨の表示」とは、必ずしも「代理権」等の言葉を用いたものでなくともよい。(判例)

② 表示において示された事項につき、無権代理人が代理行為をすること

・表示において示された代理権の範囲を超えるときは、次の110条と本文との競合適用が問題となる。

※この場合、白紙委任状の直接的被交付者が委任事項の空白を濫用し、予定されない相手と取引をしたのであれば、その相手方は109条・110条の競合適用により保護されることになる。

③ 無権代理人の行為を相手方において、正当な代理権あっての行為と誤信すること

・相手方の善意・無過失が必要である。
⇒相手方に悪意又は有過失がある場合、本人は表見代理の責任を負わない。 

※ただし、相手方の悪意又は有過失の立証責任は本人側にあることになる。
本条の適用範囲
・任意代理のみ適用され、法定代理には適用されない。
(通説・判例の立場)

(理由)
・法定代理人の場合、代理人の選任につき本人の意思関与を考える余地がない。

第二項 110条権限踰越(ゆえつ)による表見代理

・与えられた代理権限の範囲を逸脱してなされた代理行為について認められる表見代理を意味する。

1 要件
① 基本権限が存在すること

・現実になされた行為については代理権はないが、他の何らかの事項については真実代理権限があることが必要である。

※したがって、基本代理権の存在がまったく認められない者のなした代理行為については本条の表見代理は成立しないことになる。
(印鑑や白紙委任状を拾得した者がこれを悪用した場合など) 

(理由)
・基本代理権が存在することをもって、本人の静的安全を保護。
⇒最小限度の要件。
※相手方保護との調和を図ろうとした。

・基本代理権と現実になされた代理行為とは、異種・異質なものであってもよいとされる。

・本条の基本代理権たるためには、厳格な意味での「代理権」でなければいけない。
(私法上の法律行為の効果を本人に帰属させる権限)

※つまり、Aが所有している甲不動産についての賃借についての代理権をBに与えていた場合に、BがCに対して、売買契約を結んでしまった場合などである。

※基本代理権に関する判例
最判昭35.2.19
・金融会社の借入金勧誘員Aのために勧誘業務に従事していた息子BがA名義の保証契約を締結した事案。

(判示)
・「勧誘それ自体は、事実行為であって法律行為ではないのであるから、他に特段の事情の認められない限り、右事実をもってただちにBがAを代理する権限を有していたものということができない」として、本条の表見代理の成立を否定している。

・要するに、単なる事実行為をなす権限ではないというのが判例の基本的立場ではないということになる。
(父のためにしたという事実行為をもって基本代理権が存在するとはいえないとした。)

最判昭46.6.3 
質的越権の事例
・贈与者が受贈者に、贈与契約上の債務の履行のため、所有権移転登記申請の権限を授与し、実印・印鑑証明書・登記済証を交付したところ、それらを濫用して、本人を自己の保証人とした事案

(判示)
・「登記申請行為は公法上の行為であり単なる公法上の行為についての代理権は基本代理権に当たらないとしても、その行為が特定の私法上の取引行為の一環としてなされたものであるときは、右規定(110条)の適用に関しても、その行為の私法上の作用を看過することはできない。

・したがってその登記申請行為が本件のように私法上の契約による義務の履行のためになされたものであるときは」その権限を基本代理権として、表見代理の成立を認めることができるとした。

※要するに、基本代理権は私法上の行為についての代理権でなければならないのだが、登記申請行為のような公法上の行為であっても、それが私法上の取引行為の一環としてなされるときは、当該行為の私法上の作用を根拠として、本条の適用があるものとする。ということになる。

※このような観点から、同じく公法上の行為である印鑑証明書下付申請を委任された者が抵当権設定の契約締結・登記をした場合。
⇒「基本代理権の存在」が否定されている。

A前提として、贈与契約があり、その後に公法上の代理が発生
B公法上の代理があって、それに次いで私法上の契約が発生
しているということになる。

② 基本権限を逸脱した事項については代理行為がなされたこと

・無権代理人が、代理人としてではなく直接本人名義で、本来の権限を逸脱する行為を行い、相手方がこの者を本人であると誤信した場合にも本条が適用ないし類推適用される。

③ 越権の無権代理につき、相手方において代理権を伴うものと誤信し、その誤信に「正当な理由」があること

・「正当な理由」があるとは、客観的にみて行為者に代理権ありと考えるのがもっともだと思われる事情があることをいう。
⇒相手方についていえば、代理権の不存在について善意かつ無過失であることを要するのである。

