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そんな感じで...FF11

FF11ヴァナでまったりいそいそ日記(*’-’)

つぶやき:海は広いな大きいな


自分メモ

3部作

2009-03-22 21:15:31 | こっそりページ
こっそり小説アップしました(´з`)

過去編3部作になってます。
ちょっとつながりを持ってるけど違う話というのを書いてみたかったのであります。
「静寂の花」で出てきた走り去る騎士団とかね。
長編は好きだけど最後まで書き終えられない性格(ぉ)なので、
読み切り形式で3部作にしてみましたヽ(´ー`)ノ
始まりも終わりもそれぞれ違うけどひとつだけ繋がっているお話です。
フェイスタイプは脳内でお楽しみください(

星降る季節に
 オークを助けた少女の話。
少女と男と、オークと
 かなり前に書いてたので見習兵士はチョコボに乗れない設定になってます(´∇`)
最後の矢
 彼の存在も忘れないためにъ(`ー゜)

あ、くじょうはうけつけてませn
WEB拍手

少女と男と、オークと

2009-02-18 23:08:29 | こっそりページ
 数人の騎士達が夜のジャグナーを駆け抜ける。
「あー、チョコボに乗りてー」
 一人の騎士がつぶやいた。独り言のつもりで言ったのだが、声の大きさからして誰かに聞いてもらいたかったのだろう。
「仕方ないだろ、ジーダ。まだまだ下っ端の俺達にそんなの与えられるわけがない」
 ジーダと呼ばれた男は顔をむすっとさせた。
「わかってるけどさ」
 彼はサンドリアの王立騎士団に所属する従士である。幼い頃生まれ故郷をオーク軍に襲撃され、彼だけが生き残った。その後王都のとある家に引き取られ、騎士団に入隊した。
 生まれが生まれなのでおそらくはエリートにはなれないだろう。だがジーダにとってはそんなことはどうでもよかった。
(俺は、オークさえぶっ殺せたらそれでいいんだ)
 オークに家族も友人も奪われ、残った物など何もない。いつか義父に言われた言葉を思いだした。

 ──戦争だから仕方がない。

(仕方がないだと!?すべて失って、そんなたった一言で片付けられてたまるか!)
 もちろん、拾ってくれた義父にはそんなことは言えないが。だからその憂さを晴らすために騎士団に入ったのだ。
 湖の近くを通りかかった頃、ふと何かに気付いた。
(・・・?あそこにいるのは、女?)
 カンパニエ準備のため気に止めている暇はなかった。不意に見えたあの悲しそうな顔は、おそらく彼女も戦争で誰かをなくしたのだろう。
(相容れないんだよ、人も獣人も。やつらがいる限り、悲しみが減ることなんてない・・・)
 哀しそうな女性の顔と、数か月前に会ったとある少女の顔が思い浮かんだ。

