上:カラヴァッジョ《洗礼者聖ヨハネ》
1602年、129×95cm
カピトリーノ美術館 絵画館
下:カラヴァッジョ《勝ち誇るアモール》
1602年、156×113cm
ベルリン国立美術館
《勝ち誇るアモール》を見たのは、大昔、初めての海外で西ヨーロッパを旅行した時のこと。
当時、美術に特段の関心を持っていたわけではなかったが、ガイドブックにしたがい、観光名所の一つとして代表的な美術館も巡っていた。
ほぼ駆け足で展示室を進むなか、足を止めさせる強烈な絵画が現れる。
生々しいエロティックさ。
誘うような笑み。
少年のあまりの生々しさにびっくり仰天。
こんな作品が存在し、普通に一般公開されているのか。
《洗礼者聖ヨハネ》を福岡で観た。
《洗礼者聖ヨハネ》は、《勝ち誇るアモール》と同じ年に、同じモデルを使って制作されたとされる。
美術コレクターでカラヴァッジョの重要なパトロンの1人、チリアーコ・マッティの注文による。
チリアーコ・マッティは、同じくカラヴァッジョの重要なパトロンの1人であるヴィンチェンツォ・ジュスティニアーニ自慢の作品《勝ち誇るアモール》を見て、同じような作品を所望したのかもしれない、と言われている。
《勝ち誇るアモール》とはずいぶん印象が違う。
生々しさというより、ちょっと冷めた感じ。
どの角度から見ても、こちらを見つめてくる少年の笑み、喜びの表情だと感じる。
この作品のテーマについて、「洗礼者聖ヨハネ」ではなく、「解放されたイサク」だとする説がある。
「洗礼者聖ヨハネ」と考えるのが妥当だと思う。
ただ、この笑みを見ていると、「不在効果」で鑑賞者がアブラハムの役割を担うことになる「解放されたイサク」説を推したくなる。
もう一度、《勝ち誇るアモール》を観たい。
《洗礼者聖ヨハネ》よりサイズが大きいのか。
今ならどんな印象を受けるだろうか。
欧米での美術館巡りはボッティチェリを見るのが第一の目的であり、ドイツではミュンヘンやフランクフルトの美術館はかなり前に行ったのですが、ベルリン・ドレスデンが残っていたので、ずっと行きたいと思っていました。やっと念願がかなったという気持ちで出発したことを覚えています。もちろん、その時はカラヴァッジョも大きな目的であり、せっかくベルリンまで行くのだから、日帰りできるポツダムへも足を伸ばし、カラヴァッジョの聖トマスの不信も見てきました。なお、このポツダム・サンスーシ宮の絵画館は冬季休業なので注意が必要です。ベルリンへ行かれるのならポツダムも是非どうぞ。
勝ち誇るアモルを見た印象は、肌の表現が限りなく素晴らしい!ということでした。そして、その隣にはライヴァルであるバリオーネの聖愛と俗愛も並んでいるのですが、この絵の方は勝ち誇るアモルと比べるとまるで風呂屋のペンキ絵だと感じました。これだけの技術力の差があればカラヴァッジョの才能に嫉妬し、犬猿の仲になるのも当然という気がします。なお、バリオーネの聖愛と俗愛は、目黒のカラヴァッジョ展で来日したバルベリーニ美術館のバージョンの方が出来はよいと思っています。
ベルリン旅行は(これも初めてだった)ウィーンと合わせて行ってきました。ボッティチェリやフィリッポ・リッピを目当てに行った旅行でしたが、行ってみたらカラヴァッジョとクリムト巡りになっていました。
コメントありがとうございます。
ベルリンにもう一度行くとすると。
《聖トマスの不信》は、ウフィツィ美術館所蔵のコピー作品を2019-20年のカラヴァッジョ展で見ることができましたが、ポツダム・サンスーシ宮所蔵のオリジナルを観たい。
ベルリン国立美術館では、フェルメールの2点は来日してくれたのでじっくり観ることができましたが、カラヴァッジョはもちろんのこと、ペトルス・クリストゥス《若い女性の肖像》やブリューゲル、ヤン・ファン・エイク、デューラー、クラーナハ、レンブラントなど、北方絵画に観たいものが多いです。