東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ティツィアーノ《ダナエ》

2017年02月18日 | ヴェネツィア派

ティツィアーノとヴェネツィア派展
2017年1月21日~4月2日
東京都美術館

 

   西洋美術界の人気のエロチック主題の一つ、天から降る「黄金の雨」を見つめる裸体の若い女性「ダナエ」。

 

   本展には、ダナエの西洋美術史上最高傑作の一つ、日本初公開となるティツィアーノ《ダナエ》がカポディモンテ美術館から出品されている。

 

   これは大変な事件。本展関係者の皆様には大感謝である。

 

ティツィアーノ
《ダナエ》
1544-46年頃

 

   ティツィアーノは、《ダナエ》を少なくとも5点制作したとされている(wikipedia)。現存は4点で、カポディモンテ美術館、プラド美術館、エルミタージュ美術館、ウィーン美術史美術館が所蔵する。


   カポディモンテ美術館所蔵作品は、それらのなかで最も早く制作された、第1バージョン。
   教皇パウルス3世の孫である枢機卿アレッサンドロ・ファルネーゼの注文を受けて制作された。


(なお、教皇パウルス3世については、やはりカポディモンテ美術館が所蔵する、やはりティツィアーノによる肖像画が本展に出品されている。これもまた大変な事件。本展関係者の皆様には重ねて大感謝である。)

 

   ティツィアーノ《ダナエ》について、ヴァザーリが『美術家列伝』で伝えるところによると、ミケランジェロはこの絵を見て、「色彩、様式も気に入ったが、デッサンの修練が足りないことが悔やまれる」旨語ったという。ただ、このコメントについては、フィレンツェ美術至上主義のヴァザーリによる演出上の脚色とも言われている。

 

   ミケランジェロが見た《ダナエ》は、カポディモンテ美術館の《ダナエ》ではなく、プラド美術館の《ダナエ》であるようだ。

 

   ティツィアーノは、1550年以降、スペイン王フェリペ2世の依頼で、「ポエジア」と呼ばれる、オウィディウスの『変身物語』に題材をとった一連の古代神話連作絵画を制作する。そのなかの1点がプラド美術館の《ダナエ》である。

 

   エルミタージュとウィーンの《ダナエ》は、その人気に応えて制作された焼き直しバージョンになるのだろう。ウィーン作品は工房作とされている。

 

   以下、カポディモンテ以外の3作品を確認する。


ティツィアーノ
《ダナエ》
1553-54年
プラド美術館

 

 

ティツィアーノ
《ダナエ》
1553-54年
エルミタージュ美術館

 

 

ティツィアーノ工房
《ダナエ》
1564年
ウィーン美術史美術館

 

   ダナエはほぼ同じポーズであるが、エロスが侍女になって、犬が登場して、その犬が消える、あるいは花になる、など他の登場者に変化が見られる。プラド美術館所蔵作品も観たい。

 

 

   ところで、西洋美術のダナエで私が思い浮かべる作品。
   ベスト3(ただし順位は付けられない)は、ティツィアーノの上記作品、レンブラント作品、ヤン・ホッサールト作品。次点がコレッジョ作品である。

 

レンブラント
《ダナエ》
1636年/1643年頃
エルミタージュ美術館

 

ヤン・ホッサールト
《ダナエ》
1527年
アルテ・ピナコテーク

 

 

コレッジョ
《ダナエ》
1531年
ボルゲーゼ美術館

 


   レンブラント作品は、1985年に悲劇に見舞われる。
   ある青年により硝酸を浴びせかけられ、刃物で2回切りつけられたのだ。これにより画面中央ほぼ全ての顔料が溶け落ち、水滴状になって垂れ下がる。1985年から1997年の長期にわたって修復が行われるが、完全に修復することは叶わない状態となった。(なお、画像はレプリカ@横浜・そごう美術館、2016年。)


   ヤン・ホッサールト作品は、幼い顔と、変な胸の形状が印象的。是非実物を観たい。


   コレッジョ作品は、10年以上前に現地で実物を見ているはずだが、2時間の滞在制限のもと、カラヴァッジョとベルニーニとティツィアーノ《聖愛と俗愛》と、たまたま館内で開催中だった企画展とに気が取られたためか、記憶が曖昧。もう一度、チャンスがほしい。

 

   上記以外にも、古代ギリシャの陶器に描かれた「ダナエ」とか、クリムトの《ダナエ》とか、多くの魅力的な作品があるようだ。



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