  ***

 あの日は雪が降っていた。ジーダはロンフォール戦線に配属され、まさにオーク帝国軍と交戦中だった。王都の近くなだけあってサンドリア軍の優勢で、勝ちは目に見えていた。
「ジーダ!そっちにいった!」
 弓兵のオークが逃げるのが見えた。
「わかってる!」
 仲間に言われ、ジーダは剣を振った。
「グオォォ!」
 ジーダの剣が左腕に刺さり、オークは鈍い悲鳴を上げた。
「トドメだ・・・!な!」
矢が飛んできた。無事な右腕で、投げたのだ。
「撃てないからって、投げるかふつー・・・」
 後ろに飛んでいった矢を見て安堵のため息をついた。投げたとはいえ、オークの腕力ならそれなりにダメージがある。
 しかし、
「って、逃げられた!」
 投げた矢はただの目くらましだったのか!とジーダはあわててオークの後を追った。森の深い方向へ逃げられては厄介だ。血の跡もわかりにくくなる。
 少し走った先にオークの頭が見えた。その先にもう一体見える。
「!?」
(子供!?なんでこんなところに!というかやばいよな・・・!)
冒険心の強い子供なのだろうか。サンドリアから抜け出してこのオークに見つかったに違いない。
「お、おいオーク!もう逃げられんぞ!その子からはなれ・・・!」
ジーダが言い終える前に、少女は意外な行動に出た。
「な・・・!?」
「このオークは怪我してるわ!お願い、見逃してあげて!」
 聞き間違いか?と一瞬自分の耳を疑った。
「何言ってるんだ!そいつは俺達の敵だぞ!そいつらに何人の同胞が殺されてると思ってるんだ!?」
「わ・・・わかってる・・・!けど、この人はもう戦えない。殺す必要なんてないじゃない!」
 次の瞬間、オークは死に物狂いで走り出した。
「あ!逃げられた・・・!」
 追いかけようと思ったが、この少女を置いて行くわけにはいかなかった。ジーダは地面を蹴り、少女を睨んだ。
「どういうつもりだ!君のせいで逃げられたじゃないか!」
「だ、だってあのオークはもう戦えなかったし・・・目の前で死なれるのは嫌だったんだもの・・・」
 少女の声がだんだん小さくなる。なんだか自分が悪いことをしているように思えてきた。
「いや、しかしだな、あのオークの傷が癒えたらまた人を襲うに決まってる」
「そうとも限らないじゃない」
「そうなんだよ!やつらは!」
「大丈夫よ!物事は自分に帰ってくるって、お父さんも言ってた。優しくすればきっと・・・!」
「どこからそんな自信がわいてくるんだよ!だいたいな、この戦いにはおれの生活もかかってたんだよ!一匹でも多くオークを倒してりゃそれだけ報酬も増えるし・・・ああ、もうやめだ。きりがない」
 なんだかバツが悪い。子ども相手にこんなに怒鳴ることはない。少女もうつむいてしまった。
「ごめんなさい・・・でも私悪いと思ってないから。些細なことかもしれないけど、大事なことだと思うの」
「・・・・・・」
 返事はしなかった。少女も答えを期待してはいなかっただろう。無言で少女はその場から立ち去った。

 ***

(いつか帰ってくる?頭の悪い獣人が何をしてくるって言うんだ)
 あの日から逃げ出したオークの後ろ姿が離れない。今までどんなオークも、死ぬまで戦いを挑んできた。少なくとも戦いを放棄して逃げるオークは見たことはなかった。
「て、敵襲ー!」
 ジーダの思考を遮って仲間の叫び声が聞こえた。
(ちっ・・・!)
 待ち伏せされていたのか、大きな茂みから数体のオークがなだれ込んできた。ジーダは剣を抜いて応戦に向かった。
 戦士オークの斧が振り下ろされる。ジーダは盾でそれを防ぐ。オークがよろめいたところを、その盾を叩き込んだ!騎士の初歩の技シールドバッシュを食らったオークは一瞬動けなくなる。
 その瞬間を狙って剣で斬りつける。しかしオークは今度は怯まなかった。オークが斧を振り上げた。斧がジーダの左肩をかすめる。
「ぐっ・・・!」
 ジーダはよろめいて肩に手をあてた。止めどなく血があふれてくる。
(まずい・・・!)
 もう一度オークの斧が彼の頭を狙う!避けられない、そう感じたジーダは思わず目を瞑った。
 瞬間、ヒュッと風を切る音が聞こえた。

 ドスッ

 次に鈍い音が聞こえ、何かが落ちる音がした。ジーダはゆっくり目を開けると、目の前にはオークが倒れていた。
「な、なんだ・・・?」
 倒れたオークの額に矢が刺さっている。人が作った矢ではなかった。
「この作り、オークの・・・?」
 ジーダは矢が飛んできたと思われる方へ振り向くと、草の茂みでオークの弓兵がこちらを見ていた。左肩にまだ新しい傷跡があった。
(!!あいつは!?)
 まさか、あのときのオークなのか。少女に助けられたオークが、自分を助けたというのか。
「お、おまえ・・・」
 言い終える前にオークは茂みのさらに奥へと消えていった。

