まいど!にゃんこふです。
1970年代の終わり頃、上京後に大学で知り合ったとある友人にまつわるお話です。
夏休みのある日、お互いヒマだったのでA君ちで呑もうという事になり、夕方缶ビールや菓子などを買って某私鉄沿線のA君のアパートへ向かいました。
お互いビンボな学生稼業、あって扇風機、クーラーなんて望むべくもありません。当時一般家庭の住宅にはクーラーが導入されつつありましたが、まだまだ贅沢家電であり、電気代もバカにならない程高かったのです。今じゃ学生アパート(ワンルームマンション)にはクーラー付いてて当たり前みたいですけどね。そう、夏はガマンが当たり前の時代だったのですよ。
私はA君に持参したビールなどが入った袋を渡して、「また」を抱き上げながら部屋に上がりました。
でも、なんかおかしい・・涼しいって訳じゃないんだけど、少しも暑さを感じないのです。
やがてビールが無くなり、A君はハイボール、私はジントニックやジンライムで本格的に呑み始めました。
さて、今回は不思議な話の第2弾です。
眉に唾でもつけながらお付き合い下さい。
1970年代の終わり頃、上京後に大学で知り合ったとある友人にまつわるお話です。
友人の名は・・うん、A君とでもしときましょうかね。
彼と知り合ったきっかけは、確か構内の喫煙所でしたね。現在みたいにタバコに対する風当たりもなく、どこで吸っててもOKみたいな時代でした。とは言え、一応学びの場ですから構内にはペンキで赤く塗られたバケツや一斗缶が吸殻入れが置かれて喫煙所になっており、学生は講義の合間や休講の時はここで屯ってました。
この頃からタバコのマイルド化が始まっていたのですが、私はカッコつけて両切りのショートピースと言うちょっとキツめの銘柄の缶入りを吸ってました。
A君とは気が合い、ちょくちょく遊んだり呑みに行ったりするようになりました。彼は猫を飼ってまして、そいつと遊ぶために何度かアパートにも行きました。
でも、その時は気付かなかったんですね、彼のアパートの不思議さに・・・。
夏休みのある日、お互いヒマだったのでA君ちで呑もうという事になり、夕方缶ビールや菓子などを買って某私鉄沿線のA君のアパートへ向かいました。
彼のアパートは私が住んでる所とそう大差ない佇まいでした。でも、アパートの敷地は結構広く、一画には軽トラや軽自動車が3台駐車していました。また、周囲はぐるりとブロック塀で囲まれ、ところどころに結構大きな樹が植っています。地面には砂利が敷かれて少し歩きにくい。
アパートはいわゆる木造モルタルの2階建て、A君の部屋は2階です。
そして、その部屋は西向きで真夏の陽射しが思い切り当たっていました。
「こりゃ部屋の中は蒸し風呂確定だな」
お互いビンボな学生稼業、あって扇風機、クーラーなんて望むべくもありません。当時一般家庭の住宅にはクーラーが導入されつつありましたが、まだまだ贅沢家電であり、電気代もバカにならない程高かったのです。今じゃ学生アパート(ワンルームマンション)にはクーラー付いてて当たり前みたいですけどね。そう、夏はガマンが当たり前の時代だったのですよ。
滴る汗を拭いつつ2階のA君の部屋へ。
ドアをノックすると、間伸びした声が聞こえA君が顔を出しましたが、どうやら寝てたようです。足元には飼い猫の「また」がいます。飼い猫と言ってもいつのまにか居着かれたらしいのですが。
「また」は白黒牛柄ハチワレのでぶ猫さんです。最初は「又三郎」だったのですが、妙に賢いのとふてぶてしい様子から、妖怪「猫又」の「また」になったそうです。
私はA君に持参したビールなどが入った袋を渡して、「また」を抱き上げながら部屋に上がりました。
「えっ?」
私は思わず声を上げました。
いえ、抱っこした「また」が重かったからではなく、あれだけ西陽に炙られている部屋なのに、全く暑さを感じなかったのです。
「もしかしてクーラーあんの?」
キッチンの冷蔵庫にビールを入れてたA君に聞きました。