・「正当な理由」ありといいうるためには、本人の過失に基づいたものであることも、本人の作為又は不作為に基づくものであることは必要とされない。

・「正当な理由」とは、結局は当該具体的事情に照らして法の保護に値するかどうかに帰着することになる。
⇒当然そこでは、代理行為の相手方と本人との要保護性についての利益衡量が実質的な決め手になる。

※本人の具体的・主観的様態を問題にしないという解釈は、特に法定代理への本条の適用を肯定するための前提として意義を持つことになる。

・109条は法定代理の適用はないが、110条では法定代理について適用がある場合も存在するのである。

・「正当な理由」があったかどうかは、
⇒当事者事情のもとで本人と相手方のどちらを保護すべきかという観点になる。

※当事者の社会的地位・職業、表見的事実が権限を推定させる程度、目的物の性質等、具体的諸事情を総合して決せられる。た

(事例)
・本人の実印を使用している場合
⇒実印の入手が容易であるとか実印を託されることの多い関係にあるもの(妻とか息子)が実印を使用するときには、正当な理由は認められにくい。

※110条の適用範囲

① 法定代理への適用の可否
・本条は、任意代理のみならず、法定代理にも適用される。
(通説・判例)

・本条の表見代理が成立するためには、本人の過失等は要しないと解されている。
⇒法定代理の場合であっても相手方の誤信を保護する必要性がないとはいえないからである。

(事例)
・父母の共同親権の場合
⇒父母の一方が自己単独の代理名義で行為した場合において、父母の一方が自己単独の代理名義で行為したとき、具体的には、未成年者の父母が父を親権者とする離婚をした後、父が未成年者の法定代理人として単独で行為をしたところ、先の離婚が無効であったような場合に本条の適用が問題となる。

※761条と110条の関係

・妻Bが夫Aの土地をAに無断でCに売却した場合、Cは土地所有権を取得できるか。
⇒土地売却は日常家事の範囲に含まれないので、Cは761条に基づいて土地所有権を主張できないことになる。

・そこで、日常家事の代理権を基本権限として110条の表見代理が成立しないだろうか。夫婦の日常家事に関する代理権が110条の基本権限となるかが問題になる。

A 110条趣旨類推説(判例)
・日常家事の代理権は原則として110条の基本権限にはならないが、例外的に相手方が、代理人の行為が当該夫婦の日常家事に関するものだと信ずるにつき「正当な理由」があるときに限り、相手方の保護を図る。

① 110条を直接適用してしまうと、夫婦の一方が他方の財産を処分しうるのと同様の結果となり、夫婦別産性(762条)に反する。
←β説との関係に注意
② 他方、日常家事の範囲を第三者が外部から正確に判断することは困難であって、第三者の取引の安全を害するおそれが強く、かかる第三者の保護を図る必要がある。

B 110条類推適用説
・日常家事代理権は原始的に110条の基本権限となりうる。
⇒ただし無条件に認められるわけではなく、法定代理である以上は相手方も必然的に注意すべきであるから、「正当な理由」を次のC説と同様に厳格に解する。

(理由) 
※110条は法定代理に適用してよいから。

C 110条直接適用説
・日常家事代理権は110条の基本権限となるとして、110条の直接適用を認める。
⇒ただ、「正当な理由」を「本人に代理権の有無・範囲についての問い合わせをする事が全く不要と感じさせるほどの客観的事情」だと厳格に解する。

① 法定代理について表見代理の成立を肯定する以上、761条の場合に限って否定する必要はない

※A説とC説とでは、相手方の信頼の対象が違う。前者では、当該法律行為が当該夫婦の日常家事の範囲内だと信じることが必要であるのに対し、後者では、当該法律行為をなす権限が与えられていると信じればよいとされている。

※判例
最判昭44.12.18
① 夫婦の一方が日常家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合において、特に一方が他方に代理権を授与したことがない以上、その日常家事の代理権を基礎として広く一般的に110条所定の表見代理の成立を認めることは、夫婦の財産的独立を損なうおそれがあるから相当ではない。
② その越権行為の相手方においてその行為がその夫婦の日常家事の範囲内に属すると信ずるについて、正当の理由があるときに限り、110条の趣旨を類推適用して相手方の保護を図れば足りる。
 ※夫婦の財産的独立の保護と取引の安全保護との調和を図った解釈である。