「何で俺を助けたんだよ・・・俺は敵だぞ?くっ!」
 左肩の傷がまた痛み出す。膝をつきながら失いそうになる意識を必死につなぎとめた。

 ──物事はいつか自分に帰ってくる。

 少女の言葉が脳裏をよぎった。

「恩返しの、つもりかよ・・・お前」
 かすかに笑い、誰にともなくつぶやく。
 あのオークにとって、見逃してもらえたのは少女とジーダのおかげだったのだろう。そして自分は今オークに助けられた。
 獣人を憎む自分が獣人に助けられた、なんて滑稽な話だろう。だけど悪い気はしない、そう思うジーダだった。

"俺が戦うのは、この戦いで最後にしよう"
 そう心に誓い、空を仰いだ。

戦争によって故郷と家族を失った。戦争だから人も獣人も死んだのだ。戦争だから仕方がない、義父の言ったことがわかった気がした。
 それでもジーダはこの戦争の中に小さな光を見出したように思う。小さな光だったが、憎しみに覆われていた心にわずかな光が差し込んだのだ。
 少女がオークをかばわなければ、オークが自分を助けてくれなければ、自分の考えが変わることはなかっただろう。いろんな思いが巡り巡ってきたのだ。
 その後、ジーダは騎士団を辞めた。そして義父が彼を拾ってくれたように、ジーダも身寄りのない子供たちを引き取り孤児院を開いた。
 剣を置くことで助かる命もあるんだ。ジーダは子供たちを眺めながらそう思った。

 そして15年の月日が流れた。
 穏やかな日差しが差し込んでいる。ジーダはベッドに横たわり、その周りには子供たちが彼を囲んでいた。子供たちが何かを言っているようだったが、もうほとんど聞こえなかった。
 彼の心はとても穏やかで、感謝の気持ちでいっぱいだった。少女とオークに出会えて。そしてたくさんの子供たちに囲まれて。

 叶うなら、もう一度あの少女とオークに会って言いたいことがあった。

「ありがとう」

 ジーダはゆっくりと目を閉じた。

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思ったより長くなりました(´3`)
すいませんこんなの書いt

ちなみにこれは戦争を美化する話ではありません。
起こってしまったことはなかったことにはできないということです。
だからこそ憲法9条(だっけ?)は守られるべきだと思います。

あれ、何の話だっけ。
あ、この話はこっそり三部作になってたりします。

例によって苦情は受け付けてませn('Д')


WEB拍手

最後の矢

2007-12-29 20:57:06 | こっそりページ
 “彼”は昔から、戦うことが好きではなかった。それが異質である事も知っていた。だからあえて“彼”は何も言わず仲間たちと行動していた。

 いつからだろう。そんな考えを持ち始めたのは。もう忘れてしまった。今は極力戦わなくてすむ方法を考える毎日だ。
 遠くにいても分かりにくいように弓兵になる道を選んだ。
 自分が異質だと仲間に悟られればきっとここにはいられなくなる。
 ため息をつきながらいつも考える。

 “どうして自分だけ違う”

 ある時、行商人のゴブリンにポツリと呟いたことがあった。ゴブリンは面白いことを言う、と“彼”に言うとこう続けた。
「みんな違う。オレも、オマエも。ほかのオマエたちも。だからオレたちはここにいる」
「みんな、違う・・・?」
 ゴブリンは頷いた。
「オマエは面白いか?みんな同じが。違うと思うなら自分がが動くべきだな」

 自分が動く。ゴブリンは難しいことを言う。“彼”は首をひねった。

 ***

 何度かの昼と夜を繰り返したある日。石の壁がそびえたつ森で“彼”は今日も戦っていた。あの壁の向こうには仲間たちの敵が住み、仲間たちはその敵を倒そうとここまでやってきたのだ。
 だが今回はどう見ても戦況が悪い。仲間は次々と倒されいった。
 “彼”はいつものように離れて戦っていたが、敵に気付かれ剣を向けられた。振り下ろされる剣をかわし、あわてて逃げようとした。
「ジーダ!そっちにいった!」
 敵の声が聞こえ、逃げた方向に敵がいたことに気づく。
「わかってる!」
 敵の叫び声とほぼ同時に左肩に剣が刺さった!
「グオォォ!」
 まずい、そう思った。左肩の傷が深く、弓が思うように持てない。再び敵に攻撃されそうになり、とっさに右で弓矢を投げた。投げただけの矢はまったくダメージにはならなかった。しかし敵の目をごまかすには十分だった。
 敵が目をそらしたすきに“彼”は奥に走り出した。血の跡をごまかせるように茂みを通り、少し広い場所に出た。

 !?

