東京でカラヴァッジョ 日記

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【画像】「うるおうアジア」(小金井市立はけの森美術館)

2024年01月18日 | 展覧会(東洋・アジア美術)
うるおうアジア
近代アジアの芸術、その多様性
2023年12月2日〜2024年1月28日
中村研一記念小金井市立はけの森美術館
 
 
 2016年以来8年ぶり2度目の小金井市立はけの森美術館訪問。
 JR中央線・武蔵小金井駅から徒歩約15分。
 
 本展は、福岡アジア美術館の収蔵作品から、アジア約14の国・地域の近代芸術71点を紹介するもの。
 
 「令和4・5年度市町村立美術館活性化事業 第23回共同巡回展」として、広島・廿日市市、三重・四日市市、長野・上田市と巡回し、最後の巡回地が、東京・小金井市となる。
 
 初めて知ったのが、福岡アジア美術館が福岡市美術館から分離して開館したということ。公立美術館なのか。
 
 
【本展の構成】
序 はじめに
1 洋風表現の登場
2 民衆に愛されるアート
3 「近代美術」と呼ばれるものたち
 
 1章「洋風表現の登場」で取り上げる国は、中国とインド。
 西洋近代芸術や写真技術の影響を受けた洋風表現。
 欧米人向け輸出/土産用の絵画・写真の制作。
 この辺りの事情は、日本と変わらない。
 
 2章「民衆に愛されるアート」で取り上げる国は、中国、インドとバングラデシュ。
 中国については外資系企業を中心としたカレンダー付きポスターが、インドについては「ヴァルマー・プリント」が、バングラデシュについては「リキシャ」が紹介される。
 
 3章「「近代美術」と呼ばれるものたち」では、14ヵ国・地域の16人の作家による20点の作品が紹介される。西洋近代芸術のコピー作品化している状況は、日本と変わらない。
 
 
【会場内の用語解説(抜粋)】
 
チャイナ・トレード・ペインティング
 1800年代前半の中国を訪れた西洋からの旅行者たちが記念に買い求めた、異国で見た珍しい風景や習俗を描いた絵である。中国人画家たちが広州や香港に工房を構えて、分業制で誇張とも思われる異国趣味に彩られた絵画を作り出した。
 
 
カンパニー絵画
 18世紀中頃から19世紀にかけて、インドでイギリス人が築いた拠点を中心に、伝統的な細密画の技法を受け継いだインド人絵師たちが、西洋絵画の技法や素材をとりいれつつ、インドの風俗や人々を主題に描いた絵画の総称。
 
 
カーリーガート絵画
 19世紀のインドのベンガルの村には、ヒンドゥーの神々やイスラームの聖者、神話などを描いた縦長の絵巻物(ポト)を手に絵語りをするポトゥアと呼ばれる絵師が活躍していた。英領インドの首府コルカタ(旧名カルカッタ)が経済や文化の中心として繁栄するにつれ、活躍の機会を求めた絵師たちがコルカタのカーリーガート寺院(1809年創建)周辺に集まるようになり、当初は寺院の参拝客向けに宗教画を描いた。
 さらに絵師たちは、植民地化とともに導入された西洋の遠近法や陰影法を伝統的なポトに取り入れた独自の様式を生み出した。これをカーリーガート絵画と呼ぶ。
 ヒンドゥーの神々などの宗教的なテーマだけではなく、犯罪事件や恋愛騒動といった世俗的な題材、風俗なども描かれた。一筆描きのようなシンプルで素朴な民衆画として、イギリス人たちの本国への土産物にもなった。
 
 
ヴァルマープリント
 イギリスによるインドでの植民地支配が本格化した19世紀後半は、政治経済のみならず、文化芸術面でのいわゆる近代化が推し進められた。
 ラージャー・ラヴィ・ヴァルマーはこの時代に活躍したインド近代美術のパイオニアで、インドの様々な神話や伝説、肖像画、エキゾチックな女性像などを、西洋絵画の写実的な様式で描き出し、イギリス人主導の美術界やインド各地の宮廷で名声を博した。
 また1892年にはドイツ人技師の協力を得てムンバイにラヴィ・ヴァルマー印刷所を設立し、藩王のために描いた彩画などをオレオグラフ (リトグラフの一種)として大量に印刷したため、特権階級だけでなく、一般大衆からも高い人気を集めた。インドの文化に与えた影響は計り知れない。
 
 
月牌広告画(カレンダー付きポスター)
 20世紀初期の代表的な大衆美術、商業美術として流行したカレンダー付きのポスター。中華暦と西暦の両方を掲載することが多かった。清末から中華民国期に資本主義が浸透すると、外資系企業を中心に会社や工場が自社商品やサービスの宣伝のため、年画の形式に宣伝とカレンダーの機能を加えて実用的な贈答品として製作、顧客へ贈った。カレンダー付とそうでないものがある。
 中国では、新年に吉祥図様の木版画である「年画」を家々に貼って一年の幸福を願う慣習があり、月份牌広告画でも伝統的な木版年画に見られる画題を使って描かれていることが多かった。
 
 
 以下、展示品の画像。
 
ウィリアム・サンダーズ
《上海の中国女性の纏足》1870年頃
 
 
《リキシャ》1994年
 
 
《日本の新幹線》1994年、ほか
 
 
左:カムルル・ハサン(バングラデシュ)
  《女性》1972年
右:ジャモニ・ロイ(インド)
  《子鹿》1940年頃
 
 
 この分野の美術はそれほど見たことがない。
 私的には、インド。先般の府中市美術館の企画展で見た「インド細密画」が植民地化により衰退したあとの展開を興味深く見る。どうやら「ヴァルマープリント」がその後のインドのヴィジュアルイメージに大きく影響を与えたようだ。
 
 ちょうど子ども向け鑑賞プログラムの時間帯と重なり、なかなか賑やかな環境での鑑賞となったのは、楽しかった。


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