国立西洋美術館の常設展において、2017年6月9日より、次の新収蔵作品が新規展示されている。
ドガ
《舞台袖の3人の踊り子》
1880-85年頃
54.6 x 64.8cm
油彩、カンヴァス
国立西洋美術館
2016年度の購入作品。
ドガの作品の所蔵状況について、独立行政法人国立美術館の所蔵作品総合目録検索システムで検索する。
国立西洋美術館が、スケッチ1点と寄贈されたパステル画1点の計2点を所蔵。他の国立美術館は所蔵無し。
つまり、国立美術館が所蔵する初のドガの油彩画作品となるようだ。
絵を見る。
舞台袖の書割の陰で出番を待つ3人の踊り子。
彼女らに囲まれて、シルクハットの一人の紳士の黒いシルエットも描かれている。
となると思い起こすのは、中野京子氏の『怖い絵』。
以下、角川文庫版の作品2 ドガ『エトワール、または舞台の踊り子』より、最後の文章。
確かなのは、この少女が社会から軽蔑されながらも出世の階段をしゃにむに上って、とにもかくにもここまできたということ。彼女を金で買った男が、背後から当然のように見ているということ。そしてそのような現実に深く関心を持たない画家が、全く批判精神のない、だが一幅の美しい絵に仕上げたということ。それがとても怖いのである。
本作品の3人の少女のうちに2人は雑に描かれている。男の目線は、もう1人の描き込まれているほうの少女に向けられているのであろうか。それともその先にいる出演中の少女に向けられているのか。
高額の桟敷席を持つ客は、上演中であっても自由に楽屋や舞台袖に出入りする権利を持っていた。
少しでもいい暮らしがしたい、わずかでも這い上がりたいと必死の彼女たちにとっては、バレエの真髄を極めるも何も、まずは良いパトロンを掴まえるのが先だった。男たちも、それは先刻承知である。厳然たる階級制度の中で、幾重もの差別感情を抱きつつ、彼らは踊り子に接近する。めでたく双方の思惑が一致すればパトロンとなって、愛人のためにありとあらゆる利を図るという次第だ。
国立西洋美術館のキャプションについて。
キャプションに、従来の日本語、英国に加えて、中国語、韓国語も付けることを始めたようだ。
それ自体は良いとして、個々の作品解説キャプションでは、4言語を並べることとなるので、貼るスペースの関係か翻訳作業負荷の関係か、文章のボリュームが減って、内容が薄くなった印象。アルチンボルド展を鑑賞していて特にそう感じた次第である。