 そこに何かがいた。

 “ニンゲン”だ。敵の“ニンゲン”だ。さっき見たのよりも小さい。けど・・・。
 まずい。捕まる。もう、ここで死ぬのか。
 “彼”は震えていた。それは“彼”が感じたことのない感情だった。ニンゲンが手を差し出して“彼”は思わず体をびくつかせた。
「こ、これ、傷薬・・・。あなたに効くかわからないけど」
 ニンゲンが言った言葉は聞くことができたが理解ができなかった。だが自分を殺そうとしていないことは解った。
 しばらく考えた後、ニンゲンが持っている物をゆっくりと手に取った。
 その瞬間、茂みから音が聴こえた。さっき自分を傷つけた敵のニンゲンだ。

「お、おいオーク!もう逃げられんぞ!その子からはなれ・・・!」
大きいニンゲンが言い終える前に、小さいニンゲンが両手を広げ、“彼”の前に立った。まるで自分をかばうように。
「な・・・!?」
「このオークは怪我してるわ!お願い、見逃してあげて!」
「何言ってるんだ!そいつは俺達の敵だぞ!そいつらに何人の同胞が殺されてると思ってるんだ!?」
 何を言っているのかさっぱりわからないが、争っているようだ。逃げるなら今しかない 。
「わ・・・わかってる・・・!けど、この人はもう戦えない。殺す必要なんてないじゃない!」
 次の瞬間、“彼”は死に物狂いで走り出した。

 どれくらい走っただろう。もうわからない。弱った体で走り続けたのが祟り、森を抜けきる前に力が尽きた“彼”は倒れた。小さく呻きながら、人間にもらった物を見つめた。
“変な臭いがする“
ぐるぐるする頭で思いついた言葉はそれだった。
「それ、けがを治す薬、だな」
 突然の言葉に“彼”は驚いた。行商のゴブリンだ。ゴブリンは特に何かを問いただすわけでもなく、“彼の”の手のひらから傷薬を取ってそれを彼の傷口に塗った。
「ウググッ…!」
 それは臭うだけではなかった。強烈に痛い。ニンゲンは何でこんなものを持っているんだ。
「これでよし」
「・・・???」
 どういうことだろう。さっきまで流れていた血がぴたりと止まった。徐々にだが痛みも和らいできた。
「さっきのこと、オレ見てた。オマエ、ニンゲンたちに助けられたな」
「助け、られた?あいつらが?どう、して・・・だ?」
 確かに小さい方のニンゲンは自分をどうにかしようとしている目ではなかった。でも、仲間にとって敵であるように、ニンゲンにとっても自分たちは敵のはずだ。
「そんなこと知らない。でも、助けられた。これ本当のこと」
 ゴブリンは後ろを向いて言葉をつづけた。
「オマエは違う。あいつらも違う。だから今、生きた」
 そうだ。違ったから、“彼”はあの戦いの中では死なずに済んだのだ。
「助けられたオマエ。オマエはどうする?」
 “彼”の答えを聞く前に、ゴブリンは歩きだし闇の中に消えた。

 ***

 傷跡は残ったが、傷口は完全にふさがったようだ。
 それから“彼”は歩き続けた。森をぬけ、さらに深い森にでる。最後に残った1本の矢を見つめながらこれからどうしようか考えた。もう仲間のところには戻れない。いや、もう戻る気はなかった。
 行商のゴブリンの言葉と、助けてくれたニンゲンたちの姿が心から離れなかった。

 ───うぉぉ…!