※112条 権限消滅後の表見代理
・代理権が消滅して、もはや代理人ではなくなった者が代理行為をなした場合に、善意・無過失で取引した第三者を保護するために認められる表見代理である。

1 要件
① かつては存在した代理権が、代理行為当時には消滅していたこと
・たとえば、委任解除後も委任状を取り戻さなかった場合とか、被用者を解雇したのに取引先に通知しなかった場合などにその適用が問題となる。

② かつて有していた代理権の範囲内で代理行為を行ったこと
・代理権の範囲を越えた場合には、本条と110条との競合適用として、表見代理の成立が認められる。

※なお、無権代理行為が追認された後、さらに新たな無権代理行為がなされた事案につき、第三者に正当な理由があるときは、110条及び112条の類推適用により本人はその責めに任ずべきであるとした判例がある。

③ 代理権消滅による不存在につき、相手方が善意・無過失であること
A この要件の有無についての立証責任は、本人にある。
 B すなわち、相手方の悪意又は有過失を本人において立証しえた場合に限り、表見代理の成立を阻止しうることになる。

 ・本条の保護を受けるのに、代理人として行動した者が以前に代理権を有していたことを知っていることは必要とせず、相手方の善意・無過失を認定する上での一資料となるにとどまる。

※112条の適用範囲
・本条には、任意代理のみならず、法定代理にも適用がある

※第三者「表見代理制度で保護される第三者」
・表見代理制度によって保護される者は、法文上は、「第三者」と無限定的に書かれている。
(109・110・112条)
⇒代理関係における第三者すなわち本人及び代理人以外の、代理行為における直接の相手方の意味であると解されている。

(理由)
・一般的に有効な代理権が存在する旨を信頼するのは、直接の相手方に限られ、以後の転得者等は一般的にこれを信頼する立場にないからである。

・転得者は代理人・相手方間の事情などは知らないのが普通であり、転得者を第三者に含めるとほとんどの場合に表見代理が成立することになり、帰責性のない本人に酷と思われる。

・であるからに、直接の相手方について表見代理が成立しない限りは、以後の転得者などが表見代理の保護を受ける余地はないことになる。
⇒この場合、転得者の保護は94条2項類推適用等によることになる。

・反面、直接の相手方について表見代理の要件が充たされた場合、以後の第三者は善意・悪意を問わず、当然に保護される。

※94条2項の第三者には転得者も含まれる。
・表見代理においては、転得者は第三者には含まれないとしている。
⇒直接の第三者において表見代理が成立する場合には、当然、転得者も保護されるという見解である。

※表見代理の効果
・表見代理の効果として、いずれも、本人は無権代理人の代理行為の効果が自分に及ぶことを回避しえないという趣旨となる。
(当然に有権代理の効果が生じるわけではないので注意を要す)

※効果の主張相手方を保護
・表見代理は、相手方保護のためにのみ存在する制度であるから、相手方がこれを主張してはじめて問題となる。

⇒相手方が主張しないかぎり、本人側から表見代理を主張することは許されないと解されるからである。

・もし、本人が当該代理行為の効果を欲するならば、相手方による115条無権代理行為取消しよりも早く113条を追認するしかない。
(追認することによって有権代理となる)

※表見代理と無権代理の関係
・表見代理制度が相手方の保護のためにのみ存在するということは、問題の代理行為につき客観的には表見代理の要件を充たしていても、当該代理行為はなお無権代理行為としての性質を失うものではないということになる。

⇒したがって、相手方は、表見代理と、117条の責任追及と選択的に主張することができる。(通説)

※この通説的見解の根底には、表見代理の成立は、勝訴判決が確定するまでは必ずしも明らかでないため、表見代理の要件を充たすときはその主張しかできないものとすると、相手方の救済が十分でないなどの判断がある。

※この無権代理と表見代理の関係についての学説 
・表見代理が成立しうる場合でも、相手方は表見代理を主張せずに、無権代理人の責任を追及することができるか。また、無権代理人は表見代理の成立を主張して、自己の責任を免れることができるか。表見代理が成立する以上、相手方保護としてはそれで十分であり、無権代理人の責任追及まで認める必要がないのではないかが問題となる。

A 無権代理人の責任否定説
・表見代理が成立する場合、無権代理人の責任を追及することはできない。

⇒表見代理が成立する以上、相手方は所期の目的を達成できるので、それ以
上の利益を認める必要はないからである。 

※117条は、表見代理が成立しない場合の規定と考える。
B 無権代理人の責任肯定説(判例)
・相手方は表見代理の責任追及と無権代理人の責任追及を選択的に主張できる。

