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フェルメールに帰属《聖プラクセディス》を撮る - 2024年6月の国立西洋美術館常設展から3点

2024年06月19日 | 国立西洋美術館常設展示
フェルメールに帰属《聖プラクセディス》を撮る。
 
 17世紀イタリア・トスカーナのバロック期の画家フェリーチェ・フィケレッリ(1605-60)の作品の模写。
 
 
 2014年7月8日、ロンドンでのクリスティーズのオークションに出され、約624万ポンド(約11億円)で落札される。
 落札者は日本人コレクターであったらしく、国立西洋美術館に寄託され、2015年3月17日から常設展示を開始。
 以降、少なくとも私の訪問時には必ず常設展示されていた作品。
 
 
 2023年2月10日〜6月4日に開催されたアムステルダム国立美術館の「史上最大規模」のフェルメール展に出品。
 一般チケットは開幕から数日で完売し、入場者数は65万人に達したという同展において、《聖プラクセディス》は、フェルメールの真作として展示された。
 
(真作とする説明)
 それが真作として今回展示されることになった経緯が、公式カタログに収録された論文「スコットランド国立美術館上級学芸員・サイフェルト氏著」にあった。論文によると、作品の真贋は画家の署名、絵具の使われ方、支持体(キャンバス、板など)、歴史的視点からの分析という4つの確度から考察が加えられた。
 署名が後世に描き加えられたという意見は、絵具の分析により否定された。また、人物がまとった衣装の描かれ方について、フェルメールの他作品と比較しての分析でも真作とみなされた。使用された支持体やテクニックについても、17世紀オランダに特有のものだという。これらの理由により「フェルメール作」と結論付けられると説明している。
 
 そして、同展において、所有者が「Kufu Company Inc.」と初めて明記された。
 
 
 「史上最大規模」のフェルメール展が閉幕しても、《聖プラクセディス》が国立西洋美術館の常設展示になかなか復帰しない。
 もしかしたら、寄託が終了したのではないか、と不安に思っていたところ。
 
 
 2024年4月に常設展を訪問した時はいなかったので、おそらく今期6月からの復帰だろう。
 そして、撮影可となっている。びっくり。
 
 キャプションは、以前とおそらく変わりないようだ。
 ちなみに、国立西洋美術館HPの作品検索ページでは、「株式会社くふうカンパニーより寄託」と明記されている。
(展覧会歴に、2000年の大阪市立美術館「フェルメールとその時代」展が記載されていないが、単なる漏れであろうか?)
 
 フェルメールの真作か否かはともかく、作品自体はなかなか興味深い。
 
 キリスト教迫害時代の2世紀ローマで、迫害された信者の看護をした聖プラクセディス。
 海綿から殉教者の血を絞り出し、壺に注ぐ。
 海綿は、聖プラクセディスのアトリビュート。
 
 画面左下の署名「Meer 1655」。
 
 
 来月(2024年7月)、現所有者となってから10年。
 来年(2025年)、国立西洋美術館に常設展示が開始されてから10年。
 いつまでも国立西洋美術館にあるわけではないだろうから、あるうちに何度でも見ておきたい作品。
 
 
 
今期より、撮影可となった作品を撮る。
 
ローラ・ナイト(1877-1970)
《屋内訓練場のジョー・シアーズとW・エイトキン衛兵》
1917年、旧松方コレクション
国立西洋美術館(2017年度購入)
 
 
 私的には、2019年の国立西洋美術館「松方コレクション展」にて初めて知った画家。
 以降、常設展示にずっと展示されている感。女性画家であるからだろうか。
 2019-20年の常設展示では撮影可であったが、2022年のリニューアル・オープン以降は撮影不可となる。
 先般の企画展「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」では、飯山由貴氏の大型インスタレーションの中に組み込まれた国立西洋美術館所蔵作品9点のなかの1点となったが、この1点が撮影不可のために、飯山氏の作品自体の撮影を躊躇した記憶がある。
 企画展が終わって、6月に常設展示に戻ると、撮影不可ではなくなっている。
 何か状況の変化があったのだろうか。
 
 
 
初展示作品を撮る。
 
ポール・ゴーガン(1848-1903)
《サン=トゥアン教会、ルーアン》
1884年
牧重光氏、牧重彬氏、牧重陳氏より寄託
 
 1882年のパリの株式市場の大暴落を契機にゴーガンは株式仲買人を辞めて画業で生計を立てることを考える。そして、1884年、家族でルーアンに移る。生活費が安いからという理由であったらしいが、うまくいかず、妻は子供たちを連れて実家のあるコペンハーゲンに戻る。ゴーガンも年末にコペンハーゲンに移る。
 そんな不遇時代の作品。
 
 
 
 変化を探すのも楽しい国立西洋美術館の常設展である。


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