北欧の神秘
ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画
2024年3月23日〜6月9日
SOMPO美術館
19世紀から20世紀初頭の北欧3カ国(ノルウェー・スウェーデン・フィンランド)の絵画を紹介する展覧会。
ノルウェー国立美術館、スウェーデン国立美術館、フィンランド国立アテネウム美術館の3館の所蔵作品による。
私的には、次の3名の画家に期待。
ムンク(ノルウェー)
アクセリ・ガッレン=カッレラ(フィンランド)
アウグスト・ストリンドベリ(スウェーデン)
ムンクは著名すぎるが、2名は国立西洋美術館が最近その作品を新収蔵したことで名前を知った画家。
加えて、まだ知らない画家の魅力的な作品との出会いがあれば、と会期初日に訪問。
【本展の構成】
序章 神秘の源泉 - 北欧美術の形成
1章 自然の力
2章 魔力の宿る森 - 北欧美術における英雄と妖精
3章 都市 - 現実世界を描く
【出品数】
68点(他に東京会場では不出品の2点あり)
・スウェーデン国立美術館:35点
・ノルウェー国立美術館 :17点
・フィンランド国立美術館:16点
出品数の2分の1がスウェーデンで、ノルウェーとフィンランドが4分の1ずつ。
特に3章は18点中15点がスウェーデンからであり、スウェーデン主導企画のように見える。
なお、必ずしも出品作の所蔵美術館の所在国=画家の出身国ではない。
【撮影】
5・4・3階と、3つの展示フロアに分かれるSOMPO美術館。
4階展示フロアの23点が撮影可能。章でいうと、1章「自然の力」の8点(約3分の1)、2章「魔力の宿る森」の15点(1点を除く全点)。
5階・3階展示フロアは撮影不可(45点)。
【ムンク(1863-1944)】
2点の出品。
《フィヨルドの冬》
1915年、ノルウェー国立美術館
《ベランダにて》
1902年、ノルウェー国立美術館
さすがに1890年代制作の「不安画」の出品はない。残念。
【アウグスト・ストリンドベリ(1849-1912)】
1点の出品
《街》
1903年、スウェーデン国立美術館
画面の多くを占める黒い空の厚塗りの荒々しいタッチが印象的。
厚塗りの荒々しいタッチは、国立西洋美術館が2022年度に購入した《インフェルノ/地獄》も同様。
ストリンドベリは、19世紀スウェーデンを代表する劇作家で知られるが、画家でもあった。
〈参考:本展出品作ではない〉
《インフェルノ/地獄》
1901年、国立西洋美術館
【アクセリ・ガッレン=カッレラ(1865-1931)】
1点の出品。
《画家の母》
1896年、スウェーデン国立美術館
フィンランドを代表する国民的画家と聞いているが、フィンランド国立アテネウム美術館の所蔵作ではなく、スウェーデン国立美術館の所蔵作が出品。画家はスウェーデン系フィンランド人であったらしい。
国立西洋美術館が2021年度に購入した《ケイテレ湖》は、北欧らしい湖を描いた普通の風景画に見えるが、民族叙事詩『カレワラ』を画題とした作品だという。湖の表面に描かれた「ジグザグに走る波模様」は、風と湖の流れとの相互作用による自然現象であるが、画家は『カワレラ』の主要な登場人物である「ワイナミョイネン」が船を漕いで通った痕跡「ワイナミョイネンの航跡」と呼んだという。
そんな作品の出品を想像していたが、本展の大トリで登場したのは、趣きの異なる肖像画。
当たり前のことだが、幅広い画題を制作していることを認識する。
〈参考:本展出品作ではない〉
《ケイテレ湖》
1906年、国立西洋美術館
【他の画家(2選)】
上述の3名以外は、これまで知らなかった画家。
以下2選は、いずれも2章「魔力の宿る森」に属するが、第2章は北欧の神話や民間伝承を主題とする作品が並び、私的にはとっつきにくいかなあ。
フーゴ・シンベリ(1873-1917)
《素晴らしい花》
制作時期不詳、スウェーデン国立美術館
ガッレン=カッレラに師事した、フィンランドの象徴主義の画家。
白い花(鳥ではない)を咲かせる植物を鑑賞する貧乏人と、切り取る金持ち。どんな物語なのだろう。
J.A.G.アッケ(1859-1924)
《金属の街の夏至祭》
1898年、スウェーデン国立美術館
想像の街・建物、踊りながら街ゆく人々、画面右下で座ってそれらを眺めている画家の妻。
6月23日の夏至祭(ミッドサマー)に見た幻想的な光景。
東京藝術大学大学美術館で2015年に回顧展が開催されたフィンランドの女性画家ヘレン・シャルフベック(1862-1946)は出品されていない。
また、国立西洋美術館で2019年に開催されたフィンランド女性画家の展覧会に取り上げられた画家(ヘレン・シャルフベックを含む5名)も出品されていない。
それが要因かどうか、昔ながらの品揃えとの私的印象。
ゴッホはさすがの存在感。