 はっ、と顔をあげた。
 遠くからたくさんの声が聞こえる。戦いが始まっているのか。音が聞こえる方へ近づく。そこで“彼”は見つけた。
 あの時の、大きい方の“ニンゲン”だ。ニンゲンが肩に傷を負っているのが見えた。そして前にいるのは仲間。目に見えて明らかだ。あのニンゲンは仲間に殺される。

 薬をくれた、小さい方のニンゲンの姿が脳裏に浮かんだ。

 “彼”は弓を構えた。

 次に自分を見逃してくれた大きい方の人間の姿が。

 “オマエはどうしたい?”

 ゴブリンの声が響いた。指に力がこもる。

 どうしたい、なんかわからない。わからない。

 わからないから、これから考えよう。歩いて考えよう。たくさん歩いて、たくさん考えて───

 答えは、そのあとでいい。


 “彼”は最後の矢を、放った。


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もちろん苦情は受け付けてませんyp
ということですいません(何
“彼”が何者かは言うまでもないと思いますが、もしかしたら中には変わったやつもいるかなぁって感じで。
ほんとは小さい方と会うシーンも考えてたんですがうまくつながらないので省略しました(ぉ



星降る季節に

2007-12-25 23:42:42 | こっそりページ
 ちらちらと舞う雪が、イルミネーションに照らされて、まるで星が降っているかのように見えた。 
「雪、か。道理で寒いわけね」
 女は呟き、空を見上げた。雪と共に目に映る美しいイルミネーションがまぶしい。
 今世間では星芒祭の真っただ中だ。どこの国に行っても街中は電飾であふれかえっている。昔では考えられないことだ、と誰にともなくつぶやく。
「……。あれからもう20年か…」

 ***

 30年前、フェイルアーナはこのサンドリアの名家で生まれた。名家といっても騎士のような大した家柄ではなかったが、それなりに裕福な生活ができるくらいの家柄だった。
 彼女が10歳になる頃、獣人軍との戦争が激しくなっていた。父の友人や近所に住む青年が次々と徴兵されていくなか、不幸中の幸いかもともと足の悪い父は徴兵されずに済んだ。その代り城での仕事で毎日忙しかったようだった。

(私は、戦争を知っているようで知らなかった)

 戦争で傷ついたわけでもなく、誰かをなくしたわけでもない。だから“あの行動”ができたのだろう。

 あるときフェイルアーナは傷ついたオークを助けたことがあった。
 あの日も雪が舞っていた。現在のように美しイルミネーションはまったくなく、代わりに重々しい大砲や巨大弓が置かれている。
 見張りの騎士の目を盗んで、ロンフォールの森に出た彼女はそこでオークを見つけたのだった。
 はじめて外へ出、初めて目にするオークの姿。父や周りの人々からさんざん聞かされた憎きオークだったが、なぜだろう。フェイルアーナには憎い感情など出てこない。それどころか、彼女はオークに傷薬を差し出したのだった。

 ──ガサッ

 茂みから音が聴こえ、ハッと振り向いた。青年、鎧からして騎士の人だ。
 一瞬こっちを見た。自分がオークに襲われそうになっていると勘違いしたのだろう。青年は少し裏返った声で叫んだ。
「お、おいオーク!もう逃げられんぞ!その子からはなれ・・・!」
青年が言い終える前に、フェイルアーナは両手を広げ、青年の前に立ちはだかった。まるでオークをかばうように。
「な・・・!?」
「このオークは怪我してるわ!お願い、見逃してあげて!」
「何言ってるんだ!そいつは俺達の敵だぞ!そいつらに何人の同胞が殺されてると思ってるんだ!?」
一瞬言葉に詰まった。
「わ・・・わかってる・・・!けど、この人はもう戦えない。殺す必要なんてないじゃない!」
 次の瞬間、オークは死に物狂いで走り出した。
「あ!逃げられた・・・!」
 よろよろと逃げるオークの後姿を見て彼女は安堵した。その後、青年にこっぴどくしかられたが、助けたことを後悔はしていない。彼女には父の言葉があったからだ。