「クーラー?んな贅沢なもんねえよ。って言うか、うち扇風機もないよ」
でも、なんかおかしい・・涼しいって訳じゃないんだけど、少しも暑さを感じないのです。
窓に掛かってる変な柄のカーテンには明らかに強い西陽が当たっています。
「まあ立ってないで座ったら?」
A君に言われて私は小さなちゃぶ台の前に座りました。視線が低くなったのが気に入らなかったのか、「また」は不満気に一声鳴くと「お休み処」とマジックで書かれた段ボール箱に戻って毛づくろいを始めました。
しばらくバカ話してたのですが、やはり気になってので聞く事にしました。
「あのさ、やっぱおかしくない?この部屋全然暑くないんだけど?」
A君は私のピー缶から1本抜き取ると火を着けてぽわ〜っと煙を吐き出してました。
すると「お休み処」の「また」が不機嫌そうに鳴きます。
A君はそちらをチラッと見てタバコの火を消します。
「お、悪い悪い。すまんな、こことりあえず禁煙な」
「また」はタバコの匂いが嫌いで、A君は部屋では吸わなくなったそうです。私のピー缶を見て、つい手が伸びてしまったようです。
A君は立ち上がり、変な柄のカーテン(笑)を開け、窓を大きく開けました。当然外の熱気が・・え?入ってこない?って言うか、窓閉めてたんだ・・。
「やっぱなんか変だよ、この部屋」
怖いとか気持ち悪いとかじゃなくて、ただすごく不思議な感じなのです。
窓辺に座ってたA君は立ち上がり、窓を閉めて変な柄のカーテン(笑)を引きました。
「呑むにはまだ早いな。晩飯の買い出しに行くか」
「おお。何作る?カレー?」
「お前って本当にカレー好きだな。もっとサッパリしたもんがいいや」
「あ、じゃあ冷やし中華なんてどうだ?この間テレビで作り方観たぞ」
「お、いいね〜。んじゃ冷中決定!」
てな訳で、2人で駅前の商店街に買い出しに出かける事になりました。
部屋を出るとやっぱり猛烈な熱気が襲って来ました。
でも、今になって考えると、当時は昨今の夏のように体温越えの気温なんてそうそうなかったように思います。本当にもう勘弁してって暑さ。
買物を終えアパートに戻った時には、2人とも汗だくでした。
真夏の午後6時過ぎ、陽はそろそろ沈みかけていますが、まだ充分明るく、熱気も昼間のそれがまんま残っていました。
それでも部屋に入ると・・
「うん、やっぱりなんか涼しく感じるな」
「はは、よかったじゃん。それよりも飯食う前に風呂行こうぜ。あそこの銭湯、100円の洗濯機あるから服洗っとこうぜ」
この頃はまだコインランドリーってあんまりなくて、まだ頑張っていた銭湯が100円で使える洗濯機を置いてました。風呂入ってる間に洗ってねって感じ。ただ、置いてるのは普通の家庭にある二層式のタイプで、さすがに乾燥機までは置いてませんでしたね。
窓の外に張られたロープに洗濯物を干し、夕食の支度にかかりました。
買ってきた中華麺は4玉。具はハム、きゅうり、薄焼卵、紅生姜。茹で上がった麺は冷水でしめながらぬめりをとります。
スープは水、酢、砂糖、化学調味料、胡麻油、中華出汁の素(?)を適当に合わせて作ります。味を調整しながら作るので、結局丼いっぱいになりました。
でもお店で食べる冷やし中華のスープって少なくて不満ふぁった私には嬉しい量になりましたね。
メインの冷中と買って来た唐揚げや餃子、揚げ物なんかをちゃぶ台に並べて、飲み頃に冷えたビールをプシュっと開けてかんぱ〜い。
やがてビールが無くなり、A君はハイボール、私はジントニックやジンライムで本格的に呑み始めました。
今みたいにジュースっぽい焼酎系のものってお店で呑むもので、缶入りとかでは売ってなかったんですよね。それ以前に焼酎のイメージそのものが若い層からは敬遠されてたみたいです。
アルコールが適度に回った頃、A君はおもむろにこの部屋、というかこのアパートについて話し始めました。
つづく
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