肥満症は不満症 １３２号

夏用のズボンを着用したら、すべて腰回りが窮屈で、前チャックが閉まらないのである。女房の診察によると、肥満症・メタボリックシンドロームであり、怠慢な生活の証しであると厳しく叱責されたのである。理由は昨年まで着用できたものが、装着できないのは、大きくなったからである。子供なら理解できるが、老人は縮小するのが常識だから、大きくなったのは異常で病気に違いないという説明である。
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満症に加え、高血圧、高脂血症、高血糖のうちの２つ以上を併発した状態のことである。

捨て台詞を残して、給料を稼ぎに会社に出勤したのである。一人になり反省し、午後には体重減らしの散歩に出掛ける事にした。近くの棚田公園・野鳥の森・奈良井公園の公園巡りを思い立った。リックに缶ビールを入れ、一回り２ｋｍの旅立ちである。

途中にある野鳥の森公園のベンチでビールを頂き、日焼けしようと思い、しばし休憩した。酔いを醒ましながら、瞑想した。平和の使者・鳩が飛んできて、近くで餌を探している。逃げることをしない。しばらく留まり、行き先は解らないが飛び去った。女房にも鳩にも無視される私は人畜無害な様である。

１時間程の休憩の後、再び歩き出すことにした。横断信号で、青信号を待っている時に、音がすることに気が付いた。視覚障害者用に誘導音を鳴らす音響装置付信号機である。メロディ式と擬音式があり、いずれも耳に残る音が特徴的である。童謡の「とおりゃんせ」とスコットランド民謡の「故郷の空」の２種類のメロディ式。擬音式は優先道路横断用には「カッコー」が、小さい道路には「ピヨ」が使用される。擬音式では向こう側とこちら側で「カッコー」と「カカッコー」、「ピヨ」と「ピヨピヨ」に分けて進行方向を把握しやすくする、異種鳴き交わし方式が有るようだが、単純な擬音式の交差点である。

奈良井公園に到着したので、休憩することにする。夏休みの公園は母親と子供が定番の滑り台・ブランコ・砂場で遊んでいる。三種の神器がないと、公園整備の補助金が交付されない。子供達は夏には水浴をしたいだろうが、大人の決めた整備項目には無いのである。昼寝もして、一時間程、滞在した。

再び歩き出したのであるが、無意識に近道を探して歩いている。健康の為には長い距離を歩いた方が良いので有るが、効率・能率・無駄取りが金儲けに繋がる経済常識の奴隷の習性が染み付いている。３時間で２キロ歩いたのであるから、時速６６６ｍである。

自宅に到着して、肥満について調べてみた。肥満であるかどうかは、身長あたりの体格指数（ＢＭＩ　Body Mass Index）=体重÷身長÷身長をもとに判定するのである。身長１６８cm・体重５９㌔の私は、普通体重なのである。メタボリックシンドロームは、高血圧、高脂血症、高血糖がないと成立しないが、私は貧血(金欠でもある)だから該当しない。以前は家族を養う過酷な労働の為に、肥れなかったのである。阿弥陀様はきっと承知していて下さる。

帰宅したら理路整然と理論的に説明しようかとも思うのであるが、感情で動く女房は詭弁を弄し、激怒することが推測されるので、言わないことにする。そして焼酎を飲み、早々に寝る事にする。私も強かな策士に成長した。