「優しさは、いつか帰ってくる。それが些細なことであっても。いつか帰ってくることを信じなさい。それが、自分を信じるということだ」

 だが不安はあった。青年が言った言葉も間違ってはいない。もう一度会って話ができないだろうか。しかし名前も聞かなかったし、幼い彼女に青年のことを知るすべはない。何度かロンフォールへ出て探せる範囲で歩き回ってみたが会うことはなかった。

 ***

 そして20年の月日が流れた。父は15の時に病気で亡くなり、ほぼ同時期に獣人軍との戦争も終わった。
 それからフェイルアーナは冒険者を始めた。そのの方が情報を集めやすかったからだ。獣人を助けたことがある自分が、時に獣人を相手にすることもある。おかしな話だ、と自嘲した。それでも自分から、戦う意思のない獣人に手を出したことは一切ない。
 冒険者として気ままに生活をし、その一方で青年を探していた。
 そしてついに青年が住んでいる場所を知る事ができた。
「20年・・・。長かったけど、なんだか昨日のことみたい」
 少し緊張しながら、彼が住んでいる家のドアを叩いた。
 しかし出てきたのは女性だった。20代前半くらいだろうか。まだあどけなさが残る面持ちだった。
「あ、あのここに騎士団に勤めている人がいると思うのですが・・・以前助けられたことがあって…」
 戸惑いのあまりしどろもどろになってしまった。少し恥ずかしくなる。女性は一瞬考えて、ハッとした。
「もしかしてオークを助けた少女さん?」
「へ?」
フェイルアーナは思いがけない言葉に目を丸くした。
「そうなんですね」
 女性は微笑んで言った。
「よかった。あなたが尋ねてきてくれるなんて。さ、よかったら上がってください」
 促されるまま、家に入った。そこでまた更に驚いた。家の中、そして庭に数人の子供がいたのだ。
「ここ、あの人、ジーダお父さんが始めた孤児院なんです」
 彼女の話しによればあの後騎士団を辞め、この孤児院を始めたそうだ。女性も彼に引き取られた家の一人だという。
「え、と。そのジーダさんは・・・」
 そういうと少し哀しそうな表情になり、フェイルアーナは理解した。
 5年ほど前に病にかかり亡くなった、と女性は簡潔に言った。
「・・・」
「少し待ってて下さい」
 女性は立ち上がると、部屋の奥に行き、しばらくしてまた戻ってきた。
「これ、お父さんがあなた宛に遺した手紙です。いつかあなたに会えたら渡してくれって」
 フェイルアーナは差し出された手紙を受け取り、封を開けた。

『オークを助けた少女へ
 俺の名前はジーダ。君がこの手紙をいつか読んでくれると願い筆を取った。渡せるかなんて保証どこにもないが、きっとアルタナ様は引き合わせてくれると信じている。
 俺の命もそう永くない。だから死ぬ前にどうしても君にいいたい事があった。

 ありがとう。

 君の優しさが俺を変えてくれた。そしてあのオークも変えてくれたんだと思う。
 戦う事だけが戦争を早く終わらせることではないと。
 だから俺は戦うことをやめた。俺が剣を置くことで助かる命もある』

 気がつけばフェイルアーナの顔は涙であふれていた。
 涙で文字がよく見えない。一生懸命涙をぬぐいながら続きを読んだ。

『本当にありがとう。君の小さな優しさが俺を救ってくれた。いつか君にもその優しさが帰ってきますように』

「ジーダ・・・さん・・・っありが、とう・・・」
 自分の心も救われた気がして、フェイルアーナは手紙に向かって何度も何度もありがとう、とつぶやいた。

 ジーダの墓を訪れ、花を添えた。きらきらと輝く雪が花の上に落ちては消えた。
「また来ます」と言ってフェイルアーナは孤児院を後にした。
 星降る季節が来るたび、思いだすだろう。ジーダとあのオークと。

 そしてこの優しさを。 

 完
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また懲りずに書きました(´3`)
少女編です。過去の話はまだあったりします(ぇ
例のごとく苦情は受け付けてませn


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