①表見代理も無権代理の一種であり、表見代理が成立しても無権代理としての面が除去されるわけではない。
②相手方からの責任追及に対し、無権代理人が表見代理を主張して本人に責任を転嫁するのは、相手方保護のための表見代理制度の趣旨に反する。
③表見代理の立証は一般には容易ではないから、相手方保護のため無権代理人に対する責任追及との選択的行使を認めるべきである。

※判例
最判昭62.7.7

・表見代理の成立が認められ、代理行為の法律効果が本人に及ぶことが裁判上確定された場合には、無権代理人の責任を認める余地がないことは明らかである。

・しかし、無権代理人の責任をもって表見代理が成立しない場合における補充的な責任すなわち表見代理によっては保護を受けることのできない相手方を救済するための制度であると解すべき根拠はなく、右両者は、互いに独立した制度であると解するのが相当である。

・したがって、無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解するべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し117条の責任を問うことができる。

・そして、表見代理は本来相手方保護のための制度であるから、無権代理人が表見代理の成立要件を主張立証して自己の責任を免れることは、制度本来の趣旨に反するというべきであり、したがって、右の場合、無権代理人は、表見代理が成立することを抗弁として主張することはできない。

・結局、近時の通説及び上記判例の立場からすれば、相手方は、表見代理を主張して本人の責任を問う、無権代理として無権代理人の責任を問う、無権代理行為を取り消して契約を白紙に戻す、という3つの方法のうち1つを自由に選択して主張しうることになる。

・そして本人の追認前に、取消権を行使すれば、表見代理の主張及び無権代理人の責任追及はもはやできなくなることは前にも触れたとおりである。

※表見代理の重畳適用
・真実には何ら代理権授与がないのに、ある事項につき代理権を授与した旨の表示だけがなされたところ、その表示による範囲を逸脱した事項について無権代理行為がなされた場合、表見代理は成立するのか。

・109条は「その代理権の範囲内において」責任を負うと規定し、条文上は、表示された権限を超えた場合を予定していないと思える。また、110条が適用されるには基本権限の存在が必要であるが、この場合、実際には授権されていないのであるから、基本権限は存在しない。そこで、このような場合に、109条と110条を重畳的に適用して、表見代理の成立を認められないかが問題となる。

・たとえば、本人Aが他人BにAの名で営業することを黙認していたために、通常の営業の範囲では109条の表見代理が成立するところ、AがたまたまBに実印・建物の権利証・印鑑証明書を預けてあったために、Bが何ら代理権もないのにA所有の土地に債権者Cのために抵当権を設定したという場合には、抵当権設定契約は109条で表見代理が成立する通常の営業上の取引の範囲を超えるが、110条を重畳的に適用することで表見代理が成立する。

※判例
最判昭45.7.28 百選Ⅰ
・真実に何ら代理権授与がないのに、ある事項につき代理権を授与した旨の表示だけがなされたところ、その表示による範囲を逸脱した事項について無権代理がなされたという事案において、相手方において表見代理人に取引の権限ありと信ずべき正当の理由ある限り、本人は109条、110条によって契約上の責任を負うとした。

※判例は109条と110条の重畳適用を認める

※110条と112条の重畳適用についてはどうか
・すでに基本権限が消滅しているため110条の適用ができず、さらに、消滅した権限の範囲を超えているため112条も適用できない場合に問題となる。

・Aは、Cから借金をする際にBを代理人として実印を交付し、Bは依頼通りCから融資を受けて目的を達成し、Bの代理権は消滅した。ところが、その後Bは、Aの実印を利用して、Aの代理人としてAを自己の債務の保証人とする旨の契約を締結した。

※判例
大連判昭19.12.22 百選Ⅰ(95)

(事案)  
※AはX銀行からの借入につきYから預かっていた実印を利用し、Yを連帯保証人とした。Aはかつて、当時未成年であったYの実印を預かり、約15年にわたってYのために無数の代理行為を行ってきたという事情があった。Aの支払がないので、連帯保証契約に基づいてXがYに請求した。

(判旨)
・代理権の消滅後、従前の代理人が代理人と称して従前の代理権の範囲に属しない行為をした場合にも、110条・112条が類推適用されるとした。

※判例・通説は、109条と110条の重畳適用も、110条・112条の重畳適用もともに認めている。

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